著者
吉田 亮太 原 耕介 中澤 里沙 北村 夏輝 小保方 祐貴
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.112-120, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
31

【目的】複合性局所疼痛症候群を呈する症例に対し超音波療法を施行した結果,著明な疼痛消失を認めたため報告する。【症例紹介】外傷を契機に1年にわたる左足部痛と歩行障害を呈する50歳代の女性であった。理学療法評価結果より,疼痛は単なる侵害受容性疼痛とは考え難く,中枢神経系,末梢神経系,自律神経系における問題が複合的に生じた結果誘発されていると考えられた。【治療プログラムと経過】介入開始後3 週までは中枢,末梢,自律神経系に対する治療を施行したが,疼痛に変化はなかった。評価を再度行った結果,足部の循環障害が疼痛を誘発していると考えられた。そのため,循環障害に関与していると考えられた下腿前面筋群に対し,超音波療法を施行した。その結果,即座に歩行時の疼痛消失を認め,その後6ヵ月間,再発することはなかった。【結語】本症例を通し得られた知見はCRPS に対する循環障害の関与とそれに対する超音波療法の有用性を示唆するものである。
著者
西 亮介 野中 一誠 中澤 里沙
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-153_1-H2-153_1, 2019

<p>【はじめに、目的】投球肩・肘障害の要因の1つに不良な投球フォームが挙げられる.臨床上行われる,投球動作分析の多くは1回の動作を評価対象とし,高速な運動である投球動作において不十分であると考えられる.また,Early-Cockingは意識下の運動,Accelerationは無意識の運動とされており,上肢運動の速度も異なる.そのため,動作分析の対象となる相によって動作分析の測定回数を変更する必要があると考えられる.そこで本研究は,三次元動作解析装置を用いてFoot-Plant(以下,FP)・Maximum-External-Rotation(以下,MER)・Ball-Release(以下,BR)の3時点における肩・肘関節角度の再現性を求め,測定値の十分な信頼性を得るために必要な測定回数を検討した.</p><p>【方法】過去3ヶ月以内に投球に支障をきたす外傷・障害の既往がないオーバースローもしくはスリークォータースローの甲子園出場レベルの健常高校野球投手9名を対象とした.動作解析には三次元動作解析装置(アニマ社製 ローカス3DMA-3000)および床反力計(アニマ社製 MG-1060)を使用した.対象者の全身のランドマークに反射マーカーを貼付した.動作課題はセットポジションから4m先のネットに向け直球の全力投球3回とした.貼付した反射マーカーを基にFP・MER・BRの3時点の肩・肘関節の関節角度(肩関節外転・肩関節水平内外転・肩関節内外旋・肘関節屈曲)を算出した.信頼性の指標には級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient;以下,ICC)を使用し,ICC(1,1)を算出した.Spearman-Brownの公式よりICC(1,k)が0.9以上になるkの値を求めた.また,各相の各関節角度の変動係数(Coefficient of Variation;以下,CV)を算出した.なお,統計処理にはIBM SPSS statistics Ver.23.0 for Macを用いた.</p><p>【結果】ICC(1,1)は概ね0.9以上であった.しかし,FP時の肩関節外転に関してはICC(1,1)が0.79であった.Spearman-Brownの公式を用いたkの値はFPで3,MERで2,BRで2となった.また,MERおよびBR時の各関節角度のCVは0〜15%以内であったがFP時の肩関節外転に関しては最大で25%を示した.</p><p>【結論(考察も含む)】投手の投球動作の肩・肘関節角度は必ずしも一定していないことが明らかになった.特にFPはMERやBRと比較して上肢運動の速度は遅いにも関わらずCVが大きく,信頼性が低い傾向を示した.その要因の1つに意識下の運動であることが挙げられる.意識下の運動は自分自身でコントロールすることになるため,動作にばらつきが生じたと考えられる.臨床上,FPに着目することが多く見受けられるが,1回の動作分析では不十分であると考えられる.本研究の結果から臨床上の投球動作における動作分析は解析したい相によっては2〜3回の動作分析評価を行う必要性が示唆された.また,本来の投手板からホームベースまでの18.44mと比較し本研究における投球距離は4mと短い.そのため,今後は,投球距離別の信頼性を検討することが必要である.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,東前橋整形外科倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2017-04).また,すべての対象者には,ヘルシンキ宣言に従い,本研究の目的,方法,利益,リスクなどを口答および文書で説明し同意を得た.同意は本人とともに保護者もしくは保護者と同等のもののサインをもって研究参加を同意したものと判断した.なお,同意の撤回は,いつでもできることを口答および文書で説明した.</p>