著者
丹羽 めぐみ 大森 秀之 人見 一彦
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.45-55, 2007-03

当院の性同一性障害専門外来に来院した青年期女性の性同一性障害の2症例について,ロールシャッハ・テストとHTPPの人物画を通して,性同一性を中心にその心理的特性を検討した.結果,2症例の共通点は1.性別の同一化が曖昧なために思春期に身体変化の衝撃を大きく受けており,身体の生々しさを受け入れられない,2.母親が同性のモデルになり難く,身近に性同一性の方向性や目標の手がかりとなる対象を見つけ難い,3.そのような性同一性が不安定な状態で性同一性障害という概念に同一化することで,精神的な安定がもたらされている.一方異なる点は,同性と異性への同一化の程度であった.