著者
間瀬 浩安 田中 彩乃 篠生 孝幸 野崎 司 浅井 さとみ 宮地 勇人
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.413-420, 2015-07-25 (Released:2015-09-10)
参考文献数
6

カフェインはコーヒーや紅茶などに含まれる一般的な物質である。また感冒薬や鎮痛薬など市販薬などにも含まれる物質である。今回,我々は血中カフェイン濃度についてLC-MS/MSを用いイブプロフェン,エテンザミドおよびロキソプロフェンとの同時分析を可能にした。カフェインのPrecursor ionは195.1 m/z,Product ionは138.1 m/zであった。固相カートリッジ抽出の回収率は90%以上であった。HLBを使用した検出限界は0.01 μg/mLであった。イブプロフェン測定法では1.1分に検出され,テオフィリンを測定した場合にもカフェインへの干渉はなかった。缶コーヒー飲用時の血中カフェインピーク濃度は5.65 μg/mL,ピーク時間は60分,半減時間は360分であった。カフェインがイブプロフェン等と同時に測定できることは,感冒薬や鎮痛薬の過量服用の場合の迅速測定に有用である。
著者
Japanese Association of Medical Technologists Editorial Committee of the Special Issue: Urinary Sediment
出版者
Japanese Association of Medical Technologists
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-1, pp.51-85, 2017-03-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

A urinary sediment examination is an important type of non-invasive, repeatable morphological examination. It is necessary to accurately classify and measure urine components, such as epithelial cells, non-epithelial cells (blood cells), casts, salts/crystals, and microorganisms. The clinical significance of a urinary sediment examination is twofold. First, this examination is used to screen for the presence of a lesion in the kidney or urinary tract; second, it is used as a means to collect information on therapeutic and adverse effects of drugs administered to treat a confirmed lesion in the kidney or urinary tract. Pathological conditions are deduced not only from the results of a urinary sediment examination but also from a comprehensive evaluation of the results from various qualitative urinary examinations, such as urinary protein and occult blood tests, as well as biochemical (blood chemical) examinations. However, advances in diagnostic imaging and immunological examinations have allowed the current use of these methods for evaluating lesions in the kidney and urinary tract, and in consequence, the value of a urinary examination used as a screening test has increased further. Given these circumstances, we wished to conduct examinations with a clear understanding of their purpose; in other words, we hope to effectively conduct urine screening examinations, consider pathological conditions based on urinary findings, and observe and provide information useful to patients and for screening participants. In this part, we will explain the role of a urinary sediment examination and also the related technical methodology.
著者
板橋 匠美 深澤 恵治 柿島 博志 丸田 秀夫 横地 常広
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.325-331, 2017-07-25 (Released:2017-07-29)
参考文献数
5

臨床検査技術の進歩はめざましいものがある。特にIT技術の進歩により現在でも数多くの新しい臨床検査項目の拡大がなされている。さらに,医師や看護師等の病棟スタッフは安心安全を求める現在の医療体制から多忙な状況であり,日々進化する臨床検査に対応できず,臨床検査領域については臨床検査の専門家に任せたいとする要望が多い現状がある。この状況を背景に厚生労働省では平成19年から,各医療機関の実情に応じた適切な役割分担を推進するよう周知すると共に,日本の実情に即した医療スタッフの協働・連携の在り方等をとりまとめた平成22年4月30日付けの厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を提言した。これを受けて日本臨床衛生検査技師会(以下日臨技)では,病院の臨床検査室で検体を待ち,結果だけを返すという受動的臨床検査技師から,患者の居る場所に出向き,患者に寄り添い医療の一端を担うことのできる能動的な臨床検査技師への新生を目指し,現在まで様々な取り組みを行ってきた。本稿ではこれまでの日臨技としての取り組みを紹介するとともに,臨床検査技師の方向性について論じてみたい。
著者
河月 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.84-89, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
25

嗅覚障害は直接的には生死に関係が少ないことや,外傷性などでない場合は症状の発現や進行が一般的に緩徐であり自覚されにくいことが原因で放置される傾向にある。嗅覚機能は,食品の腐敗への気づきや調理に関与し,ガス漏れや煙など身の危険を察知するためにも重要である。特定の認知症では嗅覚関連領域に病理学的変化が生じるため嗅覚機能の低下をきたすと考えられている。特にアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症でその報告は多く,病期の初期に障害されることがわかっている。認知機能の低下も異常な食行動を招く要因であり,認知症患者における嗅覚機能の低下を早期に発見し,アプローチすることはその後の生活の質を維持するために極めて重要である。しかし,加齢に伴っても嗅覚機能が低下することが知られており,その鑑別を正確に行うことは,現行の嗅覚検査法では困難である。一般的には,認知症の嗅覚障害のほうが重度であると報告されているが,今後,認知症の嗅覚機能の低下をより早期に発見できる検査法や,認知症患者の嗅覚障害への治療法あるいは予防法の開発が期待される。
著者
河月 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.11-21, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
34

神経心理学的検査とは,高次脳機能を評価するための検査であり認知症診療においては必須の検査である。認知症に伴う症状としては,中核症状と行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia; BPSD)があり,これらの症状を定量化する目的で神経心理学的検査が用いられる。神経心理学的検査は,スクリーニングとしての検査,認知症の進行度合いや治療効果の評価としての検査,鑑別診断の補助としての検査に分類することができるが,なかでもスクリーニングとしての検査は臨床検査技師が参画できる領域であると考える。代表的な検査としては改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa’s Dementia Scale-Revised; HDS-R)やMini-Mental State Examination(MMSE)が広く一般に使用されているが,マンパワーをかけずに行える方法としてタッチパネル式コンピュータを用いた簡易スクリーニング法(物忘れ相談プログラム)も推奨される。認知症の症状は様々であり,一つの神経心理学的検査で全ての症状を評価できないため評価目的により使い分ける必要がある。但し,我が国のみならず世界中で多数開発されているため,その選択は検査の信頼性や妥当性,対象疾患やその重症度等を考慮し,しっかりとエビデンスを調べたうえで導入することが望ましい。また,検査の総点数だけで評価するのではなく,どこを間違えたかを確認することで,障害されている機能をある程度推測することができるため,多面的に評価する必要ある。神経心理学的検査は医師または医師の指示により他の従事者が実施できる検査であるが,検査を熟知した者が行うことが望ましいため,認定認知症領域検査技師の認定資格を取得した技師が積極的に行っていくことを期待する。
著者
高村 好実
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.22-38, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
8

画像検査はその機器が高額であることや専門の撮像技術が必要なこと,さらに放射性同位元素を用いることなど,一般的な検査として施行するには多くの条件が必要であり,認知症の診断や治療を行う全ての施設において実施できるものではない。しかし,近年の撮像技術の進歩により脳の器質的変化は高い精度と分解能で画像化でき,脳の萎縮の程度については数ミリ単位での描出が可能となり,その有用性は従来にも増して高まっている。また,脳の機能撮像においても早期アルツハイマー型認知症診断支援システム(Voxel-based Specific Regional analysis system for Altheimer’s Desease; VSRAD)やメタヨードベンジルグアニジン(3(meta)-iodobenzylguanidine; MIBG)心筋シンチグラフィーは精度が高くなり,最近では認知症の原因とされているアミロイドやタウを測定し,認知症症状が出現する前の異常蛋白を捉えることも行われている。今後画像検査は早期発見から診断,治療からフォローにおいて増々その有用性が高まることが期待されている。この章では,認知症における各種画像検査について簡単な解説を加えるとともに,各認知症における各画像診断についての説明をする。
著者
八木 朝子
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-11, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
18

睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは,脳波,顎筋電図,眼球運動,気流,呼吸運動,動脈血酸素飽和度,心電図,前脛骨筋筋電図などを終夜にわたり同時に記録する。睡眠と覚醒の区別,睡眠の質と量を評価し,睡眠を妨げる睡眠時無呼吸,周期性四肢運動障害,ナルコレプシー,てんかん発作やレム睡眠行動障害などの同定と重症度評価が可能な検査である。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の有用性を活かすためには,映像や音声を同時に記録し,専任の臨床検査技師によるモニタリング(監視)下で行うことが求められる。しかしながら装置や設備コストや人件費がかかり,また技師の教育や技能の習得に時間がかかることもあり,実施できる施設は限られている。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の判定結果は,各種睡眠障害の診断に直接的に寄与するため,これらを担う臨床検査技師の職務は重責である。適正かつ安全に実施し,正確に判定する能力が求められる。本稿では,睡眠ポリグラフ検査(PSG)の標準的な測定および判定について,そして我が国における普及状況について述べる。
著者
柳田 絵美衣 松岡 亮介 林 秀幸 西原 広史
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.131-141, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
15

北海道大学病院では2016年4月に「がん遺伝子診断部」を設置し,業務を開始した。がん遺伝子外来,診療,患者採血,核酸抽出,ライブラリー構築,シークエンス,遺伝子解析,チームカンファレンス(cancer board),遺伝カウンセリング,結果報告をすべてインハウスで行っている,院内完結型網羅的がん遺伝子解析(Clinical Sequence System in Hokkaido University Hospital for Cancer Individualized Medicine:CLHURC検査)を目的とするクリニカルシーケンスを実施する専門部署としては,国内初となった。次世代シーケンサー(next generation sequencer; NGS)を用いて独自でパネル化したがんドライバー遺伝子変異のうち最大160種類を網羅的に解析している。CLHURC検査では,患者の血液と病理組織検体から核酸を抽出し,NGSで遺伝子解析を行っている。検体は検者血液からの正常DNAと腫瘍細胞を含むホルマリン固定パラフィン包埋切片から腫瘍細胞DNAを対象としているため,検体の取扱いが重要ポイントの一つである。従来,ホルマリン固定検体からの核酸抽出は,ホルマリンの影響によりDNAの断片化が進むため,良質なDNA抽出は困難であるとされてきた。また,遺伝子解析の解釈や,遺伝子情報の取り扱いなど,様々な管理や体制が必要となる。今後,クリニカルシーケンスが導入されていく中で起こり得る課題を見据えながら,現在,運用しているクリニカルシーケンス「CLHURC検査」の取り組みを報告する。
著者
吉田 晃浩 関谷 正徳 内藤 通孝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.305-310, 2014-05-25 (Released:2014-07-10)
参考文献数
13

癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen,CEA)は各種悪性腫瘍の診断および治療後の経過観察において重要な指標であり,臨床において測定される最も一般的且つ,汎用されている腫瘍マーカーである.今回我々は,乳癌の術後経過観察で腫瘍の再発が認められないにも関わらず,血清CEA値が夏季において一過性に5~10 ng/ml以上の高値を示した症例を経験し,その原因について検討を行った.その結果,血清CEA値と週間平均気温,ALT,赤血球数,ヘマトクリット値との間に有意な負相関が認められた.また,週間平均気温が25℃を超えて急激に変化した場合においても,同様に血清CEA値が増加傾向を示すことが明らかとなった.以上より,血清CEA値が夏季,一過性に高値を示した原因として,気温上昇に伴う週間平均気温の上昇が,肝臓等の臓器機能に影響するとともに,CEAの産生・分泌,およびその後の代謝に影響を及ぼした可能性が示唆された.
著者
阿部 瑛紀子 奥田 和之 笠井 香里 小川 将史 東 良子 香田 祐樹 角坂 芳彦 蔦 幸治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.726-730, 2017-11-25 (Released:2017-11-30)
参考文献数
13

症例は53歳の男性。入院3日前より微熱,右側胸部痛があり近医を受診し様子を見ていた。入院当日の朝より四肢の冷感と関節痛の症状が現れ,近医を再度受診したが,全身チアノーゼと橈骨動脈触知微弱でショック状態と判断され,当院に救急搬送となった。入院時所見は全身チアノーゼが顕著,胸部CTで肺炎像があり尿中肺炎球菌抗原が陽性であった。肺炎球菌性肺炎とそれに合併する急性感染性電撃性紫斑病と診断され治療が開始された。早期の診断と適切な治療により,敗血症,播種性血管内凝固症候群からは救命し得た。しかし,紫斑は徐々に悪化傾向を辿り,四肢末端優位に水疱形成,表皮剥離,乾性壊死へと進行し,数回にわたって壊死組織のデブリードマンが施行されたが,進行する壊死を阻止することができず,最終的に左上肢以外の三肢の切断となった。肺炎球菌性肺炎に合併する電撃性紫斑病は主に脾摘などの免疫障害をもつ患者で多く,その死亡率も高い。今回健常人に発症し,また救命し得た稀な症例を経験した。脾摘などの免疫不全がない場合でも肺炎球菌による重症感染症を発症する可能性があることを念頭におき,臨床側との密接なやりとりが必要であると考えさせられた症例であった。
著者
石田 奈美 佐藤 伊都子 林 伸英 三枝 淳 河野 誠司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.236-241, 2015-03-25 (Released:2015-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

高速凝固採血管は管口内部壁にトロンビンが塗布されているため,迅速な検査結果報告に適した採血管である。しかし,トロンビン添加が検査値に与える影響について一部の項目しか検討されていないことから,健常者を対象にして,ガラス製採血管,従来凝固促進採血管,高速凝固採血管の3種類の採血管を用いて検査値の比較検討を行った。検査項目は生化学関連検査59項目,腫瘍マーカー・ホルモン関連検査38項目,感染症関連検査24項目,自己免疫関連検査25項目の合計146項目である。それぞれの項目について3種類の採血管の測定値の平均とSDを求め,ガラス管を対照に高速凝固採血管および従来凝固促進採血管の測定値について関連のある2群間の差の検定を行った。その結果,一部の項目で有意差(p < 0.05)を認めたが,対象が健常人のため測定値が近似しており小さな差で統計学的有意となった可能性があった。いずれも臨床的に問題のない範囲であった。健常人において高速凝固採血管を用いた検査値は,ガラス製採血管と比較して臨床的に問題となるような検査値への影響は認められなかった。
著者
河野 浩善 三好 夏季 竹野 由美子 山本 真代 沖川 佳子 野田 昌昭 兼丸 恵子 飯伏 義弘
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.612-619, 2016-05-25 (Released:2017-01-10)
参考文献数
23

近年,真性赤血球増加症(PV)の約98%でJAK2-V617FまたはJAK2 exon 12変異を認め,本態性血小板血症(ET)の約80%でJAK2-V617F,MPL,CALR変異のいずれかを認めることが報告されている。今や骨髄増殖性腫瘍において遺伝子変異の解析は診断上必須であるにもかかわらず,限られた施設でしか検査できないのが現状である。我々は,PV,ETおよび各反応性血球増加症における末梢血液検査データについて後方視的解析を行い,スクリーニングへの応用やJAK2-V617F変異の予測について検討した。その結果,IPF countはPVおよびET症例群で有意に高値を示し,NAP scoreはPVおよびETの中でもJAK2陽性症例群において有意に高値を示すことが分かった。さらに,JAK2-V617F変異予測におけるROC解析の結果,IPF countおよびNAP scoreはAUCが0.9以上と予測能が高かった。我々はIPF countのカットオフ値を10,000/μL(真陽性率100%,偽陽性率16.7%),NAP scoreを250(真陽性率85.7%,偽陽性率25.0%)に設定し,症例をIPF count 10,000/μL未満&NAP score 250未満のA群,IPF count 10,000/μL未満&NAP score 250以上のB群,IPF count 10,000/μL以上&NAP score 250未満のC群,IPF count 10,000/μL以上&NAP score 250以上のD群に分類した。A,B群には各反応性血球増加症が91.7%と高率に含まれ,D群はJAK2変異陽性率が94.7%と高かった。このように,PV,ETにおいてIPF countおよびNAP scoreは,反応性血球増加症例との鑑別に有用であり,迅速かつ簡便にJAK2-V617F変異を予測できる可能性が示唆された。
著者
丸山 恵理 佐藤 実 小松 博史 澁谷 斉 清水 力
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.55-63, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
19

症例は65歳男性。2011年5月特発性心室細動の診断で植込み型除細動器(ICD)を装着し社会復帰。2012年9月自宅で突然意識消失,10数秒後に意識回復するも,ICD植込み後初の意識消失であったため入院。12誘導ホルター心電図により心室細動とICDの作動が確認された。心室細動のトリガーとなる心室期外収縮は左脚ブロック上方軸であり,このことから起源を右室下壁と推定し,アブレーションを施行した。さらに治療前後に12誘導ホルター心電図で認めた心室期外収縮について連結期と先行RR時間によるプロット解析を試みた。治療前後で回帰直線を比較すると勾配が明らかに異なり,治療効果の判定に有効であることが判明した。また,連結期/先行RR時間比を時間軸に並べることにより次の事が明らかとなった。本症例の心室細動発症前2時間には,さらにその前2時間と,心室細動発症後2時間に比較して,先行RR時間が有意に長く,かつ,連結期/先行RR時間比が有意に小さい心室期外収縮が繰り返されていた。先行RR時間の延長により再分極相に不安定要素が生じ,次の連結期/先行RR時間比が小さいことにより受攻期への刺激が続き,受攻性が高まり,心室細動発症に至ったのではないかという発症機序を推察した。更なる症例の集積と解析が望まれる。
著者
岡山 直子 西岡 光昭 中原 由紀子 宮原 悠太
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.666-674, 2015-11-25 (Released:2016-01-10)
参考文献数
10

遺伝子検査が臨床検査へのサービスとして求められているものは,様々な種類のサンプルによる解析および限られたサンプル量での情報提供を短時間で行うことである。そこでこれまでに我々が行ってきた核酸抽出を中心に遺伝子検査の変遷についてまとめた。末梢血液検体からはフェノ・クロ法,NaI法,抽出装置によるDNA収量の比較を行った。FFPE検体からは脱パラフィン操作の影響,ホルマリン固定時間,パラフィン包埋の影響を検討した。HE染色標本を用いてマイクロダイセクションとレーザーマイクロダイセクションによる目的部位の収量を比較した。さらに今後遺伝子検査の主力になると予想される自動遺伝子解析装置についてまとめた。またこれまでに行われてきた日本臨床検査技師会研修会を振り返り,今後,我々検査技師の力がより発揮できる遺伝子検査に期待したい。
著者
(一社)日本臨床衛生検査技師会 尿沈渣特集号編集部会
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-1, pp.154-164, 2017-03-31 (Released:2017-07-11)

尿沈渣検査は,尿中に出現する成分を尿の遠心操作にて得られた沈殿物を観察する検査である。尿沈渣の標本作成における操作が単純であるにもかかわらず,尿沈渣に出現する成分は多種多様であるため,鑑別が非常に複雑である。その要因としては,尿沈渣に出現する尿中有形成分が,ひとつの成分においても様々な形態で存在することがある。たとえばシュウ酸カルシウム結晶では正八面体型とビスケット型,コマ型などが存在し,尿細管上皮細胞に至っては基本型,特殊型と細胞形態のバリエーションが多岐にわたる。このように尿沈渣検査では成分を正しく鑑別するための知識と技術が必要である。この部では,尿沈渣に出現する基本的な尿中有形成分を鑑別する知識を習得するために,最も基本となる成分の写真について「尿沈渣検査法2010」の尿沈渣アトラスを引用(一部改編)し掲載する。また「*」でマークした写真は,尿沈渣成分の新たな情報として追加したものである.この尿沈渣アトラスを利用し,各成分の特徴を捉えることをしっかりと身につけ,今後遭遇するであろう鑑別困難な成分に対しても対処できるよう,基礎知識を学習することを目的とする。
著者
西原 佑昇
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-167, 2017-03-25 (Released:2017-03-29)
参考文献数
7

患者は80歳代女性。他院にて白血球高値を指摘され精査目的で当院受診した。当院検査所見:WBC 11,100/μL(LY 71.5%),Hb 12.6 g/dL,PLT 29.1万/μL。表面マーカー解析:CD2+, 3+, 4+, 5+, 7+, 8+。以上よりT-PLLと診断された。診断当初は経過観察となったが,途中病状の増悪を認め治療開始となった。しかしフルダラビン療法およびTHP-COP療法ともに効果なく,難治性CLLに対する分子標的薬Alemtuzumab(ALZ)の適応となった。ALZ投与後Day 3でWBCは正常域に達し,病状は劇的に改善した。ALZ投与ガイドラインに沿って最大12週間投与され,終了2ヶ月目の現在,状態は安定し継続加療中である。今回,新薬の奏効により予後不良のT-PLLの治療に大きな期待を抱く結果を得た。一方で我々検査技師としては,治療による大幅な検査値の変動に対し,その要因を把握することは精度保証の観点から非常に重要である。医学の進歩が著しい現代において,新薬や治療についても情報収集をすることは,我々の新たな責務といえる。
著者
杉村 有司 竹内 豊 齊藤 友里香
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.90-94, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
8

光トポグラフィー(near-infrared spectroscopy; NIRS)検査は,近赤外光を用いて脳内のヘモグロビンの濃度変化を測定する検査法である。神経血管カップリング理論および修正Beer-Lambert則により,ヘモグロビン濃度変化を測定することで脳表層部の神経活動を間接的に測定することになる。精神科領域では治療抵抗性うつ病の診断補助検査として光トポグラフィー検査が保険診療として認められている。この保険診療では光トポグラフィー検査で得られた波形パターンから診断補助としての疾患判読を行う。今回,認知症患者(2名)について研究同意を得た上で光トポグラフィー検査を行った。光トポグラフィー検査の結果は,1名の認知症患者はMRI検査では両側海馬の強い委縮を認めていたが,健常者の平均波形に近い波形パターンを示した。もう1名の認知症患者では,診断補助としての光トポグラフィー検査で得られる典型的な波形パターンとは異なっていた。このような波形パターンが認知症に特徴的なものなのか,今後の研究に期待したい。
著者
山元 紀世子 乗安 久晴 櫛山 因 村田 幸栄 渡邉 誠 藤本 孝子 大楠 清文
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.277-283, 2017-05-25 (Released:2017-05-31)
参考文献数
10

Streptococcus infantariusによる感染性心内膜炎(infective endocarditis; IE)が冠動脈閉塞を引き起こした一例を経験した。症例は84歳男性。4年前に大動脈弁置換術の既往があり,胸痛を主訴に救急搬送された。緊急心臓カテーテル検査において冠動脈の左前下行枝から塞栓物が吸引されたが,来院時発熱はなくIEは疑われていなかった。塞栓物は病理組織検査にて微生物感染疑いと診断されたことから,血液培養や経食道心エコー検査などIEの精査が施行された。血液培養は翌日2セットすべてのボトルが陽性となり,また経食道心エコー検査にて大動脈弁に疣腫を認めたことから,IEによる冠動脈塞栓症と診断され,抗菌薬治療が開始された。弁置換術既往などIEのハイリスク患者は,症状や臨床検査値が軽度でもIEを疑い,早期精査施行が望ましい。IEの原因菌は16S rRNA塩基配列の解析によりS. infantariusと決定された。本菌を含むbovis groupの菌種は,IEや髄膜炎,消化管悪性腫瘍など重篤な疾患との関連性が高く,正確な菌種同定が求められる。しかし,Streptococcus属菌種は,生化学的同定法では鑑別困難な場合が多いため,同定困難な場合は専門施設へ解析が依頼できるよう,日頃から体制を整えておく必要がある。
著者
杢保 成一 鈴木 育宏 河原 栄
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.181-187, 2016-03-25 (Released:2016-05-10)
参考文献数
30

ヒト上皮成長因子受容体タイプ2(Human epidermal growth factor receptor Type2; HER2)は乳癌患者の約20–30%で過剰に発現し,HER2過剰発現乳癌は,トラスツズマブ,ラパチニブ,ペルツズマブ,トラスツズマブ エムタンシンなどの抗HER2療法の対象となる。HER2過剰発現の有無は,乳癌の診断・治療において重要であり,病理組織学的にHER2の評価が行われているが,血清HER2濃度の臨床的有用性は明確ではない。我々は組織HER2陰性乳癌患者における血清HER2濃度測定の重要性を検討した。通常診療時に,血清HER2濃度を測定した乳癌患者210名を対象にした。乳癌患者における血清HER2濃度と臨床病期,治療効果の評価を行った。組織HER2陰性乳癌患者における血清HER2濃度と腫瘍径,遠隔転移,CA15-3濃度の評価を行った。血清HER2濃度が低いほど治療効果を認めた。腫瘍径と血清HER2濃度に正の相関性を認めた(r = 0.485, p < 0.001)。遠隔転移症例の血清HER2濃度は非遠隔転移症例の血清HER2濃度よりも高かった(p = 0.007)。血清HER2濃度とCA15-3濃度に正の相関性を認めた(r = 0.933, p < 0.001)。組織HER2陰性乳癌患者においても血清HER2濃度は検出され,診療の補助検査として血清HER2濃度を測定する有用性が示唆された。