- 著者
-
藤江 康彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.1, pp.21-31, 2000-03-30 (Released:2013-02-19)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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教室談話には, 課題解決においてフォーマルともインフォーマルともとれる, 「両義的」なタイプの発話をみいだすことができるだろう。本研究は, 一斉授業の話し合い場面において, 子どもの両義的な発話が, 教師にどのように対応され, 授業の展開にどのような意味をもつのかを明らかにした。小学5年の1学級 (24名) で行われた社会科単元「日本の水産業」の発話記録に対し, カテゴリーの数量的分析と発話事例の解釈的分析を行った。カテゴリーの数量的分析では, 教師は子どもの両義的な発話に選択的に対応しており, つぶやきやいいよどみであっても積極的に受容していることが明らかになった。発話事例の解釈的分析では, 次の点が明らかになった。1つには, 課題解決の活動において, 子どもの両義的な発話生成と教師のねらいとの間に論理展開上のズレが生じると, 教師は追究を行い, 教師のねらいに課題解決を方向づけていた。2つには, 教師の授業進行への戸惑いとして子どもの両義的な発話が生成されると, 教師は一度同調し, 話題を先取りすることで授業進行の主導権を維持していた。3つには, 抽象度が高い内容を扱ったため授業進行が停滞すると, 教師は自ら両義的な発話を導入することで, 子どもの両義的な発話を誘発し, 授業進行を活性化させていた。以上より, 子どもの両義的な発話は教師から対応されることで, 課題解決の促進や授業進行の円滑化に貢献することになるといえる。