著者
中畑 充弘
出版者
明治大学大学院
雑誌
政治学研究論集 (ISSN:13409158)
巻号頁・発行日
no.29, pp.269-296, 2008

本稿は、文化人類学上の'民族誌の記述'をめぐる問題点と並行して、これまで自身が執筆してきた「民族誌」に関して自省的検討をふまえ顧みながら、その留意点を整理するとともに、当課題に随伴する葛藤を克服することを念頭に今後の研究方法を模索する方法論的視座を試論的に提示するものである。1960年代までの民族誌は、構造主義的なモノグラフであり社会の諸要素の有機的連関を構造=機能的分析で示すことに重点を置き、調査地の「生活誌」を'ありのまま'に客観的に描く'科学性'を重視していたのに対し、サイードの『オリエンタリズム』やマーカス&フィッシャーの表象の危機(その背後に潜む代表(弁)性の問題)が唱えられた以降、ポストモダンの民族誌では従来の客観的記述とされてきた民族誌に潜む政治性、異文化を語る人類学者の特権的地位が痛烈に批判されてきた。
著者
中畑 充弘
出版者
明治大学大学院
雑誌
政治学研究論集 (ISSN:13409158)
巻号頁・発行日
no.19, pp.43-64, 2003

本稿は、企業内における部門間のコンフリクトの分析・考察である。この対立・衝突は組織内部システムの問題であると同時に、企業の全社的な戦略の方向性を左右する決定的な要因を含んでいる。しかしながら筆老の目的は、利潤追求・合理効率化のプログラム遂行のため、もしくは、企業の健全性の回復やその再始動・再稼動のために、この闘争を回避する方法・施策を提示することに非ず、一見マイナス・イメージに解され易い、この"対立"や"衝突"が全社的な目的を達成していくうえで有意味な"価値"を創出していることに関心をいだき、それら対立構造と価値体系を分析することにある。なぜなら、これらの"対立・衝突・闘争"の連続こそが、企業の「経営文化」なるものを生成しているのではないか?という自らの問いに何らかの回答を提示してくれるものと信じているからである。
著者
中畑 充弘
出版者
明治大学大学院
雑誌
政治学研究論集 (ISSN:13409158)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-43, 2005

本稿は、2004年の鉄鋼マーケットの好況下における鉄鋼流通業界の'歓喜'と'苦悩'のカンパニー・グラフィー(社誌)に関する記述である。近年、それまで基幹産業の代表格としての鉄鋼業界は'斜陽産業'とレッテルを貼られてきたものの、高度成長時代からはおよそ30年ぶり、そしてバブル経済からは約15年ぶりに好況期(2004年~)を迎えた。鉄鋼需要過多と価格高騰に因る企業業績の改善によりメーカー・商社・流通ともに久方ぶりに恩恵を受けたが、反面、未曾有の世界的需要の増大で、供給限界や材料調達難など数々の問題点が露呈してきたことも事実である。殊に2004年の鉄鋼事情はこれまでの実需旺盛型の好景気とはどうやら質を異にし、好転の主たる要因は正に世界経済・世界市場の事情と関連もしくは直結しており、筆老の調査した日本最大の鉄鋼流通基地である鉄鋼流通各社の好況や'賑わい'が世界的な鉄鋼需要・消費量及び地球規模の鉄源の生産・供給能力と密接に関連していることがつぶさに実感できる2004年であったと言っても過言ではない。
著者
中畑 充弘
出版者
明治大学大学院
雑誌
政治学研究論集 (ISSN:13409158)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-30, 2007

企業内における部門間のコンフリクト(とりわけ「タスク・コンフリクト」)の諸場面をとり挙げながら、各部門間の対立ないし衝突時に、如何なる解決法が採られ、どのような統一・収敷法が模索されているのかを精査することが目的である。各部門間のコンフリクトのケース・スタディを含め、文化人類学的手法を援用しカンパニー・グラフィー(「社誌」ないし'会社の生活誌')の構成を試みる。さらに、それら問題状況ないし葛藤の克服に「会社神話」なるものがコンフリクトの統合・収束に一役買っていること、そしてその「会社神話」が各部門の統一見解やモラールの結束を図る上で、如何に巧妙に活用されていることを示すものである。コンフリクトの諸場面を因果的に切り取って観察していくと社内諸部門、売上先の購買部門との狭間で、より複雑怪奇な様相もしくは駆け引きや戦略が見てとれる。