著者
中野 康人 阿部 晃士 村瀬 洋一 海野 道郎
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.123-139, 1996-09-20

本稿は、環境問題を社会的ジレンマの視点からとらえ、個人の合理的な行為に焦点を当てることにより、問題解決を目指そうとするものである。ここでは、ごみの排出量を減少させることについて、協力行動をしようと考える行為者と協力行動をしないと考える行為者との違いを探ることにより、協力行動の促進要因や阻害要因を明らかにする。1993年11月に仙台市内の1500世帯を対象に実施した調査データに基づいて、過剰包装拒否、使捨商品不買、資源回収協力、コンポスト容器利用の4つの行動について、その行動を実行する協力意志に影響する要因を分析した。判別分析によると、いずれも行動に対する規範意識がもっとも強く協力意志に影響するという結果が出たが、要因間の構造を見るために、規範意識とコスト感と心配度の3変数をPOSA(Partial Order Scalogram Analysis)に投入した。その結果、行動によって要因間の構造に差が見られた。使捨商品不買とコンポスト容器は、コスト感と心配度が改善されないと、規範意識が高まりにくく(規範後発ルート、資源回収協力は、コスト感が高かったり、心配度が低かったりしても、規範意識は高くなりうる(規範先発ルート)のである。各要因を制御する際には、こうした構造の違いを考慮に入れなければならない。