著者
久富 悠生 中山 大地 松山 洋
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100223, 2014 (Released:2014-03-31)

本研究の目的は,武蔵野台地における長期的な地下水流動を,数値モデルを利用して再現すること,及び長期的な地下水流動の変化と土地利用の関係を定量的に明らかにすることである.モデルはUSGS(アメリカ地質調査所)が開発したMODFLOWを利用した.MODFLOWは有限差分法を用いた3次元地下水流動解析モデルである.解析期間は土地利用データのある1977年~2012年を対象とし,MODFLOWを用いて1日ごとの地下水位を算出した.また,統計的に推定した気象データを用いて2013年~2050年における地下水流動の予測シミュレーションも行った. その結果,MODFLOWによって降水による地下水の反応や,季節変化を再現することができた.また,計算された地下水位のデータを用いて,1977年~2012年の地下水位の低下量と観測点における涵養域の減少量を算出した.地下水の変動傾向の有無の検出にはMann-Kendall検定を利用した.その結果,涵養域の減少量と地下水位の低下量に相関関係があることが明らかになった.この要因として,1977年~2012年に,水田や農地,森林などの透水面の面積が減少し,建物用地などの不透水面の面積が増加していることが示された.また,局地的な涵養域の減少の他に,武蔵野台地全体における広域的な涵養域の減少も地下水位の低下に影響を与えていることが示唆された.2013年~2050年の地下水流動の将来予測では,降水量の増加に対する地下水位の上昇はみられなかった.したがって,降水量の長期的な変化が地下水位の変動に与える影響は比較的少ないことが明らかになった. 今回のモデルでは長期的な地下水の流動を再現することができたが,再現性に欠ける部分もあった.そのため,今後の課題として更なるモデルの改良が必要であることが明らかになった.