著者
宮下 量久 中澤 克佳
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.242-258, 2014 (Released:2021-10-26)
参考文献数
13

合併特例債は「平成の大合併」を推進した財政支援策の1つであり,元利償還のうち70%を基準財政需要額に算入できるため,新自治体の負担や地方債残高の累増,財政規律の弛緩といった問題が生じる可能性が指摘されている。そこで本稿では,合併自治体における特例債と一般地方債の発行を,非合併自治体との対比から定量的に検証した。データの整理と推定を行った結果,以下の点が明らかとなった。合併自治体の9割以上が特例債を合併翌年度より毎年発行しており,一般地方債の代替的財源として活用していた。合併自治体は非合併自治体よりも1人当たり一般地方債残高を減少させており,特例債発行に伴う減少(代替)効果が確認された。また,全体的な一般地方債残高の減少を加味すると,特例債増加の影響はほぼ相殺されている。しかしながら,合併自治体の地方債残高は,特例債発行の影響から,非合併自治体と比較して増加傾向にあった。
著者
宮下 量久 鷲見 英司
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.170-186, 2016 (Released:2021-08-28)
参考文献数
14

本稿では地方公共サービス水準データを独自に作成して,合併算定替が合併自治体の効率性に与えた影響をパネル・データから検証した。合併算定替は合併を推進した財政支援措置のひとつであるが,合併後の財政運営が合併算定替から受けた影響についてはこれまで十分に検証されてこなかった。分析の結果,普通交付税や合併算定替が合併自治体の経常経費の非効率性に正の有意な影響を及ぼしていた。特に,合併算定替は普通交付税よりも合併自治体の非効率性を助長していた。また,合併自治体は合併後年数を経るごとに効率的な財政運営に努めることが期待されるが,本稿の推定では合併自治体が合併後経過年数に関係なく,合併算定替の影響で非効率な財政運営に陥っていることが明らかとなった。
著者
金坂 成通 宮下 量久 赤井 伸郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.118-130, 2010 (Released:2022-07-15)
参考文献数
19

わが国の地方分権改革でしばしば議論の対象となる国から地方への税源移譲に関して,その具体的方法を検討するために,垂直的租税外部効果が経済成長に与える影響について実証分析を行った。 推定結果から,垂直的租税外部効果は,経済成長の障害となっていることが示された。また,課税の裁量性に着目し,課税自主権を考慮した指標を用いた結果においても,垂直的租税外部効果は,経済成長を阻害することが確認された。これまで先行研究において,課税自主権の影響が示されていなかったが,本研究において,租税外部効果を通じた影響が新たに明らかとなった。 今後の地方分権に関する税財政論議でも,国から地方への税源移譲を実現するにあたって,民間の経済活動を妨げないように,課税ベースや税率選択において国と地方で過度の重複を避ける工夫が必要といえる。
著者
宮下 量久 中澤 克佳
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.254-275, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
18

「平成の大合併」によって市町村合併が多くの地域で急速に行われてきた。さらなる地方分権の推進や交通網整備に基づく生活圏の拡大によって,既存の行政区域を越えて各地域で検討すべき課題が増えると思われる。そして,広域連合やさらなる合併など,複数自治体が相互に意思決定を行う機会も増加してくると予想される。しかし,これまで先行研究で市町村合併の歳出削減効果についての検証は数多くなされているものの,合併のような市町村間の合意形成過程に関する研究は,筆者らの知りうる限り存在しない。そこで,本稿では市町村間の合意形成過程(期間・コスト)に着目して,それに影響を与えうる要因を定量的に分析した。その結果,合併協議地域内の所得格差が大きいほど,合併不成立,もしくは合併協議の長期化をもたらすことや,協議地域の合併インセンティブは財政状況ではなく,特例市などに昇格し,権限や業務が都道府県などから移譲されることで存在することなどが明らかとなった。
著者
宮下 量久
出版者
公益社団法人 日本不動産学会
雑誌
日本不動産学会誌 (ISSN:09113576)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.47-53, 2017-03-28 (Released:2018-03-28)
参考文献数
4