著者
久留 聡
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.109-114, 2021 (Released:2021-02-23)
参考文献数
39
被引用文献数
1

スモン(subacute myelo-optico-neuropathy)は,1960年代に多発した中毒性神経疾患である.腹部症状が先行し,下肢末端から上行する異常知覚・感覚障害,痙性麻痺,視力障害をきたす.当初は原因として感染が疑われたが,緑尿分析からキノホルム説が浮上し,疫学調査・動物実験により確認された.日本最大の薬害となった背景には,外用薬の内服薬への転用,安全神話,杜撰な投与量規制,国民皆保険制度による投与量増加,腹部症状の複雑性など多くの要因が存する.現在も恒久対策として患者検診が継続して実施されている.今後はキノホルム神経毒性機序や感受性の研究,薬害スモンの風化防止が重要である.