著者
中辻 史好 林 美樹 橋本 雅善 丸山 良夫 馬場谷 勝廣 平尾 佳彦 岡島 英五郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1914-1918, 1985-12-20

膀胱原発のMalignant fibrous histiocytoma(以下MFHと略す)は極めてまれであり,本邦では現在までに1例のみ報告されているにすぎない.本症例は排尿困難を主訴として1982年6月4日当科を受診し,膀胱鏡にて頂部右側に直径約2cmの表面平滑な腫瘍と三角部に小豆大の乳頭状腫瘍を認めた.入院時諸検査に異常を認めなかった.膀胱二重造影,膀胱エコー,膀胱CT及び骨盤動脈造影にて頂部の腫瘍は臨床的深達度T_3a,三角部の腫瘍は臨床的深達度T_1の診断のもとに7月28日TURBtを施行した.病理組織学的に頂部の腫瘍はMFH,三角部の腫瘍はInverted papillomaと診断され,頂部の腫瘍に対しては8月10日膀胱部分切除術を施行した.術後vincristine 1mg,peplomycin 10mg,adriamycin 30mgによる多剤併用化学療法を3コース施行し,liniac 4,200radを照射した.術後28カ月現在,再発転移を認めず,経過観察中である.