著者
森 裕介 鈴木 元彦 長谷川 千尋 中西 弘紀 中井 一之 江崎 伸一 竹本 直樹 村上 信五 岩崎 真一
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.292-298, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
22

背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は今や全世界に拡大しパンデミック化している。また欧米において嗅覚・味覚障害が重要な症状として報告されているが,本邦における報告はほとんど認められない。以上を踏まえ,本研究ではCOVID-19による嗅覚・味覚障害について検討を加えた。方法:カルテからCOVID-19患者の年齢,性別,臨床症状と血中CRP結果を抽出し,解析した。結果:100例のCOVID-19患者において,嗅覚障害を訴えたのは45例(45%)で,味覚障害は44例(44%)であった。このうち嗅覚・味覚障害の両方を訴えた患者は41例で,嗅覚障害のみは4例,味覚障害のみは3例であった。また嗅覚障害を訴えた症例の年齢と血中CRP値は,訴えなかった症例よりも有意に低値であった。同様に,味覚障害を訴えた症例の年齢と血中CRP値は訴えなかった症例よりも有意に低値であった。さらに,嗅覚・味覚障害の経過についても検討を加えたが,ともに発症後1週間以内に症状が消失する症例も見られた。結語:COVID-19は日本人においても高率に嗅覚・味覚障害を引き起こすことが示された。また,嗅覚障害や味覚障害は若年者でより高率に発現し,血中CRPは低値を示す症例が多かった。少数ではあるが味覚障害のみで嗅覚障害を訴えなかった症例が存在したことから,風味障害以外のメカニズムによる味覚障害の可能性も示された。