- 著者
-
川端 訓代
渡部 真衣
北村 有迅
中野 亮典
冨安 卓滋
- 出版者
- 一般社団法人 日本地質学会
- 雑誌
- 日本地質学会学術大会講演要旨 第128学術大会(2021名古屋オンライン) (ISSN:13483935)
- 巻号頁・発行日
- pp.148, 2021 (Released:2022-05-31)
ラドンは不活性のガスとして存在し水に対する溶解度が高く岩石の間隙流体や地下水に容易に溶け込むことが知られている.そのため,水中ラドンは地下の岩石種のトレーサーや地下水の帯水層の情報を得るために測定されてきた.また,岩石から放出されるラドンは亀裂の増加や,岩石・水比の変化,間隙率変化をもたらす地殻歪変化によって濃度が変化するため,地震などの地殻変動検との関係についても調査されてきた.(例えばUlmov and Mavashav, 1971; Wakita et al., 1980; Igarashi et al., 1995; Kuo et al., 2006; Tsunomori and Tanala, 2014).鹿児島県には活断層や断層が多く存在し,温泉施設も多い.本研究では特に鹿児島市近辺の温泉・地下水中のラドン濃度を測定し,市内に分布する活断層・断層と水中ラドン濃度の関係について考察を行う.鹿児島市内の温泉水は現在の一般的な地温勾配に従って温度が高くなることから,マグマや火成岩の熱的な影響を受けていないことが明らかとなった.また酸素水素同位体分析結果から,断層近傍の温泉でマグマに関係した水の混入が認められた.水中ラドン濃度測定の結果,基盤岩である四万十累層群とその上位に堆積する火砕流堆積物の帯水層から得られる水中ラドン濃度に顕著な差が認められた.これは帯水層が多孔質であるか否かという岩石の性状に起因している可能性が高く,多孔質の火砕流堆積物ではラドン濃度が高くなり,間隙が少ない四万十累層群では低くなるためと考えられる.温泉水中ラドン濃度分布から,活断層や基盤岩中に発達する断層付近においてラドン濃度が高い温泉が認められた.これらの温泉は岩石中の比表面積や間隙が大きい断層を流路としている可能性が考えられる.特に鹿児島市下の基盤岩グラーベン構造を作る断層近傍の温泉は,マグマの影響を受けた水が断層を流路として上昇している可能性が考えられる.また,鹿児島市内には,ヒ素が検出される井戸が確認されている.これらの井戸の深度は不明なことが多く,汚染源が特定されていない.本発表では,上記のラドン濃度と地質の関係から,深度不明井戸の地下水中ラドン濃度を測定し,汚染源深度を推定する試みについても発表を行う.Igarashi et al., Science, 269, 1995 Kuo et al., Ground Water, 44, 2006Tsunomori and Tanaka, Radiat. Meas, 60, 2014 Wakita et al., Science, 207, 1980 Ulmov and Mavashav, Akad. Nauk Uzbek, 1971