著者
丹羽 さがの 酒井 朗 藤江 康彦
出版者
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター
雑誌
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
no.2, pp.39-50, 2004

近年我が国では、子どもたちに「生きる力」をはぐくむ教育が重視されている。この流れのなかで求められているのは、教育の「長期的な視野からの一貫性」(秋田、2002)であり、特に、幼稚園・保育所と小学校の連携は、いわゆる「学級崩壊現象」との関連から語られるなど注目されている。本研究では、幼稚園、保育所、小学校の連携に向けて基本的に必要なものは、立場が違う者同士が理解し合い、協力し合う姿勢であると考え、連携に向けた基礎的資料の収集を目的として、幼稚園、保育所、小学校の教諭、保護者を対象とした、質問紙法による意識調査を行なった。現在の子どもたちの姿については「自主性・積極性」、日常生活、園・学校生活に必要な「基本的態度」のいずれとも、保護者の方が教諭に比べ、全般的に高く評価していた。育てたい子どもの姿については、「自主性・積極性」と「基本的態度」とも、小学校保護者、幼稚園・保育所保護者、小学校教諭、幼稚園教諭・保育所保育士の4調査対象者間で、重視する程度に違いがあった。学校不適応の背景要因の認識では、「家庭にある問題」「子どもの生活の変化」「小学生をめぐる問題」で、4調査対象者間に認識の違いが見られた。幼保小連携は、まだ始まったばかりの新しい取り組みである。本研究からは、これからのよりよい幼保小連携に向けた取り組みにおいて、連携関係者の互いの理解に資するような、基礎的資料が収集できたものと考える。