- 著者
-
中野 美紀
- 出版者
- 独立行政法人産業技術総合研究所
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2002
現在、有機分子を用いたデバイスの開発が盛んに行われており、分子の電気的特性を調べるために、走査プローブ顕微鏡や微細加工電極が用いられてきた。分子素子の実用化のためには、電流の増幅効果やゲート電圧引加による分子独特の効果が期待できる微細加工電極を用いた三端子素子の作製が望まれる。さらに、電極ギャップ間距離が数nm以下と短い場合には、分子で電極のギャップ間を架橋できるが、大きな電界効果を望めないことが報告されている。この問題を克服するために、絶縁性分子・金属イオンからなる自己組織化多層膜を、数十nmにギャップ間距離を広げたナノギャップ電極に挟み込んだ。本研究では100-400nmのシリコン酸化膜を持つn-Si基板上に斜め蒸着で作製した20-30nmギヤップのナノ電極に多層膜を挟み電気特性を調べた。その結果、ソース・ドレイン間のギャップが狭い場合には、クーロン振動が観察され、単一電子トンネルトランジスター(SET)として働いていることを室温で確認した。しかし、ギャップが広い場合には、クーロン振動は観察されなかった。電極のギャップ距離が均一でないことから、界面の一部、微小ギャップが薄い部分が量子ドットとして働いているために、ギャップ間距離が狭い電極の場合にのみ、SETの現象が観察できたと考えられる。さらに、酸化膜厚を薄くすることで、クーロン振動の周期が短くなり、電界に対する電流の応答性が良くなったものと考えられる。