著者
久保 成隆 志村 博康
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.96, pp.6-12,a1, 1981

開水路での高度な水利制御にとって, 段波の動態の分析は重要な課題であると考えられる。本研究では, 非粘性水'P水路において, ゲート前方に水位がない状態での4通りのゲート操作によって発生する負段波を, 理論的実験的に分析した。-A. ゲート急速全開放, B. ゲート急速部分開放, C. ゲート緩開放, D. 堰頂でのゲート急速全開放.-その結果, 理論値と実験値はよく符合し, その有効性が実証された。
著者
久保 成隆 大里 耕司
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本科学研究補助金による4ケ年間の研究を通じて、下記の各項について以下の様な成果が得られている。先ず、(1)user friendlyな非定常流シミュレーションモデルに関しては、陰差分法をベースとしたモデルの開発に成功した。そのモデルをベトナム紅河デルタでの排水解析に適用しその有効性を実証した。同時に非定常流モデルを水文解析のタンクモデルとしても使えることを示した。次いで、(2)広域な低平地における排水解析に関しては、タイ国のチャオプラヤデルタの浮稲地域を研究対象として、水収支計算により、デルタの浮稲地帯の持つ遊水能力を検討した。その結果、雨季における洪水問題と乾季における水不足問題を軽減する遊水地と調整池の設置構想を提案して、それによって二つの問題をある程度解決することが可能であることを示した。(3)感潮河川における堰の建設がもたらす異常潮位の解析に関しては、摩擦項の非線形性を考慮した理論解析に成功した。その結果、堰の河口からの位置によって異常潮位の振幅を予測する近似的な理論式を提案することができた。(4)水位観測による用水路の流量推定に関しては、村高用水での現地観測と実験室における模型実験によってその可能性を検討した。その結果、水位観測データによる非定常流解析が、流量を推定する上で非常に有効であることが実証された。しかし、同時に、模型実験においては縮尺比率が大きい場合、摩擦項の取り扱いに関して疑問点が指摘され、それに関しては今後の課題となった。(5)用水路系では水理操作は定常から次の定常を目指して行われるわけであるが、それの遷移過程に関しては、その理論解析に成功した。その結果、水路の長短は支配方程式の無次元化によって分類でき、短い水路での定常への遷移過程は波の往復によって、一方、長い水路で定常への遷移過程は拡散現象によって実現されることが判明した。