著者
宮本 淳 久留 友紀子 仙石 昌也 橋本 貴宏 山森 孝彦
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

医学部初年次チュートリアル教育においてクラウドを用いたレポート課題を課し,剽窃行為を中心に,学生のレポート作成過程の調査を続けている。レポートの作業過程を確認していくと,一見して質の低いと思われるWeb上の情報をコピペによって組み合わせ,体裁を整えただけのレポートが少なからず存在する現状が依然としてある。先行研究では,このようなレポートについて学生がどの程度コピペ剽窃をしているかについて,文字数の増加やコピペの頻度などの量的なデータに注目して調査を続けてきたが,コピペ剽窃情報の質については検討してこなかった。どのような教育的介入がコピペ剽窃だけに頼らないレポートの質の向上に繋がるかを考える上で,学生がどのような質の情報に頼ってレポート作成しているのかを調査することは非常に重要な視点であろう。そこで平成28年度の研究では,初年次学生がどのような情報に依拠してレポートを作成しているか,特に情報源の信頼性に着目して調査した。その結果,初年次学生のレポートにおいては情報源として書籍よりもWebを数多く引用していること,Web資料については,四次資料,すなわち三次資料にも該当しない,大学生以上のレポートの根拠として利用できる信頼性を有していないと考えられる資料を多くの学生が利用していることが明らかになった。平成29年度の研究では,こういった問題のあるWeb上の資料をどのように引用,あるいは「コピペ」しているかについてプロセス分析での調査をした。その結果,一次・二次・三次資料からのコピー&ペーストの場合にはその殆どが正しい形式で引用されているのに対して,四次資料の場合は半数以上がその出典は「不記載」であった。レポートを作成する際に,四次資料に依拠する場合には Webページ上の情報をそのままコピペして使用されることに繋がりやすく,その出典は明記されない傾向が明らかになった。