著者
乙藤 洋一郎 KIDANC Tesfaye Birke KIDANE Tesfaye Birke
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

古地磁気学的方法によってアフリカ大陸東北部にあるアファー三角帯内部の地殻ブロックの運動様式を明らかにすることを目的として、Main Ethiopia Riftのファンターレ地域を研究対象地域とした。この目的のために、2006年11月にファンターレ地域において岩石試料採取をおこなった。52箇所において鮮新・更新生層の溶結凝灰岩と玄武岩溶岩層から採取した600個の試料を、研究対象岩石とした。ファンターレ地域東部域のカレーユロッジに見られる高低差300mのアワシュ川の崖の24層で採取した溶結凝灰岩に関しては、古地磁気の測定を10月末に完了した。ファンターレー地域中央部から採取した28箇所の古地磁気測定もすでに終了している。52箇所の古地磁気方向の分散の大きさから、試料採取した岩石厨は地磁気永年変化を平均できるだけの十分長い時間間隔で形成されることがわかった。カレーユロッジの磁気層序から、Reunion subchronに相当する正磁極期がみつかったことは、52箇所の岩石層の形成に永年変化を平均化できる十分な時間がかかったことをうらずけるものである。52箇所の古地磁気方向は、アフリカで予想される地球磁場より束へ7.1°±4・3°偏っていることがわかった。以上のことから、ファンターレー地域はリフトバレーが形成されたあとに、7度の時計周り回転を経験したと結論した。大陸の分裂初期の大陸地殻の拡大に伴い、リフトバレー内部で新たにブロックが形成されるとともに、形成されたブロックはさらにリフトの拡大とともに回転運動することが、世界で始めて発見されたことになる。この研究について、現在投稿のために論文が準備されている。
著者
乙藤 洋一郎 松田 高明
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

北上地塊,西南日本東部,そして沿海州シホテアリン山地の研究結果から次のような興味深いテクトニクスが明らかになってきた.北上地塊は日本海が拡大する直前にアジア大陸に付加した可能性を指摘した.北上地塊に分布する114Ma-119Maの年代を示す原地山層と62-71Maを示す閉伊崎火山岩類の古地磁気データは,伏角が-20度から9度の低伏角を示した.今回発見した北上地塊の低伏角は,北上地塊が太平洋プレートに押されて25-30Maにアジア縁辺にやってきたとすることで説明ができる.北上地塊がアジア大陸に付加したのは日本海が拡大する直前であったことになる日本海拡大が起こっている際の,西南日本弧の回転のテクトニクスについて次のようなモデルを提出した.20〜15Maにおこった日本海拡大に伴い,九州から関東山地にわたる西南日本弧は対馬の西方にある同転軸の周りで時計回り回転運動を行った.西南日本弧が30度ほど時計回り回転すると,現在の諏訪湖近辺で,関東山地とそれ以西の小西南日本ブロックの2つの独立に運動するブロックに分かれた.関東ブロックは諏訪湖近辺を回転軸として時計回り回転運動を続け,60度回転した.小西南日本弧は引き続き対馬の西方にある回転軸の周りの回転運動を行い,20度ほど回転した.回転の際,小西南日本弧の東端は現在の赤石裂線に沿って滑って南下した.中央線の折れ曲がりは島弧の塑性変形ではなく,二つの剛体,関東ブロックと小西南日本弧,の回転運動が原因で造られたと結論した.このモデルは,西南日本で観察される中央線の折れ曲がりに新しい見方を提供する.