著者
川口 輝久 久保 正則 宮内 俊 秋山 仁 小富 正昭
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.628-650, 1994 (Released:2007-03-29)
参考文献数
19
被引用文献数
2

BOF-A2(3-[3-(6-benzoyloxy-3-cyano-2-pyridyloxycarbonyl)benzoyl]-1-ethoxymethyl-5-fluorouracil)をラットに単回および反復経口投与後の主代謝産物である1-ethoxymethyl-5-fluorouracil(EM-FU),3-cyano-2,6-dihydroxy-pyridine(CNDP),5-fluorouracil(5-FU)の吸収,分布,代謝および排泄について検討した. 1.各代謝産物の血漿中濃度推移はSDおよびDonryu系雄性ラットで差は認められなかった. 2.投与量の増加にともなって各代謝産物のCmaxおよびAUCo.72比も増加したが,1000mg/kg投与群ではやや頭打ちになる傾向が認められた. 3.5-FUとCNDPの併用投与あるいはEM-FUとCNDPの併用投与の場合よりも,BOF-A2投与の場合が血漿中5-FU濃度は最も長く持続した. 4.絶食あるいは非絶食下に雄性ラットに単回経口投与後,EM-FUは非絶食下投与の方が,CNDPおよび5-FUは絶食下投与の方が高い血漿中濃度推移を示した. 5.雌雄ラットに単回経口投与後,EM-FUは雌が,5-FUは雄が高い血漿中濃度推移を示した. 6.担癌雄性ラットにおける血中5-FUは,正常ラットよりも低い濃度推移を示した.これらのEM-FU,5-FUの濃度推移の差は,主に,肝ミクロソームにおけるEM-FUから5-FUへの活性化酵素(EM-FU代謝酵素)活性の差により,CNDPの濃度推移の差は吸収の差によると考えられた. 7.雄性ラットに反復経口投与後7日目には,1日目に比べて,EM-FUが高い血漿中濃度推移を示し,5-FUが低い推移を示した. 8.雌雄ラットに単回経口投与後2~8時間に,EM-FU,CNDP,5-FUは消化管,腎臓などで血漿中よりも高い濃度を示したが,24時間までには速やかに減少した.また,雄性ラットでの反復投与において,各代謝産物ともに組織への蓄積性は認められなかった. 9.雄性ラットにシメチジンおよびシスプラチンをBOF-A2と同時投与した場合,BOF-A2単独投与群に比べて,EM-FUの血漿中濃度および尿中排泄率が増加し,5-FUの血漿中濃度および尿中排泄率は減少したことから,シメチジソおよびシスプラチンによるEM-FU代謝酵素活性の抑制が推察された. 10.雄性ラットに単回経口投与後48時間までに,EM-FUが6.8%,5-FUが17.9%,CNDPが58.4%尿中へ排泄された.糞中にはBOF-A2が6.6%検出された。また,胆汁中排泄率は各代謝産物ともにわずかであった. 11.雄性ラットに反復経口投与した場合,尿中へのEM-FUの排泄率は増加し,5-FUの排泄率は若干減少する傾向が認められた. 12.雄性ラットに3,10,30mg/kgの用量で1日1回14日間反復経口投与後,NADPH Cyto-chrome C reductase活性が用量依存的に減少し,また,30mg/kg投与では,DHUDase活性が増加した.
著者
川口 輝久 久保 正則 秋山 仁 小富 正昭
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.661-674, 1994 (Released:2007-03-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

14C-BOF-A2(3-[3-(6-benzoyloxy-3-cyano-2-pyridyloxycarbonyl)benzoyl]-1-ethoxyme-thyl-5-fluorouracil)をラットに単回および反復経口投与後の放射能,主代謝産物である1-ethoxy-methy1-5-fluorouracil(EM-FU),3-cyano-2,6-di-hydroxypyridine(CNDP),5-fluorouracil(5-FU)の吸収,分布,代謝および排泄について検討した. 1.絶食あるいは非絶食下に雄性ラットに単回経口投与後,血液中放射能濃度は絶食下投与の方が高い推移を示した. 2.雌雄ラットに単回経口投与後の血液中放射能濃度推移には顕著な性差は認められなかった. 3.雄性ラットに反復経口投与後7および14日目の血液中放射能のCmaxは,投与初日の各々,1.8,2.2倍に増加し,AUC0-24hrもほぼ同様の割合で増加した. 4.雌雄ラットに単回経口投与後,総放射能濃度のAUC0-24hr に対する5-FUあるいはEM-FUのAUC0-24hrの割合は,5-FU(雄 : 7%,雌 :5 %)で,EM-FU(雄 : 63%,雌 : 78%)であった.5.雌雄ラットに単回経口投与後2~8時間に,胃,小腸以外では,肝臓,腎臓,副腎,骨髄において血漿中よりも高い放射能濃度を示した.投与後12時間以降の放射能の消失は多くの組織において血漿中に比較して緩慢で残留する傾向が認められた. 6.雄性ラットに反復経口投与14日目の投与24時間以降の放射能の消失は多くの組織において緩慢であり,残留傾向が認められた.7。雄性ラットに非絶食下単回投与後7日目までに尿中へ47.1%,糞中へ41.1%,呼気中へ8.6%の放射能が排泄され,死体残存率は1.2%であった.尿,糞および呼気へ排泄された放射能のほとんどが投与後48時間までに排泄された.また,絶食下単回投与後48時間までの放射能の排泄率は,尿64.9%,糞13.1%,呼気11.8%で,非絶食下投与群との間に差が認められた.8.雄性ラットに14日間反復経口投与期間中の毎回投与後24時間ごとの放射能の排泄率は,尿が約40%,糞が約35~55%,呼気が約10%で,反復投与による変化はなかった. 9.絶食あるいは非絶食下に雄性ラットに単回経口投与後24時間までに尿中へ排泄された総放射能に対するEM-FUの割合は,絶食下13%,非絶食下56%で,5-FUの割合は,絶食下24%,非絶食下9%であった. 10.雄性ラットに非絶食下単回投与後48時間までの放射能の胆汁中への排泄率は4.5%で,そのうち約50%がEM-FUであった. 11.in vitroでの血漿蛋白との結合率は,EM-FUは,ラット34~46%,イヌ47~51%,ヒト27~38%,5-FUは,ラット14~21%,イヌ16~17%,ヒト14~17%,CNDPは,ラット53~58%,イヌ63~71%,ヒト67~69%であった.ラットに14C-BOF-A2を単回経口投与後4,24時間における放射能の血漿蛋白との結合率は各々,39,93%であった.
著者
川口 輝久 久保 正則 秋山 仁 小富 正昭
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.651-660, 1994 (Released:2007-03-29)
参考文献数
5
被引用文献数
1

BOF-A2(3-[3-(6-benzoyloxy-3-cyano-2-pyridyloxycarbonyl)benzoyl]-1-ethoxymethyl-5-fluorouracil)をイヌ,サルおよびモルモットに経口投与後の主代謝産物である1-ethoxymethyl-5-fiuorouracil(EM-FU),3-cyano-2,6-dihy-droxypyridine(CNDP),5-fluorouracil(5-FU)の血漿中動態および尿中排泄について検討した.また,安息香酸およびイソフタル酸の血漿中動態についても検討した. 1.イヌに絶食および非絶食下で単回経口投与後,EM-FUは8時間にCmaxを示したのち,各 々,19.4,48.2hrの長いT1/2で消失した.EM-FUおよびCNDPの血漿中濃度推移は絶食群と非絶食群との間で差は認められなかった.また,いずれの時間においても5-FUは血漿中には検出されなかった. 2.イヌに単回経口投与後の血漿中にはイソフタル酸が検出されたが,EM-FUおよびCNDPよりも低い濃度推移を示した. 3.サルに6,20mg/kg/dayの用量で反復経口投与時の投与初日において,EM-FU,CNDPおよび5-FUは投与量にほぼ対応した血漿中濃度を示した.各代謝産物ともに血漿からの消失は非常に遅く,20mg/kg投与群ではEM-FU,CNDPは各々,22hr,10hrのT1/2を示し,5-FU濃度は投与後24時間まで増加し続けた. 4.サルに反復経口投与した場合,5-FUのCmaxおよびAUC0-24hrは投与日数の増加とともに減少する傾向を示し,T1/2は短縮した. 5.サルに単回経口投与後の血漿中には安息香酸はいずれの時間においても検出されなかった。イソフタル酸は投与後1時間にCmaxを示し,6時間以降の消失は緩慢であった. 6.モルモットに単回経口投与後の血漿中には,5-FUおよび安息香酸はいずれの時間においても検出されなかった. 7,イヌに単回経口投与後72時間までの尿中排泄率は,EM-FU10.1%,CNDP30.1%で,5-FUは尿中へはほとんど排泄されなかった.サルに単回経口投与後96時間までの尿中排泄率は,EM-FU12.7%,5-FU7.1%,CNDP50.9%であった.イヌおよびサルともに各代謝産物の排泄はラットに比べて遅延する傾向にあった.