著者
池本 竜則 中田 昌敏 梶浦 弘明 宮川 博文 長谷川 共美 井上 雅之 下 和弘 牛田 享宏
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-40, 2014-03-10 (Released:2014-03-29)
参考文献数
19

Musculoskeletal pain and other clinical complaints are known to increase with age, however its relationship to these symptoms remains unclear. In this study, we investigated the correlation between musculoskeletal pain and other clinical complaints. Questionnaires containing self–reported complaints collected from 3891 people over 30 years old were used for our study. Serf–reported complaints comprised of 33 items including three musculo­skeletal disorders (knee, low back, neck) and another thirty complaints. Firstly, we divided subjects into the following eight different categories by their musculoskeletal condition; a group without musculoskeletal disorder (Control), a group with knee pain alone, a group with low back pain alone, a group with neck stiffness alone, three groups which had overlapping pain in above two regions and a group with overlapping pain in all regions. Secondly, we investigated the epidemiological background and analyzed the number of other complaints in each group.   In terms of epidemiological background, the ages in groups with any musculoskeletal disorders were significantly higher than those in control. Moreover, groups with musculoskeletal disorders except low back pain alone were significantly more prevalent in women. Groups with any musculo­skeletal disorders had significantly greater numbers of other complaints compared to control. Comparing the three groups with mono–regional pain, we discovered the number of other complaints was more significant in the group with neck stiffness than in the other two groups. The theoretical number of other complaints in a group with pain in all regions was significantly greater than the sum in each group with mono–regional pain.   These findings suggest that musculoskeletal disorders are not only a regional problem but also affect other organs in the human body, followed by an increase of other unidentified complaints.
著者
宮川 博文 池本 竜則 井上 雅之 中田 昌敏 下 和弘 大須賀 友晃 赤尾 真知子 本庄 宏司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0033, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後のリハビリテーション(以下リハビリ)において,受傷前レベルの競技復帰を目標とした場合,膝関節筋力,可動域など傷害部位局所の運動能力の回復に加え瞬発力,全身持久力など全身的な運動能力の回復が必要となる。今回,ACL受傷前の健常な状態での膝関節筋力及び全身的な運動能力測定を実施できたバスケットボール選手の再建術後の運動能力の回復についてフォローアップすることができたので,考察を加え報告する。【方法】症例は19歳女性,WJBLバスケットボール選手であり,バスケットボール試合中に左膝を捻って受傷(非接触型損傷)。受傷後6週で患側骨付き膝蓋腱採取(BTB)による靭帯再建術を施行した。術後リハビリは愛知医科大学ACL再建術後リハビリプログラムに従い,関節可動域エクササイズ,筋力増強トレーニング,スポーツ動作トレーニングそして競技復帰に向けた再発予防プログラムを再建靭帯への保護という観点から,段階的に実施した。運動能力の測定項目は1.等速性膝伸展・屈曲筋力,2.瞬発力,3.全身持久力とした。等速性筋力はCYBEX社製NORMを用い角速度240・180・60deg/secにおける膝伸展,屈曲筋力(Nm/kg)を,瞬発力はコンビ社製パワーマックスを用い最大無酸素パワー(watts/kg)を,全身持久力はフクダ電子社製マルチエクササイズテストシステムML-1800を用い予測最大酸素摂取量(ml/kg/min)を測定した。測定時期は,①受傷2ヵ月前,②術前(受傷後1ヵ月),③術後8ヵ月(チーム復帰時),④術後12ヵ月(チーム復帰後4ヵ月),⑤術後20ヵ月(チーム復帰後12ヵ月)とした。等速性膝筋力は全ての時期に,瞬発力,全身持久力は②術前を除く4つの時期に測定した。【倫理的配慮,説明と同意】症例報告として紹介する対象者については,本研究の趣旨,内容,倫理的配慮および個人情報の取り扱いに関し,十分な説明を行い,書面にて研究協力の同意を得た。【結果】1.等速性膝伸展・屈曲筋力:測定時期①~⑤の60deg/secにおける膝伸展筋力(Nm/kg)は①患側2.03/健側2.33,②0.84/2.36,③2.54/3.04,④2.39/2.34,⑤2.81/2.81であり,患側,健側共に術後8ヵ月には受傷前以上に回復し,その後も維持され,チーム平均より優れていた。屈曲筋力においても同様の結果であった。2.瞬発力:最大無酸素パワー(watts/kg)は①11.8,③12.4,④12.7,⑤14.5であり,膝筋力と同様,術後8ヵ月には受傷前以上に回復した。3.全身持久力:最大酸素摂取量(ml/kg/min)は①50.5,③47.4,④44.6,⑤51.1であり,膝筋力,瞬発力と異なり,受傷前はチーム平均より高値であったが,術後8ヵ月では受傷前レベルに回復せず,チーム平均より低値であった。術後12ヵ月ではさらに低下を示し,術後20ヵ月で受傷前レベルに回復した。【考察】術後機能評価は一般的に術前との比較を基本とする。しかし,この術前は受傷後であり,筋力において患側は傷害に伴い機能低下し,健側であっても受傷後の安静,運動制限期間により機能低下し健常な状態ではない可能性がある。本症例は受傷2ヵ月前の健常な状態でのチームメディカルチェックによる運動能力テスト結果と術後運動能力の回復を比較し得た希少な症例であった。膝筋力,瞬発力は術後8ヵ月で,受傷前の健常レベル以上に回復し,我々のACL再建術後リハビリプログラムの有効性が確認できた。しかし,全身持久力は術後8,12ヵ月において受傷前レベルに回復しなかった。今回,全身持久力トレーニングは,自転車エルゴメーター,ステップマシン,トレッドミル,水中運動を用い再建靭帯への負荷に注意し,段階的に実施したが,筋力,瞬発力で行っているような定期的な評価を実施せず行ったことが,回復を遅らせた一因と考える。通常,ACL再建術後は手術部位に着目した局所の安定性や可動性,筋力,さらに瞬発力までの評価に止まりがちであり全身持久力まで評価することは少ない。今回の報告は,一例ではあるものの,チーム復帰時に元の競技レベルと比べ,最大酸素摂取量つまり全身持久力が改善されていないことが示され,スポーツ復帰における全身持久力評価の重要性が示唆された。今後は,術後プログラムに競技特性を考慮し,筋力,瞬発力,ステップワーク等の無酸素性運動能力に加え,全身持久力を向上させるため,局所負荷に応じた有酸素性運動プログラムを評価に基づき取り入れることが重要と考える。【理学療法学研究としての意義】本症例より,ACL再建術後の競技復帰を目標としたリハビリは,膝関節機能に加え,競技特性を考慮した無酸素及び有酸素運動能力の評価,トレーニングの重要性が示唆された。今後,特にこの有酸素運動能力について検討を進め,より安全な競技復帰に寄与したいと考える。