著者
亀井 幸次郎
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.62, pp.115-121, 1959-07-20

火災の場より無数にたちのぼり、風下に飛散していく各種形状の点火物をここでは"火の子"と称える。そしてここでいう"飛火"とは、火の子が可燃性の各種の媒体物への付着などによつて生ずる一次または、二次、三次的の着火並びに着炎現象であるとする。ただし、飛火を人為的にただちに消し止めたものは、この研究では省略した。従つてここで以下使用する"飛火"という用語は鈴木博士が「火災学」において論及している飛火論のなかの飛火とは、その持つ意味を多少異にする。(鈴木博士の飛火は、たぶん私のいう"火の子"を意味しているようである。)大火の現場調査において収集した"飛火資料"を飛火の発生時刻、位置、距離〔火元よりの距離と,第一次または第二次的着火点…飛火…より第三次あるいは第四次的の着火点までの距離(推定し得る限り現状考察によつて求めたもの)とに区別する〕及びその時の平均風速(これは地元消防署または火災現場より最も近い気象台または測候所による観測値)との関係を作表し、これにもとづいて、風速と後者による飛火の関係を、図表にプロットして、両者の関係を観察することにした。まず観察の方法として、上記によつて図表化したグラフのなかで風速15m/sec以上のものをAグループとし、風速15m/sec以下のものをBグループとして、その特性を考察することにした。このような仕訳方法を採用した理由は、おおむね次のような予想からである。すなわちAグループの場合には、その時の台風による風速が火災の場に発生する特有の気流より、火の子の飛散状況と飛火現象に支配的な影響を、またBグループの場合には、火災の場に発生する局所気流(乱れ、風の息、逆転、上空への噴出気流、突風及び火事場嵐などという局所的なもの)が、支配的影響力を与えると予想されるからである。