著者
桝屋 隆太 岡本 好司 木戸川 秀生 山吉 隆友 野口 純也 伊藤 重彦 南川 将吾 神薗 淳司 家入 里志
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.864-869, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
38

14歳男児.日常的にサーモンの刺身を食べていた.突然生じた右上下腹部痛のため当院を受診したところ同部に筋性防御,反跳痛を認めた.血液生化学検査で白血球および肝胆道系酵素の上昇を,腹部造影CTでは胆囊周囲および右下腹部に腹水貯留を認めたが胆石や胆管拡張の所見はなかった.審査腹腔鏡では黄色透明な胆汁性腹水貯留および胆囊漿膜の黄色変性を認めたが,明らかな穿孔部位はなく,胆囊摘出は施行せず腹腔内を洗浄しドレーンを留置して終了した.全身状態は速やかに改善し,術後1日目に腹痛はほぼ消失しドレーン排液も淡血性となった.原因検索のため便を鏡検したところ多数の虫卵を認め,形状から日本海裂頭条虫と診断した.プラジカンテル内服により翌日虫体が排泄され,腹部症状の再燃なく経過し,術後14日目に軽快退院した.条虫の感染を伴う漏出性胆汁性腹膜炎は極めて稀であり,文献的考察を踏まえ報告する.
著者
荒 桃子 家入 里志 西澤 祐吏 本多 昌平 渡邊 祐介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

鎖肛に対する肛門形成術は様々な術式が開発されているにも関わらず,術後の排便機能は必ずしも十分なものとは言えず,就学や就労といった社会活動に影響を与え,成人に至ってもQOLを損ねる要因となり得る.本研究では,鎖肛術後の排便機能の改善を目指し,患児が自宅で継続できる簡易バイオフィードバック装置の開発を目的としている.肛門内に安全に挿入できる筋電図センサーの作成と,これと連動するスマートフォンアプリケーションの開発を行う.約1年かけてセンサー,アプリケーションの開発を行い,次の2年間で臨床試験を行い,その効果を検証する.この研究により鎖肛術後患児の排便機能改善に貢献するものと考える.
著者
松久保 眞 野口 啓幸 中目 和彦 家入 里志
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1218-1222, 2016-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
21

症例は1 歳7 か月女児.夕食後,木製の箸を手に把持した状態で転倒した際に,箸先端が左頬部に刺さった.母親が可及的に刺さった箸を抜去した後に当院救急センターを受診した.箸の先端は約1.5 cm 破損し,その所在は不明であったが,単純X 線検査と超音波検査では異物の残存は同定できず経過観察となった.しかし2 日後に発熱,食欲不振が出現したため再診した際に,CT 検査を施行したところ左顎関節周囲に高吸収域を認め,異物の残存が疑われた.3 次元再構築したCT 画像(以下3D-CT)により左顎関節内に残存する木片異物の正確な位置と形状を特定し,全身麻酔下の手術で木片を除去することができた.術後に軽度の顔面神経麻痺を認めたが軽快し,術後7 日目に退院となった.木片異物はX 線透過性が高いため単純X 線検査では見逃される可能性がある.異物の残存が否定できない場合はCT 検査まで行い,3 次元構成により確認することが必要であると考えられた.
著者
家入 里志 小幡 聡 神保 教広 宗崎 良太 橋爪 誠
出版者
一般社団法人 日本コンピュータ外科学会
雑誌
日本コンピュータ外科学会誌 (ISSN:13449486)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.67-71, 2015 (Released:2016-04-16)
参考文献数
15

欧米とほぼ同時期の2000年頃に臨床試験が開始されたロボット手術1), 2) も, わが国においては医療機器に対する薬事法での製造販売承認に時間を要したものの, 2014年12月現在, 200台近いda Vinci®システムが導入され, いよいよ今後の外科系の各領域での普及が期待される. この約15年間で, わが国における低侵襲外科治療は内視鏡外科手術を中心に飛躍的な発展を遂げ, 世界有数の内視鏡外科手術の技術を有する国となっている. このような状況下で, 今後ロボット手術が本邦で普及するにあたっては, ロボット手術のコストに見合う診療報酬を確保できるかという医療制度の問題と, 手術のクオリティを担保する医師の教育・トレーニングが課題となると考えられる. 本稿では, 現在のトレーニングの状況に関して解説する.
著者
田口 智章 家入 里志 橋爪 誠 増本 幸二
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

・超音波画像とMRI画像の統合(2D-3Dレジストレーション)従来の超音波の2D画像とMRIの3D画像を画像解析にて座標統合する技術を開発した。超音波の画像認識技術、及びMRIボリュームから高速に病変部を高速に抽出(セグメンテーション)する技術は既に開発済みであったため、これらを応用発展させ、座標統合技術と補完的に用いることできることを確認した。・MRI誘導による穿刺による胎児手術モデルでの実証実験平成21年度の成果をうけ最終的にリアルタイムの診断と治療が融合した治療システムとしてのMRI撮像下でのマスタースレーブ手術支援ロボットを用いた実験を行った。まず臓器モデルを用いたMRIを撮像し、ナビゲーションシステムを用いて、臓器のセグメンターションを行い詳細な術前計画をたて、手術プロトコールを作成した。次に子宮を模したモデルを用いて経子宮的に小型ロボット用のトロカーを留置、3D内視鏡と7自由度を有するマニュピレータを子宮モデル内に留置、ロボットの鉗子先端と臓器のレジストレーションを行い、その後MRIのガントリ内にモデル・ロボット共にピットインし、撮像しながら、内視鏡画像・術前3D画像・リアルタイム撮像画像を参考に手術操作が可能なことを確認した。このMRI対応小型マスタースレーブ手術支援ロボットに分担研究者が開発したMRI対応多自由度細径鉗子を搭載し、その利点を最大限に生かした手術操作を遂行し、モデルを用いた手術操作では胎児手術操作が可能なことを実証した。