著者
海谷 慧 岡野 こずえ 松浦 亜由美 宮原 悠太 荒木 三奈子 中野 かおり
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.14-21, 2015-01-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
7

播種性血管内凝固症候群(DIC)の原因の一つとして敗血症が知られている。その原因成分としてグラム陰性菌細胞壁構成成分であるLipopolysaccharide(LPS)が最重要視されている。LPSは単球や血管内皮細胞に炎症性サイトカインや組織因子(tissue factor:TF)を産生させ,DIC発症に影響を与えるとされるが,LPSを持たないグラム陽性菌や真菌も敗血症性DICの原因菌となることも報告されている。我々は,敗血症の原因菌の菌種および菌株の違いがDICの発症機序や病態にどのような影響を及ぼすのかを検索するために,グラム陰性桿菌(Escherichia coli,Klebsiella pneumoniae),グラム陽性球菌(Staphylococcus aureus,Coagulase-Negative-Staphylococci),真菌(Candida albicans)を用いて,ヒト単球細胞株U937細胞とヒト末梢血単核球(PBMC)を刺激した。それらの反応性についてフローサイトメトリー法を用いてTF とInterleukin-6(IL-6)の各細胞の陽性率を比較し,細菌由来刺激物質と各種細胞反応性との関連を証明することを試みた。また,細菌由来刺激物質として,細菌菌体と細菌菌体抽出物の両方を比較検討した。グラム陰性桿菌,グラム陽性球菌,真菌すべてがU937細胞とPBMCにIL-6およびTFを産生させた。U937では,TF陽性率はEsherichia coli,IL-6陽性率はCoaglase-Negative-Staphylococciが最も陽性率が高かった。一方,PBMCではTF,IL-6陽性率の個人差が大きく,最も陽性率が高い菌も人によって様々であった。このことより,敗血症における生体の反応性は,菌種の違いよりもヒト個体差のほうが大であると考えられた。