著者
間瀬 浩安 田中 彩乃 篠生 孝幸 野崎 司 浅井 さとみ 宮地 勇人
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.413-420, 2015-07-25 (Released:2015-09-10)
参考文献数
6

カフェインはコーヒーや紅茶などに含まれる一般的な物質である。また感冒薬や鎮痛薬など市販薬などにも含まれる物質である。今回,我々は血中カフェイン濃度についてLC-MS/MSを用いイブプロフェン,エテンザミドおよびロキソプロフェンとの同時分析を可能にした。カフェインのPrecursor ionは195.1 m/z,Product ionは138.1 m/zであった。固相カートリッジ抽出の回収率は90%以上であった。HLBを使用した検出限界は0.01 μg/mLであった。イブプロフェン測定法では1.1分に検出され,テオフィリンを測定した場合にもカフェインへの干渉はなかった。缶コーヒー飲用時の血中カフェインピーク濃度は5.65 μg/mL,ピーク時間は60分,半減時間は360分であった。カフェインがイブプロフェン等と同時に測定できることは,感冒薬や鎮痛薬の過量服用の場合の迅速測定に有用である。
著者
柳田 絵美衣 松岡 亮介 林 秀幸 西原 広史
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.131-141, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
15

北海道大学病院では2016年4月に「がん遺伝子診断部」を設置し,業務を開始した。がん遺伝子外来,診療,患者採血,核酸抽出,ライブラリー構築,シークエンス,遺伝子解析,チームカンファレンス(cancer board),遺伝カウンセリング,結果報告をすべてインハウスで行っている,院内完結型網羅的がん遺伝子解析(Clinical Sequence System in Hokkaido University Hospital for Cancer Individualized Medicine:CLHURC検査)を目的とするクリニカルシーケンスを実施する専門部署としては,国内初となった。次世代シーケンサー(next generation sequencer; NGS)を用いて独自でパネル化したがんドライバー遺伝子変異のうち最大160種類を網羅的に解析している。CLHURC検査では,患者の血液と病理組織検体から核酸を抽出し,NGSで遺伝子解析を行っている。検体は検者血液からの正常DNAと腫瘍細胞を含むホルマリン固定パラフィン包埋切片から腫瘍細胞DNAを対象としているため,検体の取扱いが重要ポイントの一つである。従来,ホルマリン固定検体からの核酸抽出は,ホルマリンの影響によりDNAの断片化が進むため,良質なDNA抽出は困難であるとされてきた。また,遺伝子解析の解釈や,遺伝子情報の取り扱いなど,様々な管理や体制が必要となる。今後,クリニカルシーケンスが導入されていく中で起こり得る課題を見据えながら,現在,運用しているクリニカルシーケンス「CLHURC検査」の取り組みを報告する。
著者
板橋 匠美 深澤 恵治 柿島 博志 丸田 秀夫 横地 常広
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.325-331, 2017-07-25 (Released:2017-07-29)
参考文献数
5

臨床検査技術の進歩はめざましいものがある。特にIT技術の進歩により現在でも数多くの新しい臨床検査項目の拡大がなされている。さらに,医師や看護師等の病棟スタッフは安心安全を求める現在の医療体制から多忙な状況であり,日々進化する臨床検査に対応できず,臨床検査領域については臨床検査の専門家に任せたいとする要望が多い現状がある。この状況を背景に厚生労働省では平成19年から,各医療機関の実情に応じた適切な役割分担を推進するよう周知すると共に,日本の実情に即した医療スタッフの協働・連携の在り方等をとりまとめた平成22年4月30日付けの厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を提言した。これを受けて日本臨床衛生検査技師会(以下日臨技)では,病院の臨床検査室で検体を待ち,結果だけを返すという受動的臨床検査技師から,患者の居る場所に出向き,患者に寄り添い医療の一端を担うことのできる能動的な臨床検査技師への新生を目指し,現在まで様々な取り組みを行ってきた。本稿ではこれまでの日臨技としての取り組みを紹介するとともに,臨床検査技師の方向性について論じてみたい。
著者
河月 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.84-89, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
25

嗅覚障害は直接的には生死に関係が少ないことや,外傷性などでない場合は症状の発現や進行が一般的に緩徐であり自覚されにくいことが原因で放置される傾向にある。嗅覚機能は,食品の腐敗への気づきや調理に関与し,ガス漏れや煙など身の危険を察知するためにも重要である。特定の認知症では嗅覚関連領域に病理学的変化が生じるため嗅覚機能の低下をきたすと考えられている。特にアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症でその報告は多く,病期の初期に障害されることがわかっている。認知機能の低下も異常な食行動を招く要因であり,認知症患者における嗅覚機能の低下を早期に発見し,アプローチすることはその後の生活の質を維持するために極めて重要である。しかし,加齢に伴っても嗅覚機能が低下することが知られており,その鑑別を正確に行うことは,現行の嗅覚検査法では困難である。一般的には,認知症の嗅覚障害のほうが重度であると報告されているが,今後,認知症の嗅覚機能の低下をより早期に発見できる検査法や,認知症患者の嗅覚障害への治療法あるいは予防法の開発が期待される。
著者
河月 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.11-21, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
34

神経心理学的検査とは,高次脳機能を評価するための検査であり認知症診療においては必須の検査である。認知症に伴う症状としては,中核症状と行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia; BPSD)があり,これらの症状を定量化する目的で神経心理学的検査が用いられる。神経心理学的検査は,スクリーニングとしての検査,認知症の進行度合いや治療効果の評価としての検査,鑑別診断の補助としての検査に分類することができるが,なかでもスクリーニングとしての検査は臨床検査技師が参画できる領域であると考える。代表的な検査としては改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa’s Dementia Scale-Revised; HDS-R)やMini-Mental State Examination(MMSE)が広く一般に使用されているが,マンパワーをかけずに行える方法としてタッチパネル式コンピュータを用いた簡易スクリーニング法(物忘れ相談プログラム)も推奨される。認知症の症状は様々であり,一つの神経心理学的検査で全ての症状を評価できないため評価目的により使い分ける必要がある。但し,我が国のみならず世界中で多数開発されているため,その選択は検査の信頼性や妥当性,対象疾患やその重症度等を考慮し,しっかりとエビデンスを調べたうえで導入することが望ましい。また,検査の総点数だけで評価するのではなく,どこを間違えたかを確認することで,障害されている機能をある程度推測することができるため,多面的に評価する必要ある。神経心理学的検査は医師または医師の指示により他の従事者が実施できる検査であるが,検査を熟知した者が行うことが望ましいため,認定認知症領域検査技師の認定資格を取得した技師が積極的に行っていくことを期待する。
著者
高村 好実
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.22-38, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
8

画像検査はその機器が高額であることや専門の撮像技術が必要なこと,さらに放射性同位元素を用いることなど,一般的な検査として施行するには多くの条件が必要であり,認知症の診断や治療を行う全ての施設において実施できるものではない。しかし,近年の撮像技術の進歩により脳の器質的変化は高い精度と分解能で画像化でき,脳の萎縮の程度については数ミリ単位での描出が可能となり,その有用性は従来にも増して高まっている。また,脳の機能撮像においても早期アルツハイマー型認知症診断支援システム(Voxel-based Specific Regional analysis system for Altheimer’s Desease; VSRAD)やメタヨードベンジルグアニジン(3(meta)-iodobenzylguanidine; MIBG)心筋シンチグラフィーは精度が高くなり,最近では認知症の原因とされているアミロイドやタウを測定し,認知症症状が出現する前の異常蛋白を捉えることも行われている。今後画像検査は早期発見から診断,治療からフォローにおいて増々その有用性が高まることが期待されている。この章では,認知症における各種画像検査について簡単な解説を加えるとともに,各認知症における各画像診断についての説明をする。
著者
八木 朝子
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-11, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
18

睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは,脳波,顎筋電図,眼球運動,気流,呼吸運動,動脈血酸素飽和度,心電図,前脛骨筋筋電図などを終夜にわたり同時に記録する。睡眠と覚醒の区別,睡眠の質と量を評価し,睡眠を妨げる睡眠時無呼吸,周期性四肢運動障害,ナルコレプシー,てんかん発作やレム睡眠行動障害などの同定と重症度評価が可能な検査である。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の有用性を活かすためには,映像や音声を同時に記録し,専任の臨床検査技師によるモニタリング(監視)下で行うことが求められる。しかしながら装置や設備コストや人件費がかかり,また技師の教育や技能の習得に時間がかかることもあり,実施できる施設は限られている。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の判定結果は,各種睡眠障害の診断に直接的に寄与するため,これらを担う臨床検査技師の職務は重責である。適正かつ安全に実施し,正確に判定する能力が求められる。本稿では,睡眠ポリグラフ検査(PSG)の標準的な測定および判定について,そして我が国における普及状況について述べる。
著者
古川 聡子 河口 勝憲 岡崎 希美恵 森永 睦子 大久保 学 辻岡 貴之 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.44-51, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
1

マイクロピペットは検体の分注・希釈,凍結乾燥タイプのキャリブレーターやコントロールの溶解・調整を行う際に使用されている。マイクロピペットは操作が簡単で,素早く指定量を採取できるが,分注精度を保つには基本的な操作方法に準じて使用する必要がある。今回,マイクロピペットの操作方法が分注精度に及ぼす影響の検証および各施設における操作方法の現状把握のためのアンケート調査を行った。マイクロピペット容量規格の選択については,採取する液量がマイクロピペットの全容量に近いマイクロピペットを選択した方が,正確性・再現性ともに良好であった。また,プレウェッティングを行うことで,分注精度が高まることが確認された。分注方法による正確性についてはフォワードピペッティングの方が良好であり,理論値に対してフォワードピペッティングは低め,リバースピペッティングは高めの傾向であった。また,再現性については水ではフォワードピペッティング,血清ではリバースピペッティングの方が良好な結果となった。したがって,基本的にはフォワードピペッティングとし,粘性のある試料で精密度を保ちたい場合はリバースピペッティングとするのが望ましいと考えられる。試料の温度が室温よりも極端に低い場合,分注精度に影響が出ることも確認された。アンケート調査では各施設で操作方法に違いがあることが明らかとなり,今後,各施設における基本的操作方法の順守が望まれる。
著者
吉田 晃浩 関谷 正徳 内藤 通孝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.305-310, 2014-05-25 (Released:2014-07-10)
参考文献数
13

癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen,CEA)は各種悪性腫瘍の診断および治療後の経過観察において重要な指標であり,臨床において測定される最も一般的且つ,汎用されている腫瘍マーカーである.今回我々は,乳癌の術後経過観察で腫瘍の再発が認められないにも関わらず,血清CEA値が夏季において一過性に5~10 ng/ml以上の高値を示した症例を経験し,その原因について検討を行った.その結果,血清CEA値と週間平均気温,ALT,赤血球数,ヘマトクリット値との間に有意な負相関が認められた.また,週間平均気温が25℃を超えて急激に変化した場合においても,同様に血清CEA値が増加傾向を示すことが明らかとなった.以上より,血清CEA値が夏季,一過性に高値を示した原因として,気温上昇に伴う週間平均気温の上昇が,肝臓等の臓器機能に影響するとともに,CEAの産生・分泌,およびその後の代謝に影響を及ぼした可能性が示唆された.
著者
阿部 瑛紀子 奥田 和之 笠井 香里 小川 将史 東 良子 香田 祐樹 角坂 芳彦 蔦 幸治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.726-730, 2017-11-25 (Released:2017-11-30)
参考文献数
13

症例は53歳の男性。入院3日前より微熱,右側胸部痛があり近医を受診し様子を見ていた。入院当日の朝より四肢の冷感と関節痛の症状が現れ,近医を再度受診したが,全身チアノーゼと橈骨動脈触知微弱でショック状態と判断され,当院に救急搬送となった。入院時所見は全身チアノーゼが顕著,胸部CTで肺炎像があり尿中肺炎球菌抗原が陽性であった。肺炎球菌性肺炎とそれに合併する急性感染性電撃性紫斑病と診断され治療が開始された。早期の診断と適切な治療により,敗血症,播種性血管内凝固症候群からは救命し得た。しかし,紫斑は徐々に悪化傾向を辿り,四肢末端優位に水疱形成,表皮剥離,乾性壊死へと進行し,数回にわたって壊死組織のデブリードマンが施行されたが,進行する壊死を阻止することができず,最終的に左上肢以外の三肢の切断となった。肺炎球菌性肺炎に合併する電撃性紫斑病は主に脾摘などの免疫障害をもつ患者で多く,その死亡率も高い。今回健常人に発症し,また救命し得た稀な症例を経験した。脾摘などの免疫不全がない場合でも肺炎球菌による重症感染症を発症する可能性があることを念頭におき,臨床側との密接なやりとりが必要であると考えさせられた症例であった。
著者
森永 睦子 岡本 操 古川 聡子 河口 勝憲 末盛 晋一郎 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.282-289, 2016-05-25 (Released:2016-07-10)
参考文献数
12

救急医療の現場では,意識障害,ショック患者に薬毒物が関与している場合がある。原因検索の一手段として簡易法の薬物スクリーニング検査キットが利用されている。富士レビオ株式会社より国内販売されているINSTANT-VIEW® M-I(以下,INSTANT-VIEW)は覚せい剤(METH),大麻(THC),コカイン系麻薬(COC),ベンゾジアゼピン系(BZD),バルビツール酸系(BAR),三環系抗うつ薬(TCA)の6種類の薬物および薬物代謝産物の同時検出が可能である。また,操作法はワンステップと簡便であり,反応時間が7分と短い。しかし,判定方法がラインの消失をもって陽性となり,汎用の各種イムノクロマトグラフィー法とは反対であるため注意が必要である。健常人尿に各薬物の標準溶液を添加した模擬尿を用いた測定検出限界の検討では,添付書類の10倍以上の濃度でも検出されない薬物が確認された。今後,臨床検体での確認が必要と思われた。また,四環系抗うつ薬,抗精神病薬はTCAに対し交差反応を示した。INSTANT-VIEWを含むイムノクロマトグラフィー法では偽陽性や偽陰性反応を示す可能性があることを十分理解し判定結果を解釈することが重要である。
著者
石田 奈美 佐藤 伊都子 林 伸英 三枝 淳 河野 誠司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.236-241, 2015-03-25 (Released:2015-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

高速凝固採血管は管口内部壁にトロンビンが塗布されているため,迅速な検査結果報告に適した採血管である。しかし,トロンビン添加が検査値に与える影響について一部の項目しか検討されていないことから,健常者を対象にして,ガラス製採血管,従来凝固促進採血管,高速凝固採血管の3種類の採血管を用いて検査値の比較検討を行った。検査項目は生化学関連検査59項目,腫瘍マーカー・ホルモン関連検査38項目,感染症関連検査24項目,自己免疫関連検査25項目の合計146項目である。それぞれの項目について3種類の採血管の測定値の平均とSDを求め,ガラス管を対照に高速凝固採血管および従来凝固促進採血管の測定値について関連のある2群間の差の検定を行った。その結果,一部の項目で有意差(p < 0.05)を認めたが,対象が健常人のため測定値が近似しており小さな差で統計学的有意となった可能性があった。いずれも臨床的に問題のない範囲であった。健常人において高速凝固採血管を用いた検査値は,ガラス製採血管と比較して臨床的に問題となるような検査値への影響は認められなかった。
著者
河野 浩善 三好 夏季 竹野 由美子 山本 真代 沖川 佳子 野田 昌昭 兼丸 恵子 飯伏 義弘
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.612-619, 2016-05-25 (Released:2017-01-10)
参考文献数
23

近年,真性赤血球増加症(PV)の約98%でJAK2-V617FまたはJAK2 exon 12変異を認め,本態性血小板血症(ET)の約80%でJAK2-V617F,MPL,CALR変異のいずれかを認めることが報告されている。今や骨髄増殖性腫瘍において遺伝子変異の解析は診断上必須であるにもかかわらず,限られた施設でしか検査できないのが現状である。我々は,PV,ETおよび各反応性血球増加症における末梢血液検査データについて後方視的解析を行い,スクリーニングへの応用やJAK2-V617F変異の予測について検討した。その結果,IPF countはPVおよびET症例群で有意に高値を示し,NAP scoreはPVおよびETの中でもJAK2陽性症例群において有意に高値を示すことが分かった。さらに,JAK2-V617F変異予測におけるROC解析の結果,IPF countおよびNAP scoreはAUCが0.9以上と予測能が高かった。我々はIPF countのカットオフ値を10,000/μL(真陽性率100%,偽陽性率16.7%),NAP scoreを250(真陽性率85.7%,偽陽性率25.0%)に設定し,症例をIPF count 10,000/μL未満&NAP score 250未満のA群,IPF count 10,000/μL未満&NAP score 250以上のB群,IPF count 10,000/μL以上&NAP score 250未満のC群,IPF count 10,000/μL以上&NAP score 250以上のD群に分類した。A,B群には各反応性血球増加症が91.7%と高率に含まれ,D群はJAK2変異陽性率が94.7%と高かった。このように,PV,ETにおいてIPF countおよびNAP scoreは,反応性血球増加症例との鑑別に有用であり,迅速かつ簡便にJAK2-V617F変異を予測できる可能性が示唆された。
著者
丸山 恵理 佐藤 実 小松 博史 澁谷 斉 清水 力
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.55-63, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
19

症例は65歳男性。2011年5月特発性心室細動の診断で植込み型除細動器(ICD)を装着し社会復帰。2012年9月自宅で突然意識消失,10数秒後に意識回復するも,ICD植込み後初の意識消失であったため入院。12誘導ホルター心電図により心室細動とICDの作動が確認された。心室細動のトリガーとなる心室期外収縮は左脚ブロック上方軸であり,このことから起源を右室下壁と推定し,アブレーションを施行した。さらに治療前後に12誘導ホルター心電図で認めた心室期外収縮について連結期と先行RR時間によるプロット解析を試みた。治療前後で回帰直線を比較すると勾配が明らかに異なり,治療効果の判定に有効であることが判明した。また,連結期/先行RR時間比を時間軸に並べることにより次の事が明らかとなった。本症例の心室細動発症前2時間には,さらにその前2時間と,心室細動発症後2時間に比較して,先行RR時間が有意に長く,かつ,連結期/先行RR時間比が有意に小さい心室期外収縮が繰り返されていた。先行RR時間の延長により再分極相に不安定要素が生じ,次の連結期/先行RR時間比が小さいことにより受攻期への刺激が続き,受攻性が高まり,心室細動発症に至ったのではないかという発症機序を推察した。更なる症例の集積と解析が望まれる。
著者
岡山 直子 西岡 光昭 中原 由紀子 宮原 悠太
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.666-674, 2015-11-25 (Released:2016-01-10)
参考文献数
10

遺伝子検査が臨床検査へのサービスとして求められているものは,様々な種類のサンプルによる解析および限られたサンプル量での情報提供を短時間で行うことである。そこでこれまでに我々が行ってきた核酸抽出を中心に遺伝子検査の変遷についてまとめた。末梢血液検体からはフェノ・クロ法,NaI法,抽出装置によるDNA収量の比較を行った。FFPE検体からは脱パラフィン操作の影響,ホルマリン固定時間,パラフィン包埋の影響を検討した。HE染色標本を用いてマイクロダイセクションとレーザーマイクロダイセクションによる目的部位の収量を比較した。さらに今後遺伝子検査の主力になると予想される自動遺伝子解析装置についてまとめた。またこれまでに行われてきた日本臨床検査技師会研修会を振り返り,今後,我々検査技師の力がより発揮できる遺伝子検査に期待したい。
著者
鳥居 洋祐 大西 崇文 長友 忠相 佐藤 元 中村 純子 鳥居 良貴 森井 英一 廣田 誠一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.221-227, 2018-03-25 (Released:2018-03-27)
参考文献数
8

グロコット染色は一般に,銀液の温度や反応時間の設定が難しく,施行者間での染色性に差が生じやすい。特にメセナミン銀液を用いる従来法ではその傾向が強いことから,銀液の反応時間の許容範囲が大幅に広く,また塩化金液による菌体の染色性を調節することができるクロム酸アンモニア銀法を用いることで施行者間での相違が少なくなることが期待される。しかし,これまでには温熱下での銀液反応時間の設定や,真菌ごとの至適条件の検討は十分には行われていない。今回我々は,従来法とクロム酸アンモニア銀法における各種真菌での溶融器と温浴槽を用いた銀液の反応時間および塩化金液の反応時間を比較検討した。検討した真菌はアスペルギルス,クリプトコッカス,ニューモシスチス・イロベチーの3種類で,いずれの真菌でも溶融器を用いた場合に,良好な染色性を示す銀液の反応時間の幅が最も広いことが確認された。また,いずれの真菌においても塩化金液の反応時間を変えることで菌体の色の濃さが調節でき,いずれも1~5分で十分な染色が行えることが明らかになった。溶融器を用いたクロム酸アンモニア銀法によるグロコット染色は,塩化金液での染色時間を真菌ごとに調節することで,施行者間の差の少ない安定した結果が得られるものと考えられる。
著者
高嶋 浩一 清水 俊彦 朝倉 伸司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.403-409, 2018-05-25 (Released:2018-05-30)
参考文献数
12

症例は78歳,男性。夕刻に西日の眩しさを気にしながら自家用車を運転していたところ,急に右手のけいれんが起きてパニックになりガードレールに衝突した。頭部MRIのFLAIR画像では両側に高信号域が散見された。また,頭部MRAでは右中大脳動脈の狭窄があった。脳波は3 Hzの光刺激で開始から約1秒後に前頭部優位の小棘・徐波複合が出現した。その後12 Hzの光刺激において開始直後に顔面と上半身がけいれんした状態になり,名前を呼んだが無反応であった。けいれんは約10秒で治り呼名にも応じるようになった。本症例は問診,画像所見,および脳波上のてんかん性放電の出現により症候性てんかんの臨床診断となった。今後,超高齢化社会の到来により,子どもの病気と考えられていたてんかんが高齢者にも増えることが予想される。てんかんであれば薬剤で治療できる疾患である。これは脳波担当の臨床検査技師,および多くの高齢者と日常的に接する老人介護施設のスタッフ,地域のケアマネージャーも認識する必要がある。
著者
高嶋 浩一 朝倉 伸司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.391-397, 2018

<p>血液透析(hemodialysis; HD)患者の足の冷感と皮膚温,皮膚灌流圧(SPP)の関係を糖尿病合併の有無において検討した。対象はHD患者204例(男性144例,女性60名,うち糖尿病94名,非糖尿病110名),年齢25~91歳(平均:63.5歳),透析歴1ヶ月~34年1ヶ月である。方法は足の症状を問診して足部の皮膚温を皮膚赤外線体温計で計測し,足底SPPを測定した。検討の結果,(1)糖尿病では31例(33%),非糖尿病では31例(28.2%)に足の冷感があった。糖尿病では足の冷感に伴い足部温の有意な低下があったが,非糖尿病では足の冷感の有無による足部温の有意差はなかった。(2)糖尿病と非糖尿病の足部温と足底SPP値には正の相関が認められた。(3)糖尿病の左足底SPP値は75.3 ± 21 mmHg,右足底SPP値は76.5 ± 18.2 mmHgであり,非糖尿病の左足底SPP値80.2 ± 19.2 mmHg,右足底SPP値81.6 ± 15.7 mmHgに比して有意に低下していた。以上よりHD患者において足部温と足底SPP値に相関関係がみられたことは,HD患者の足部温低下は足の毛細血管における血流障害に起因すると考えられる。また,糖尿病HD患者は足の冷感があり,かつ足部温の低下と足底SPP値の低下も認められたことは,糖尿病の合併症である自律神経障害による血管運動異常,および細小血管障害が関与していることが示唆された。</p>
著者
古川 聡子 河口 勝憲 岡崎 希美恵 辻岡 貴之 通山 薫 佐々木 環
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.563-568, 2018-07-25 (Released:2018-07-28)
参考文献数
6

2008年にクレアチニン(Cre)から算出した推算glomerular filtration rate: GFR(eGFRcre)が,2012年にはシスタチンC‍(Cys)から算出した推算GFR(eGFRcys)が公表され,推算GFRは臨床現場で簡便な腎機能の指標として活用されている。しかし,しばしばeGFRcreとeGFRcysが乖離する症例に遭遇する。そこで,今回eGFRcreとeGFRcysはどの程度一致するのか,また乖離症例にはどのような特徴があるのかを検証した。全症例(n = 226)での相関関係は回帰式y = 0.92x + 2.44,相関係数r = 0.868と良好な結果であったが,CKD重症度分類のGFR区分におけるeGFRcreとeGFRcysの一致率は55.8%と約半数であった。不一致例はeGFRcreと比較し,eGFRcysの区分が軽い症例と重い症例が同等に存在し,どちらか一方への偏りは認めなかった。さらにGFR区分が2段階以上異なる症例は8症例で全体の3.5%であった。eGFRcys/eGFRcre比の比較では,その比が最も1.00に近かった60歳代を基準とすると,若年では高く,高齢では低くなる傾向を認めた。また,eGFRcys/eGFRcre比は体表面積が大きいほど,血清アルブミンが高値なほど高くなる傾向を示し,高度蛋白尿では低値となった。腎機能評価においては,各推算式の特徴や乖離要因を把握した上で使用することが重要である。
著者
(一社)日本臨床衛生検査技師会 尿沈渣特集号編集部会
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-1, pp.154-164, 2017-03-31 (Released:2017-07-11)

尿沈渣検査は,尿中に出現する成分を尿の遠心操作にて得られた沈殿物を観察する検査である。尿沈渣の標本作成における操作が単純であるにもかかわらず,尿沈渣に出現する成分は多種多様であるため,鑑別が非常に複雑である。その要因としては,尿沈渣に出現する尿中有形成分が,ひとつの成分においても様々な形態で存在することがある。たとえばシュウ酸カルシウム結晶では正八面体型とビスケット型,コマ型などが存在し,尿細管上皮細胞に至っては基本型,特殊型と細胞形態のバリエーションが多岐にわたる。このように尿沈渣検査では成分を正しく鑑別するための知識と技術が必要である。この部では,尿沈渣に出現する基本的な尿中有形成分を鑑別する知識を習得するために,最も基本となる成分の写真について「尿沈渣検査法2010」の尿沈渣アトラスを引用(一部改編)し掲載する。また「*」でマークした写真は,尿沈渣成分の新たな情報として追加したものである.この尿沈渣アトラスを利用し,各成分の特徴を捉えることをしっかりと身につけ,今後遭遇するであろう鑑別困難な成分に対しても対処できるよう,基礎知識を学習することを目的とする。