- 著者
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宮下 量久
中澤 克佳
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.254-275, 2009 (Released:2022-07-15)
- 参考文献数
- 18
「平成の大合併」によって市町村合併が多くの地域で急速に行われてきた。さらなる地方分権の推進や交通網整備に基づく生活圏の拡大によって,既存の行政区域を越えて各地域で検討すべき課題が増えると思われる。そして,広域連合やさらなる合併など,複数自治体が相互に意思決定を行う機会も増加してくると予想される。しかし,これまで先行研究で市町村合併の歳出削減効果についての検証は数多くなされているものの,合併のような市町村間の合意形成過程に関する研究は,筆者らの知りうる限り存在しない。そこで,本稿では市町村間の合意形成過程(期間・コスト)に着目して,それに影響を与えうる要因を定量的に分析した。その結果,合併協議地域内の所得格差が大きいほど,合併不成立,もしくは合併協議の長期化をもたらすことや,協議地域の合併インセンティブは財政状況ではなく,特例市などに昇格し,権限や業務が都道府県などから移譲されることで存在することなどが明らかとなった。