著者
樋口 寿 藤田 朋子 久保 美帆
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.17-25, 2008-03
被引用文献数
2

近年、「キレる」などに代表される精神的な健康問題は、深刻な事件と結びつくものがあり、その社会的関心も高い。その原因の一つとして食生活が注目されている。過食や偏食、欠食等が身体的な健康に影響を与える因子であることから、食生活は精神的な健康にも影響を与える因子であることが推測できる。そこで本研究では、大学生の食生活や生活習慣における実態を調査し、特に精神的健康との関連について検討した。平成18年6月に近畿大学農学部1・2回生268名を対象に食物摂取頻度、生活習慣、自覚症状、食行動に関する項目について自己記入式のアンケート調査を行った。1)朝食は全体の75%が「毎日食べる」と答えたが、朝食の欠食は有意に男子で高かった。間食の頻度は女子が有意に高かった(p<0.01)。2)食物の摂取頻度では、野菜類、菓子類は女子の摂取頻度が多く、嗜好飲料、インスタント麺、ファーストフード、お酒は男子が多く、性差が認められた。女子に便秘傾向の者が多く、男子に運動習慣のある者が多かった。3)自覚症状を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「精神的不安定」・「睡眠障害」・「身体的症状」とした。各項目で性差が認められたのは、「精神的不安定」の「自分がうつだと感じることがある」「イライラすることが多い」「頭がぼんやりする」と、「身体的症状」の「肩がこる」「疲れやすい」「目が疲れる」「目の前が真っ暗になり倒れそうになったことがある」の7項目で、いずれの項目においても女子が有意に高かった。4)食行動を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「外発的刺激摂食」「体質認識」「食べ方」と名付けた。「外発的刺激摂食」と「体質認識」の全項目で、男子より女子が有意に高く、食べ方では男子の「早食いである」が有意に高かった。5)「精神的不安定」と関連する因子をパス解析で検討した。「精神的不安定」に直接影響を与えている因子は、自覚症状から抽出された「睡眠不足」と「身体的症状」の2因子であった。食品摂取頻度から抽出された「加工食品」と「食生活」「生活習慣」は間接的に「精神的不安定」に影響を与えていた。
著者
樋口 寿 藤田 朋子 久保 美帆
出版者
近畿大学農学部
巻号頁・発行日
no.41, pp.17-25, 2008 (Released:2011-01-18)

近年、「キレる」などに代表される精神的な健康問題は、深刻な事件と結びつくものがあり、その社会的関心も高い。その原因の一つとして食生活が注目されている。過食や偏食、欠食等が身体的な健康に影響を与える因子であることから、食生活は精神的な健康にも影響を与える因子であることが推測できる。そこで本研究では、大学生の食生活や生活習慣における実態を調査し、特に精神的健康との関連について検討した。平成18年6月に近畿大学農学部1・2回生268名を対象に食物摂取頻度、生活習慣、自覚症状、食行動に関する項目について自己記入式のアンケート調査を行った。1)朝食は全体の75%が「毎日食べる」と答えたが、朝食の欠食は有意に男子で高かった。間食の頻度は女子が有意に高かった(p<0.01)。2)食物の摂取頻度では、野菜類、菓子類は女子の摂取頻度が多く、嗜好飲料、インスタント麺、ファーストフード、お酒は男子が多く、性差が認められた。女子に便秘傾向の者が多く、男子に運動習慣のある者が多かった。3)自覚症状を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「精神的不安定」・「睡眠障害」・「身体的症状」とした。各項目で性差が認められたのは、「精神的不安定」の「自分がうつだと感じることがある」「イライラすることが多い」「頭がぼんやりする」と、「身体的症状」の「肩がこる」「疲れやすい」「目が疲れる」「目の前が真っ暗になり倒れそうになったことがある」の7項目で、いずれの項目においても女子が有意に高かった。4)食行動を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「外発的刺激摂食」「体質認識」「食べ方」と名付けた。「外発的刺激摂食」と「体質認識」の全項目で、男子より女子が有意に高く、食べ方では男子の「早食いである」が有意に高かった。5)「精神的不安定」と関連する因子をパス解析で検討した。「精神的不安定」に直接影響を与えている因子は、自覚症状から抽出された「睡眠不足」と「身体的症状」の2因子であった。食品摂取頻度から抽出された「加工食品」と「食生活」「生活習慣」は間接的に「精神的不安定」に影響を与えていた。
著者
吉川 賢太郎 岩崎 はるみ 久保 美帆 福本 紘一 島田 豊治 撫井 賀代
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.27-34, 2008-03

[Author abstract] Ume liqueur (alcohol 14%, sugar 20%, Ume extract 30%), a traditional Japanese marketed liqueur from Prunus mume, was examined for its effect on blood pressure and influence on serum lipid levels in 5 healthy volunteers (mean age ± SD of 36.2 ± 13.5 years). The volunteers drank 100 ml of the Ume liqueur daily for 12 months and were observed for that period and for a 6-month follow-up, during which they did not drink the Ume liqueur. The systolic blood pressure decreased significantly from 126.0 ± 12.6 mmHg to 116.6 ± 14.6 mmHg after 10 months. The diastolic blood pressure also decreased but not significantly. When mean blood pressure was calculated, the systolic and diastolic values decreased significantly after five and six months, respectively. The total serum cholesterol levels tended to increase for 8 months, but thevalues did not change significantly. The serum HDL- cholesterol levels( before drinking: 62.8 ± 24.0 mg/dl) had increased significantly by 4 months (67.4 ± 21.0 mg/dl). During the period of drinking of Ume liqueur, body mass index, the other indexes of serum-biochemistry, blood examination and urinalysis did not change, and no adverse effects were observed in the experiments. Based on these findings, the possibility of marketing Ume liqueur as a functional food is suggested.[まとめ]一般的な市販食品の機能性を活用することによって成人の健康保持増進を行なうことを目的として本研究を行なった。健常者5 人を対象に,1日100ml の市販梅酒を12 ヵ月間飲用させ,血圧及び血清脂質に与える効果を観察し,その後6 ヵ月梅酒を飲用せずに経過観察して,以下の結果を得た。1. 糖分20%を含む市販梅酒を継続して飲用したにもかかわらず,BMI の変化は認められなかった。また,血糖値,HbA1C にも観察期間中には異常は認められなかった。2. 収縮期血圧は,飲用3 ヵ月後から低下傾向を示し,10 ヵ月後には有意に低下した。拡張期血圧は,飲用4 ヵ月後から低下傾向を示した。平均血圧を算出すると,飲用5,6 ヵ月後に有意に低下を示した。3. 血清総コレステロール値は,飲用期間中には有意な変化は認められなかった。血清HDL-コレステロール値は,飲用1 ヵ月後から増加傾向を示し,5 ヵ月後から有意に増加した。飲用停止3 カ月後には飲用前値とほぼ同値まで低下した。4. 肝機能への影響は,AST,ALT,γ-GTP を観察したが正常値の範囲であった。血液生化学的,血液学的パラメータ及び尿検査項目にも観察期間中には変化は認められなかった。記事区分:原著