著者
間瀬 浩安 田中 彩乃 篠生 孝幸 野崎 司 浅井 さとみ 宮地 勇人
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.413-420, 2015-07-25 (Released:2015-09-10)
参考文献数
6

カフェインはコーヒーや紅茶などに含まれる一般的な物質である。また感冒薬や鎮痛薬など市販薬などにも含まれる物質である。今回,我々は血中カフェイン濃度についてLC-MS/MSを用いイブプロフェン,エテンザミドおよびロキソプロフェンとの同時分析を可能にした。カフェインのPrecursor ionは195.1 m/z,Product ionは138.1 m/zであった。固相カートリッジ抽出の回収率は90%以上であった。HLBを使用した検出限界は0.01 μg/mLであった。イブプロフェン測定法では1.1分に検出され,テオフィリンを測定した場合にもカフェインへの干渉はなかった。缶コーヒー飲用時の血中カフェインピーク濃度は5.65 μg/mL,ピーク時間は60分,半減時間は360分であった。カフェインがイブプロフェン等と同時に測定できることは,感冒薬や鎮痛薬の過量服用の場合の迅速測定に有用である。
著者
山本 徳栄 近 真理奈 伊佐 拓也 根岸 努 森 芳紀 前野 直弘 小山 雅也 森嶋 康之
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.493-499, 2017-09-25 (Released:2017-09-30)
参考文献数
17

2008年1月から2016年11月の期間中,埼玉県動物指導センターに収容されたイヌとネコから直腸便を採取し,腸管寄生虫類の検索を行った。イヌは1,290頭中296頭(23.0%)が寄生虫類陽性で,検出種とその陽性率はイヌ鞭虫(15.0%),イヌ鉤虫(6.4%),イヌ回虫(2.1%),イヌ小回虫(0.2%),マンソン裂頭条虫(2.0%),瓜実条虫(0.2%),日本海裂頭条虫(0.1%),縮小条虫(0.1%),Isospora ohioensis(1.3%),ランブル鞭毛虫(0.5%),Cryptosporidium canis(0.5%),腸トリコモナス(0.2%)およびIsospora canis(0.1%)であった。ネコは422頭中216頭(51.2%)が寄生虫類陽性で,検出種とその陽性率はネコ鉤虫(25.1%),ネコ回虫(17.8%),毛細線虫類(1.7%),マンソン裂頭条虫(18.2%),瓜実条虫(1.9%),テニア科条虫(0.5%),壺形吸虫(6.9%),Isospora felis(5.2%),Isospora rivolta(1.4%),Cryptosporidium felis(0.7%)およびToxoplasma gondii(0.2%)であった。また,2000年4月から2015年10月の期間中,同施設に収容されたネコから採血し,T. gondiiに対する血清抗体価を測定した。ネコにおけるトキソプラズマ血清抗体は,1,435頭中75頭(5.2%)が陽性であった。
著者
柳田 絵美衣 松岡 亮介 林 秀幸 西原 広史
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.131-141, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
15

北海道大学病院では2016年4月に「がん遺伝子診断部」を設置し,業務を開始した。がん遺伝子外来,診療,患者採血,核酸抽出,ライブラリー構築,シークエンス,遺伝子解析,チームカンファレンス(cancer board),遺伝カウンセリング,結果報告をすべてインハウスで行っている,院内完結型網羅的がん遺伝子解析(Clinical Sequence System in Hokkaido University Hospital for Cancer Individualized Medicine:CLHURC検査)を目的とするクリニカルシーケンスを実施する専門部署としては,国内初となった。次世代シーケンサー(next generation sequencer; NGS)を用いて独自でパネル化したがんドライバー遺伝子変異のうち最大160種類を網羅的に解析している。CLHURC検査では,患者の血液と病理組織検体から核酸を抽出し,NGSで遺伝子解析を行っている。検体は検者血液からの正常DNAと腫瘍細胞を含むホルマリン固定パラフィン包埋切片から腫瘍細胞DNAを対象としているため,検体の取扱いが重要ポイントの一つである。従来,ホルマリン固定検体からの核酸抽出は,ホルマリンの影響によりDNAの断片化が進むため,良質なDNA抽出は困難であるとされてきた。また,遺伝子解析の解釈や,遺伝子情報の取り扱いなど,様々な管理や体制が必要となる。今後,クリニカルシーケンスが導入されていく中で起こり得る課題を見据えながら,現在,運用しているクリニカルシーケンス「CLHURC検査」の取り組みを報告する。
著者
板橋 匠美 深澤 恵治 柿島 博志 丸田 秀夫 横地 常広
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.325-331, 2017-07-25 (Released:2017-07-29)
参考文献数
5

臨床検査技術の進歩はめざましいものがある。特にIT技術の進歩により現在でも数多くの新しい臨床検査項目の拡大がなされている。さらに,医師や看護師等の病棟スタッフは安心安全を求める現在の医療体制から多忙な状況であり,日々進化する臨床検査に対応できず,臨床検査領域については臨床検査の専門家に任せたいとする要望が多い現状がある。この状況を背景に厚生労働省では平成19年から,各医療機関の実情に応じた適切な役割分担を推進するよう周知すると共に,日本の実情に即した医療スタッフの協働・連携の在り方等をとりまとめた平成22年4月30日付けの厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を提言した。これを受けて日本臨床衛生検査技師会(以下日臨技)では,病院の臨床検査室で検体を待ち,結果だけを返すという受動的臨床検査技師から,患者の居る場所に出向き,患者に寄り添い医療の一端を担うことのできる能動的な臨床検査技師への新生を目指し,現在まで様々な取り組みを行ってきた。本稿ではこれまでの日臨技としての取り組みを紹介するとともに,臨床検査技師の方向性について論じてみたい。
著者
滝澤 旭 佐々木 文雄 大沢 伸孝 奥田 舜治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.204-209, 2018-03-25 (Released:2018-03-27)
参考文献数
18

我々は簡易紫外線ランプ(ブラックライト)を用いた方法で12種類の尿中蛍光物質を検出,確認した。今回,ろ紙を使った蛍光スポットテスト及び薄層クロマトグラフィー(TLC)分離により,さらに12種類の蛍光物質を検出,確認した。今回使用したブラックライトの主励起波長は350 nm,370 nmであるが,300 nm以下の紫外線も放出しており,300 nm以下に励起波長を持つ蛍光物質の検出が可能であった。ろ紙を使った蛍光スポットテスト及びTLC分離により,アミノ酸(トリプトファン,ヒスチジン),フラビン化合物(FMN, FAD),芳香族アミノ酸代謝物(ゲンチジン酸,トリプタミン,セロトニン,5-ヒドロキシインドール酢酸,スカトール,インドール),ヘモグロビン代謝物(コプロポルフィリン,ウロビリン)など12種類の蛍光物質を尿中に検出,確認した。
著者
河口 勝憲 市原 清志
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.143-154, 2015-03-25 (Released:2015-05-10)
参考文献数
17

臨床検査データは臨床の現場で病気の診断,治療経過のモニター,予後判定に利用される。しかし,病気以前に患者の身体的特性や採血条件で測定値が変化したり,測定技術上の問題で測定値が動いた可能性を常に念頭に置く必要がある。測定値が変化する原因を分類すると,病態変動,生理的変動,測定技術変動に分けて考えることができる。生理的変動は,さらに個人の年齢,性,環境,生活習慣,遺伝的因子などに左右される個体間変動と,同じ個体内でも検体採取前の体位や活動度,採血時間などで変化する個体内変動に分けてとらえることができる。本稿では個体間変動として年齢,性差,過食・肥満,喫煙習慣,飲酒習慣を,個体内変動として体位,運動の影響,日内リズム,喫煙の短期的影響,飲酒の短期的影響について変動機序とその影響を受けやすい検査項目を系統的に整理して記載する。検査データを正しく判定するには,これらさまざまな生理的変動を熟知しておくことが重要である。
著者
古川 聡子 河口 勝憲 岡崎 希美恵 森永 睦子 大久保 学 辻岡 貴之 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.44-51, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
1

マイクロピペットは検体の分注・希釈,凍結乾燥タイプのキャリブレーターやコントロールの溶解・調整を行う際に使用されている。マイクロピペットは操作が簡単で,素早く指定量を採取できるが,分注精度を保つには基本的な操作方法に準じて使用する必要がある。今回,マイクロピペットの操作方法が分注精度に及ぼす影響の検証および各施設における操作方法の現状把握のためのアンケート調査を行った。マイクロピペット容量規格の選択については,採取する液量がマイクロピペットの全容量に近いマイクロピペットを選択した方が,正確性・再現性ともに良好であった。また,プレウェッティングを行うことで,分注精度が高まることが確認された。分注方法による正確性についてはフォワードピペッティングの方が良好であり,理論値に対してフォワードピペッティングは低め,リバースピペッティングは高めの傾向であった。また,再現性については水ではフォワードピペッティング,血清ではリバースピペッティングの方が良好な結果となった。したがって,基本的にはフォワードピペッティングとし,粘性のある試料で精密度を保ちたい場合はリバースピペッティングとするのが望ましいと考えられる。試料の温度が室温よりも極端に低い場合,分注精度に影響が出ることも確認された。アンケート調査では各施設で操作方法に違いがあることが明らかとなり,今後,各施設における基本的操作方法の順守が望まれる。
著者
河月 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.11-21, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
34
被引用文献数
1

神経心理学的検査とは,高次脳機能を評価するための検査であり認知症診療においては必須の検査である。認知症に伴う症状としては,中核症状と行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia; BPSD)があり,これらの症状を定量化する目的で神経心理学的検査が用いられる。神経心理学的検査は,スクリーニングとしての検査,認知症の進行度合いや治療効果の評価としての検査,鑑別診断の補助としての検査に分類することができるが,なかでもスクリーニングとしての検査は臨床検査技師が参画できる領域であると考える。代表的な検査としては改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa’s Dementia Scale-Revised; HDS-R)やMini-Mental State Examination(MMSE)が広く一般に使用されているが,マンパワーをかけずに行える方法としてタッチパネル式コンピュータを用いた簡易スクリーニング法(物忘れ相談プログラム)も推奨される。認知症の症状は様々であり,一つの神経心理学的検査で全ての症状を評価できないため評価目的により使い分ける必要がある。但し,我が国のみならず世界中で多数開発されているため,その選択は検査の信頼性や妥当性,対象疾患やその重症度等を考慮し,しっかりとエビデンスを調べたうえで導入することが望ましい。また,検査の総点数だけで評価するのではなく,どこを間違えたかを確認することで,障害されている機能をある程度推測することができるため,多面的に評価する必要ある。神経心理学的検査は医師または医師の指示により他の従事者が実施できる検査であるが,検査を熟知した者が行うことが望ましいため,認定認知症領域検査技師の認定資格を取得した技師が積極的に行っていくことを期待する。
著者
河月 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.84-89, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
25

嗅覚障害は直接的には生死に関係が少ないことや,外傷性などでない場合は症状の発現や進行が一般的に緩徐であり自覚されにくいことが原因で放置される傾向にある。嗅覚機能は,食品の腐敗への気づきや調理に関与し,ガス漏れや煙など身の危険を察知するためにも重要である。特定の認知症では嗅覚関連領域に病理学的変化が生じるため嗅覚機能の低下をきたすと考えられている。特にアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症でその報告は多く,病期の初期に障害されることがわかっている。認知機能の低下も異常な食行動を招く要因であり,認知症患者における嗅覚機能の低下を早期に発見し,アプローチすることはその後の生活の質を維持するために極めて重要である。しかし,加齢に伴っても嗅覚機能が低下することが知られており,その鑑別を正確に行うことは,現行の嗅覚検査法では困難である。一般的には,認知症の嗅覚障害のほうが重度であると報告されているが,今後,認知症の嗅覚機能の低下をより早期に発見できる検査法や,認知症患者の嗅覚障害への治療法あるいは予防法の開発が期待される。
著者
阿部 瑛紀子 奥田 和之 笠井 香里 小川 将史 東 良子 香田 祐樹 角坂 芳彦 蔦 幸治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.726-730, 2017-11-25 (Released:2017-11-30)
参考文献数
13

症例は53歳の男性。入院3日前より微熱,右側胸部痛があり近医を受診し様子を見ていた。入院当日の朝より四肢の冷感と関節痛の症状が現れ,近医を再度受診したが,全身チアノーゼと橈骨動脈触知微弱でショック状態と判断され,当院に救急搬送となった。入院時所見は全身チアノーゼが顕著,胸部CTで肺炎像があり尿中肺炎球菌抗原が陽性であった。肺炎球菌性肺炎とそれに合併する急性感染性電撃性紫斑病と診断され治療が開始された。早期の診断と適切な治療により,敗血症,播種性血管内凝固症候群からは救命し得た。しかし,紫斑は徐々に悪化傾向を辿り,四肢末端優位に水疱形成,表皮剥離,乾性壊死へと進行し,数回にわたって壊死組織のデブリードマンが施行されたが,進行する壊死を阻止することができず,最終的に左上肢以外の三肢の切断となった。肺炎球菌性肺炎に合併する電撃性紫斑病は主に脾摘などの免疫障害をもつ患者で多く,その死亡率も高い。今回健常人に発症し,また救命し得た稀な症例を経験した。脾摘などの免疫不全がない場合でも肺炎球菌による重症感染症を発症する可能性があることを念頭におき,臨床側との密接なやりとりが必要であると考えさせられた症例であった。
著者
高橋 篤史 木村 泉美 樋口 貴洋 伊藤 克彦 向山 弘昭 譚 策 笹川 裕
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.737-742, 2015-11-25 (Released:2016-01-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

イムノクロマトグラフィ法に白黒写真の銀増幅技術を応用した高感度インフルエンザ自動判定キット富士フイルム(株)「富士ドライケムIMMUNO AGカートリッジFlu AB」と他2社のインフルエンザ迅速診断キットについて比較検討を行った。対象患者131名から得られた鼻腔拭い検体を用いて,RT-PCRを基準とした各キットの陽性一致率/陰性一致率/全体一致率を算出した。インフルエンザA型に対して本キットで100% / 96.0% / 97.7%,対照キット①で83.9% / 98.7% / 92.4%,対照キット②で75.0% / 100% / 89.3%であった。またインフルエンザB型に対しては本キットで86.7% / 98.3% / 96.9%,対照キット①で73.3% / 98.3% / 95.4%,対照キット②で60.0% / 99.1% / 94.7%であった。本キットは対照キット①,②に比べA型,B型に対する陽性一致率,全体一致率が共に高かった。RT-PCR陽性,問診票で38℃以上の発熱があった症例にて発症時間と各キットの陽性率を比較した。発症から24時間以内の症例で,本キットは対照キット①,②よりも陽性率が高かった。本キットは高感度であるためウイルス量が少ない検体でも陽性判定できる可能性が高く,早期診断に有用であると考えられる。
著者
吉田 晃浩 関谷 正徳 内藤 通孝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.305-310, 2014-05-25 (Released:2014-07-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen,CEA)は各種悪性腫瘍の診断および治療後の経過観察において重要な指標であり,臨床において測定される最も一般的且つ,汎用されている腫瘍マーカーである.今回我々は,乳癌の術後経過観察で腫瘍の再発が認められないにも関わらず,血清CEA値が夏季において一過性に5~10 ng/ml以上の高値を示した症例を経験し,その原因について検討を行った.その結果,血清CEA値と週間平均気温,ALT,赤血球数,ヘマトクリット値との間に有意な負相関が認められた.また,週間平均気温が25℃を超えて急激に変化した場合においても,同様に血清CEA値が増加傾向を示すことが明らかとなった.以上より,血清CEA値が夏季,一過性に高値を示した原因として,気温上昇に伴う週間平均気温の上昇が,肝臓等の臓器機能に影響するとともに,CEAの産生・分泌,およびその後の代謝に影響を及ぼした可能性が示唆された.
著者
西野 真佐美 中森 正博 今村 栄次 小川 加菜美 黒瀬 雅子 平田 明子 三森 康世 若林 伸一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.424-429, 2019-07-25 (Released:2019-07-27)
参考文献数
12

時計描画テスト(Clock Drawing Test; CDT)は,検査に対する抵抗が少ないため認知症スクリーニングとして頻用されている。今回,CDTのスコアリングを行いその有用性を検討した。2016年10月~2017年4月に当院外来にてCDT,ミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination; MMSE)ともに実施した,連続156名で検討した。スコアリングはFreedman法(15点満点)を用い2名で判定した。年齢78.2 ± 8.7歳,女性87名,診断はアルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease; AD)54名,レビー小体型認知症(dementia with Lewy body; DLB)6名,血管性認知症12名,混合型認知症15名,その他の認知症16名,軽度認知障害16名,認知機能正常者37名であった。CDT総得点とMMSEは有意な相関がみられた(r = 0.58, p < 0.001)。ROC解析では,CDT総得点に関して認知症とのカットオフ値11/10(感度50.5%,特異度96.2%,AUC 0.78,p < 0.001)であった。CDT下位項目で検討すると,ADでは針の記入で,DLBでは数字の記入で失点する傾向がみられた。CDTのスコアリングはMMSEを併用して行うことで感度を上げることができ,MMSEと有意な相関がみられ評価の妥当性が示された。また,疾患によって失点パターンに差異がみられることから診断の一助になりうる可能性が示唆された。
著者
高村 好実
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.22-38, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
8

画像検査はその機器が高額であることや専門の撮像技術が必要なこと,さらに放射性同位元素を用いることなど,一般的な検査として施行するには多くの条件が必要であり,認知症の診断や治療を行う全ての施設において実施できるものではない。しかし,近年の撮像技術の進歩により脳の器質的変化は高い精度と分解能で画像化でき,脳の萎縮の程度については数ミリ単位での描出が可能となり,その有用性は従来にも増して高まっている。また,脳の機能撮像においても早期アルツハイマー型認知症診断支援システム(Voxel-based Specific Regional analysis system for Altheimer’s Desease; VSRAD)やメタヨードベンジルグアニジン(3(meta)-iodobenzylguanidine; MIBG)心筋シンチグラフィーは精度が高くなり,最近では認知症の原因とされているアミロイドやタウを測定し,認知症症状が出現する前の異常蛋白を捉えることも行われている。今後画像検査は早期発見から診断,治療からフォローにおいて増々その有用性が高まることが期待されている。この章では,認知症における各種画像検査について簡単な解説を加えるとともに,各認知症における各画像診断についての説明をする。
著者
八木 朝子
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-11, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
18

睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは,脳波,顎筋電図,眼球運動,気流,呼吸運動,動脈血酸素飽和度,心電図,前脛骨筋筋電図などを終夜にわたり同時に記録する。睡眠と覚醒の区別,睡眠の質と量を評価し,睡眠を妨げる睡眠時無呼吸,周期性四肢運動障害,ナルコレプシー,てんかん発作やレム睡眠行動障害などの同定と重症度評価が可能な検査である。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の有用性を活かすためには,映像や音声を同時に記録し,専任の臨床検査技師によるモニタリング(監視)下で行うことが求められる。しかしながら装置や設備コストや人件費がかかり,また技師の教育や技能の習得に時間がかかることもあり,実施できる施設は限られている。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の判定結果は,各種睡眠障害の診断に直接的に寄与するため,これらを担う臨床検査技師の職務は重責である。適正かつ安全に実施し,正確に判定する能力が求められる。本稿では,睡眠ポリグラフ検査(PSG)の標準的な測定および判定について,そして我が国における普及状況について述べる。
著者
大星 航 天川 雅夫 加藤 亮二
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.673-679, 2014-11-25 (Released:2015-01-10)
参考文献数
18

一般的に,体の調子を整えることができると称する食品を機能性食品と呼んでいる.最近では,予防医学的な観点から免疫賦活作用を示す機能性食品が利用され,中でも,βグルカン及び乳酸菌は腸管関連リンパ組織gut-associated lymphoid tissue(GALT)に存在するリンパ球を活性化するなど種々の免疫賦活作用を示すことから,この分野に広く利用されるようになった.しかしながら,βグルカン及び乳酸菌の単独での利用と比較して両者の混合物による免疫賦活作用の効果等について明らかにした報告がないことから,その有用性について検討した.方法はβグルカン及び乳酸菌それぞれ単独と,両者の混合物をマウスに経口投与し,抗原免疫時のアジュバント効果を複数の免疫部位について検討した.その結果,腹腔への抗原投与にβグルカン及び乳酸菌の混合物の経口投与を併用すると,それぞれ単独での利用と比べて有意に抗体価が上昇し,さらに,早期の抗体産生を促した.また,in vitroでのマクロファージの貪食能効果を検討したところ,βグルカン及び乳酸菌の混合物はマクロファージの貪食能を有意に増強させた.以上の結果から,βグルカン及び乳酸菌の混合物は,それぞれ単独での利用と比較して両者による協同的作用によって腸管免疫系を強く活性化することが示唆され,また抗体産生時のアジュバント物質として利用可能と考えられた.
著者
山田 幸司 塩谷 里実 古井 清 舟橋 こずえ 北川 訓子 山口 悦子 河合 浩樹
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.428-434, 2017-07-25 (Released:2017-07-29)
参考文献数
2

へき地医療拠点病院の当院は医師,看護師不足に加え,高齢かつ認知症を患う介護度の高い患者が多い。これはまさしく日本医療が抱える最大の問題に直面しているともいえよう。限られた資源,財源の中でセクショナリズムの壁を取り払い,チームとして医師,看護師を支援し患者に最善の医療が提供できる環境を構築するために「検査科看護部ワーキング」を立ち上げ,病棟検査技師として新たな診療支援(業務拡大)に取り組んだ。
著者
古川 聡子 河口 勝憲 岡崎 希美恵 辻岡 貴之 通山 薫 佐々木 環
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.563-568, 2018-07-25 (Released:2018-07-28)
参考文献数
6

2008年にクレアチニン(Cre)から算出した推算glomerular filtration rate: GFR(eGFRcre)が,2012年にはシスタチンC‍(Cys)から算出した推算GFR(eGFRcys)が公表され,推算GFRは臨床現場で簡便な腎機能の指標として活用されている。しかし,しばしばeGFRcreとeGFRcysが乖離する症例に遭遇する。そこで,今回eGFRcreとeGFRcysはどの程度一致するのか,また乖離症例にはどのような特徴があるのかを検証した。全症例(n = 226)での相関関係は回帰式y = 0.92x + 2.44,相関係数r = 0.868と良好な結果であったが,CKD重症度分類のGFR区分におけるeGFRcreとeGFRcysの一致率は55.8%と約半数であった。不一致例はeGFRcreと比較し,eGFRcysの区分が軽い症例と重い症例が同等に存在し,どちらか一方への偏りは認めなかった。さらにGFR区分が2段階以上異なる症例は8症例で全体の3.5%であった。eGFRcys/eGFRcre比の比較では,その比が最も1.00に近かった60歳代を基準とすると,若年では高く,高齢では低くなる傾向を認めた。また,eGFRcys/eGFRcre比は体表面積が大きいほど,血清アルブミンが高値なほど高くなる傾向を示し,高度蛋白尿では低値となった。腎機能評価においては,各推算式の特徴や乖離要因を把握した上で使用することが重要である。
著者
鳥居 洋祐 大西 崇文 長友 忠相 佐藤 元 中村 純子 鳥居 良貴 森井 英一 廣田 誠一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.221-227, 2018-03-25 (Released:2018-03-27)
参考文献数
8

グロコット染色は一般に,銀液の温度や反応時間の設定が難しく,施行者間での染色性に差が生じやすい。特にメセナミン銀液を用いる従来法ではその傾向が強いことから,銀液の反応時間の許容範囲が大幅に広く,また塩化金液による菌体の染色性を調節することができるクロム酸アンモニア銀法を用いることで施行者間での相違が少なくなることが期待される。しかし,これまでには温熱下での銀液反応時間の設定や,真菌ごとの至適条件の検討は十分には行われていない。今回我々は,従来法とクロム酸アンモニア銀法における各種真菌での溶融器と温浴槽を用いた銀液の反応時間および塩化金液の反応時間を比較検討した。検討した真菌はアスペルギルス,クリプトコッカス,ニューモシスチス・イロベチーの3種類で,いずれの真菌でも溶融器を用いた場合に,良好な染色性を示す銀液の反応時間の幅が最も広いことが確認された。また,いずれの真菌においても塩化金液の反応時間を変えることで菌体の色の濃さが調節でき,いずれも1~5分で十分な染色が行えることが明らかになった。溶融器を用いたクロム酸アンモニア銀法によるグロコット染色は,塩化金液での染色時間を真菌ごとに調節することで,施行者間の差の少ない安定した結果が得られるものと考えられる。
著者
西原 佑昇
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-167, 2017-03-25 (Released:2017-03-29)
参考文献数
7

患者は80歳代女性。他院にて白血球高値を指摘され精査目的で当院受診した。当院検査所見:WBC 11,100/μL(LY 71.5%),Hb 12.6 g/dL,PLT 29.1万/μL。表面マーカー解析:CD2+, 3+, 4+, 5+, 7+, 8+。以上よりT-PLLと診断された。診断当初は経過観察となったが,途中病状の増悪を認め治療開始となった。しかしフルダラビン療法およびTHP-COP療法ともに効果なく,難治性CLLに対する分子標的薬Alemtuzumab(ALZ)の適応となった。ALZ投与後Day 3でWBCは正常域に達し,病状は劇的に改善した。ALZ投与ガイドラインに沿って最大12週間投与され,終了2ヶ月目の現在,状態は安定し継続加療中である。今回,新薬の奏効により予後不良のT-PLLの治療に大きな期待を抱く結果を得た。一方で我々検査技師としては,治療による大幅な検査値の変動に対し,その要因を把握することは精度保証の観点から非常に重要である。医学の進歩が著しい現代において,新薬や治療についても情報収集をすることは,我々の新たな責務といえる。