著者
松久保 眞 野口 啓幸 中目 和彦 家入 里志
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1218-1222, 2016-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
21

症例は1 歳7 か月女児.夕食後,木製の箸を手に把持した状態で転倒した際に,箸先端が左頬部に刺さった.母親が可及的に刺さった箸を抜去した後に当院救急センターを受診した.箸の先端は約1.5 cm 破損し,その所在は不明であったが,単純X 線検査と超音波検査では異物の残存は同定できず経過観察となった.しかし2 日後に発熱,食欲不振が出現したため再診した際に,CT 検査を施行したところ左顎関節周囲に高吸収域を認め,異物の残存が疑われた.3 次元再構築したCT 画像(以下3D-CT)により左顎関節内に残存する木片異物の正確な位置と形状を特定し,全身麻酔下の手術で木片を除去することができた.術後に軽度の顔面神経麻痺を認めたが軽快し,術後7 日目に退院となった.木片異物はX 線透過性が高いため単純X 線検査では見逃される可能性がある.異物の残存が否定できない場合はCT 検査まで行い,3 次元構成により確認することが必要であると考えられた.
著者
川野 孝文 向井 基 中目 和彦 武藤 充 加治 建 松藤 凡
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.793-798, 2015-06-20 (Released:2015-06-20)
参考文献数
15

【目的】九州小児外科研究会施設会員に対する虫垂炎手術症例のアンケート集計結果をもとに腫瘤形成性虫垂炎に対する待機的虫垂切除の有用性について考察を加えた. 【方法】15 歳以下虫垂炎手術症例の集計をもとに開腹手術と腹腔鏡下手術の比較,腫瘤形成性虫垂炎と非腫瘤形成性虫垂炎の比較,腫瘤形成性虫垂炎の一期的虫垂炎手術症例と待機的虫垂炎手術症例の比較を行った. 【結果】開腹手術と腹腔鏡下手術を比較すると手術時間(68.0±31.8 分 vs. 94.0±42.1 分)が腹腔鏡下手術で長く,創部感染率(4.7% vs. 0.8%)が開腹手術で高値を示した.腫瘤形成性虫垂炎と非腫瘤形成性虫垂炎を比較すると手術時間(122.6±65.3 分 vs. 83.5±38.8 分),術後入院日数(10.3±7.2 日 vs. 5.7±3.1 日),術後合併症率(21.4% vs. 5.4%)が腫瘤形成性虫垂炎で高値を示した.腫瘤形成性虫垂炎に対する一期的虫垂切除症例と待機的虫垂切除症例を比較すると,術後合併症率(21.4% vs. 0%)と術後入院日数(10.3±7.2 日 vs. 4.3±1.9 日)が待機的手術症例で低値を示したが,総入院日数(11.9±8.4 日 vs. 19.0±6.5)は待機的手術症例で高値を示した.手術時間や術中合併症に有意差はなかった. 【結論】腫瘤形成性虫垂炎が治療に難渋する病態であることが改めて示された.術後合併症率の低下,術後入院日数の短縮より腫瘤形成性虫垂炎に対する待機的手術の有用性が示されたが,総入院期間の延長などの問題点も見られた.