- 著者
-
鈴木 元彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.119, no.1, pp.22-28, 2016-01-20 (Released:2016-02-06)
- 参考文献数
- 15
アレルギー性鼻炎は国民の20%以上が罹患しており, 今や「国民病」ともいわれている. またアレルギー性鼻炎は QOL (Quality of life) に大きく影響し, その治療は重要となる. アレルギー性鼻炎の治療は ①抗原回避, ②薬物療法, ③手術療法, ④免疫療法に大別されるが, 実際の診療においては薬物療法が中心となる. 薬物療法は病型と重症度に応じて薬剤の選択がなされるが, 一般的には抗ヒスタミン薬, 鼻噴霧ステロイド薬等が中心となった治療が施行される. また抗ヒスタミン薬の選択においては健康な睡眠等を考慮して第一世代抗ヒスタミン薬でなく第二世代抗ヒスタミン薬が推奨される. そして, 薬物療法のみならず手術療法も有用な治療手段として行われるが, これらの治療はともに対症療法であり根治療法ではない. したがって, アレルギー性鼻炎に対する唯一の根治療法である免疫療法が, 患者サイドのみならず医師サイドからも必要とされてきた. 免疫療法と言えば以前より皮下に抗原を投与する皮下免疫療法 (subcutaneous immunotherapy; SCIT) が行われてきたが, 近年行われるようになった舌下に抗原を投与する舌下免疫療法 (sublingual immunotherapy; SLIT) は皮下免疫療法よりも安全な治療法であると考えられ期待されている. また皮下免疫療法, 舌下免疫療法はともに有用な根治療法であるが, これらの効果は確実なものでなく, さらに重篤な副作用を生じる可能性がある. 以上より, アナフィラキシーショック等の重篤な副作用のない, より安全で効果の高い免疫療法の開発が期待されている. 以前より, 私はより安全でより効果の高い免疫療法を目指して研究を行ってきたが, 近年 siRNA を用いた新しい治療法の有効性を証明した. 以上を踏まえ, 本稿ではアレルギー性鼻炎に対する最新の薬物療法と免疫療法について概説する.