著者
戸塚 米太郎 大津 金光 中里 学 秋葉 智弘 松本 尚 平木 敬
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1652-1661, 1995-07-15

多くの大規模実用アプリケーションは、並列度の抽出が容易に可能な部分と困難な部分を含む。粗粒度により並列実行可能な部分はプロセッサの台数効果によりスピードアップが可能であるが、粗粒度並列化が困難な部分がボトルネックとなる。並列化が困難な部分にも高速化を達成するために細粒度の並列性の活用が不可欠である。しかし、従来のバス結合型マルチプロセッサでは低オーバヘッドの通信・同期機構が備わっていなかったため、命令レベルの並列性を利用する細粒度並列処理を効率良く行うことは不可能であった。我々が開発したお茶の水1号は市販の高性能マイクロプロセッサを用いた共有メモリ共有バス型のマルチプロセッサである。お茶の水1号は効率的な細粒度並列処理を達成するために、低オーバヘッドで通信・同期を実現するための細粒度支援機構を備えている。細粒度支援機構には共有バスを使用せず極めて小さいオーバヘッドで同期を実現する大域同期機構・メモリベースの通信・同期を融合したデータ駆動同期機構、大規模な配列データを効率的にフェッチする大域構造体先行フェッチ機構、および、最適なスヌープ・プロトコルに動的に切替え可能なスヌープキャッシュ制御機構、等を備えている。本論文ではお茶の水1号におけるこれらの細粒度支援機構の構成について述べ、並列アプリケーションを用いたシミュレーションによる性能を示す。また、お茶の水1号上でプログラムを実行した結果を述べる。