- 著者
-
中澤 敬信
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.3, pp.124-128, 2018 (Released:2019-11-01)
- 参考文献数
- 22
自閉スペクトラム症は,社会的相互作用やコミュニケーションの障がい,言葉の発達の遅れ,反復的行動,興味の限局を主な症状とする神経発達障がいである。自閉スペクトラム症の発症割合は世界的に増加傾向にあるが,発症メカニズムや分子病態は不明な点が非常に多く残されている。患者の多くは弧発症例であるため,患者に新たに生じるde novo変異が注目されている。これまでに,およそ5,000程度の自閉スペクトラム症と関連するde novo変異が同定されており,それらは神経系の発達や分化に関連する遺伝子座,シナプス関連遺伝子座,クロマチン関連遺伝子座,転写制御関連遺伝子座に存在するものが多い。最近,高頻度に変異が同定されているCHD8やARID1B,TBR1等の自閉スペクトラム症と関連した機能解析が報告されている。我々は,神経系における機能がほとんど明らかになっていないPOGZに注目し,患者由来iPS細胞やマウスを用いた包括的な研究を実施している。