著者
丹羽 隆子 山岸 寛 庄司 邦昭 大津 皓平
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年と15年の夏に地中海沿岸諸国の実地踏査に出た結果、新知見を多く得ることができた。古代、優れた海洋民族であったフェニキア人の広域に渉る海上活動が、地中海の精神文化や物質文化の交流、伝播に大きな貢献をなしたであろうこと。カルタゴの港湾都市やギリシアのピレウス港などは古くから高度に整備された港湾施設などを要していたこと。また地中海島嶼、レバノン、ギリシア本土の各地やイタリア各地、スペイン東岸の沿岸地域を踏査し、入り組んだ海岸線や入り江のある地中海の地形と環境が古くから自然の良港として、海上活動の発展を促したことなどを確認した。また、発展した海底考古学が発見した古代地中海の木造船建造法が「ほぞとほぞ穴」を使った"shell-first method"だったことの延長上に、ギリシアでは「ヒュポゾーマタ」という艤装品を重要な必須艤装品としていたことも知り、文献学的にも、造船工学的にも研究を進めることができた。「ヒュポゾーマタ」の装着法などを巡り、イタリアのアマルフィの開催された「中世以降の艤装品と航海機器の発展」と題した国際シンポジュームに招かれて講演し、さらに日本航海学会、日本西洋古典学会でも研究発表した。国際シンポジュームではかなり反響がった。Elsi Sapathari, Sailing through Time : the Ship in Greek Artの翻訳、解説、補注の形でそれらをまとめた。出版刊行の予定である。