著者
亀山 剛 渡辺 一雄
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.3, pp.7-22, 2011

絵下山公園は原爆爆心地から12.4kmにある広島市営公園でギフチョウの生息地である。この山頂部に2006年デジタルテレビ放送所の鉄塔および局舎が完成した。ギフチョウの行動研究と並行して,工事の影響を極力抑える努力を試み『ギフチョウの住む自然豊かな都市近郊型公園』の創成を目指している。本稿ではギフチョウの生息条件について総論を試み,保全の具体策と工事前後の飛翔,産卵状況の変化,今後の課題を述べる。ギフチョウは一時的に減少したが最近2,3年,回復しつつある。今後,適切な生息環境と景観の整備により里山のシンボル,ギフチョウの生息環境を保持した都市近郊型公園を目指したい。減少の原因は気候の異常変動と巨大鉄塔出現による飛翔・産卵行動の変化が考えられた。行動の変化を『飛翔パターン全体を認識・記憶する生理メカニズム』の存在とそのトータルな変更ととらえ,適応行動の遺伝という観点から仮説を立てて論じた。Mt. Ege ("Ege-san" in Japanese; alt. 593 m) is located near Hiroshima City, 12.4 km from the atomic bomb memorial dome. The municipal park at the summit, is a popular Hiroshima sightseeing spot and a habitat of Luehdorfia japonica, a butterfly that is a symbol of the concept of "satoyama" (the area between mountain foothills and flat, arable land). In 2004, construction was begun of a digital TV tower at the summit area. At this time, we reviewed the principle habitat of Luehdorfia with a focus on their flight behaviors. We described successive changes related to individual numbers, ovipositions, and flight behaviors during the construction. The food plant, Asarum hexalobum, was transplanted to the area, and advice was offered to those involved with the construction on how to create and/or maintain a good habitat. Although the population of the butterflies temporarily diminished during the construction, its current status indicates a tendency toward recovery. We are planning to produce a unique natural park, in which Luehdorfia can be observed flying amongst the cherry blossoms in the spring.
著者
亀山 剛 森田 敏弘 岡田 純 内藤 順一 宇都宮 妙子
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.158-166, 2006-12-05

山陽地方に生息するダルマガエルRana porosa brevipoda岡山種族は、現在日本で最も絶滅が危倶されているカエル類の地域個体群のひとつである。その中で、土地区画整理事業によって2003年11月に生息地が消滅した広島県神辺町産の個体群を飼育下に緊急避難させ、新たな生息地へ試験的に再導入をおこなった。ダルマガエルの生息には水田環境が絶対条件で、なおかつ、生活史に合わせた人為的な水管理が重要であった。したがって、導入場所の選定にあたっては、地権者である農家の理解と協力が得られるかどうかに重点を置いた。その結果、広島県世羅郡の水田地帯にある休耕地を試験湿地に設定し、2004年5月-6月にかけて幼体117個体、幼生2,947個体の導入を行った。その後のモニタリングでは、2004年10月には、成体18個体、幼体248個体、合計266個体のダルマガエルが確認された。翌2005年6月には少なくとも3クラッチ分の自然産卵が確認され、同年10月には、成体15個体、幼体60個体、合計75個体のダルマガエルが確認された。以上により、飼育集団をある程度残した上で、自立した野外集団の創出に成功した。この結果を受けて、2005年には新たな導入地を設定し、幼生の導入を始めている。今後は追加導入およびモニタリングを実施し、定着へ向けての活動を継続する予定である。