著者
清水 則雄 河田 晃大 松浦 靖浩
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.1, pp.85-89, 2009

ソウシハギは, 熱帯・暖海域に広く生息する大型のカワハギ科魚類である。2008年7月31日に, 瀬戸内海安芸灘の広島県大崎上島町木臼島沖合において本種の幼魚1個体(全長19.7cm)を発見・採集した。本種の幼魚は流れ藻に随伴し海流とともに移動すること, 過去にも瀬戸内海伊予灘での採集記録があることから, 黒潮の分流に乗って豊後水道を経由して流入してきたものと考えられた。瀬戸内海安芸灘の冬季水温環境は本種の越冬が不可能なレベルにあり, 死滅回遊として偶発的に出現したものと考えられる。
著者
長澤 和也 上野 大輔
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.11, pp.97-107, 2019-12-25

1936–2019年に出版された文献に基づき,日本産魚類から記録された7属16種のエラジラミ科カイアシ類の情報を寄生虫– 宿主リストと宿主– 寄生虫リストとして示した。それらはエラジラミ属(新称)Bomolochus(2種),ウオノハナヤドリ属(新称)Naricolax(1種),ツルギエラジラミ属(新称)Nothobomolochus(5種),ザゼンジラミ属(新称)Orbitacolax(3種),メダマジラミ属(新称)Pumiliopes(1種),ウオノハナヅマリ属(新称)Tegobomolochus(1種),ウオノハナジラミ属(新称)Unicolax(3種)に属する。寄生虫– 宿主リストでは,各種の標準和名,最新の学名,過去にわが国で使用された学名,寄生部位,地理的分布等の知見を整理して示した。宿主– 寄生虫リストでは,宿主別にエラジラミ科カイアシ類の和名と学名を示した。
著者
亀山 剛 渡辺 一雄
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.3, pp.7-22, 2011

絵下山公園は原爆爆心地から12.4kmにある広島市営公園でギフチョウの生息地である。この山頂部に2006年デジタルテレビ放送所の鉄塔および局舎が完成した。ギフチョウの行動研究と並行して,工事の影響を極力抑える努力を試み『ギフチョウの住む自然豊かな都市近郊型公園』の創成を目指している。本稿ではギフチョウの生息条件について総論を試み,保全の具体策と工事前後の飛翔,産卵状況の変化,今後の課題を述べる。ギフチョウは一時的に減少したが最近2,3年,回復しつつある。今後,適切な生息環境と景観の整備により里山のシンボル,ギフチョウの生息環境を保持した都市近郊型公園を目指したい。減少の原因は気候の異常変動と巨大鉄塔出現による飛翔・産卵行動の変化が考えられた。行動の変化を『飛翔パターン全体を認識・記憶する生理メカニズム』の存在とそのトータルな変更ととらえ,適応行動の遺伝という観点から仮説を立てて論じた。Mt. Ege ("Ege-san" in Japanese; alt. 593 m) is located near Hiroshima City, 12.4 km from the atomic bomb memorial dome. The municipal park at the summit, is a popular Hiroshima sightseeing spot and a habitat of Luehdorfia japonica, a butterfly that is a symbol of the concept of "satoyama" (the area between mountain foothills and flat, arable land). In 2004, construction was begun of a digital TV tower at the summit area. At this time, we reviewed the principle habitat of Luehdorfia with a focus on their flight behaviors. We described successive changes related to individual numbers, ovipositions, and flight behaviors during the construction. The food plant, Asarum hexalobum, was transplanted to the area, and advice was offered to those involved with the construction on how to create and/or maintain a good habitat. Although the population of the butterflies temporarily diminished during the construction, its current status indicates a tendency toward recovery. We are planning to produce a unique natural park, in which Luehdorfia can be observed flying amongst the cherry blossoms in the spring.
著者
淺野 敏久 飯田 知彦 光武 昌作
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-8, 2010

ブッポウソウとカンムリウミスズメの保護活動を支援する環境事業として野鳥観察を中心としたエコツアーが広島県内で行われている。本稿では,広島市民を対象としたWEB アンケート調査と,ツアー参加者を対象とした,参加動機や評価に関するアンケート調査の結果を報告する。前者からは,鳥の知名度の低さにもかかわらず,1/4程度の回答者がツアーへの関心を示すとともに,野鳥保護や環境教育の効果を認めていることなどが明らかになった。後者からは,参加者が,いわゆる「マニア」層が中心となっていることを確認するとともに,ツアーの評価が,一般向けアンケートで重視される以上に,対象とした鳥を見られたかどうかに左右されることがわかった。今後,ツアー内容の充実や集客方法(宣伝方法)の検討が課題となる。An eco-tour designed to support the conservation works for wild birds is complemented in Hiroshima area. We clarified using two questionnaire surveys how the tour is evaluated. The survey for Hiroshima citizens shows that one forth of them express interest in the tour, instead of their blindness of the targeted birds. They accept a conservational value or an educational value of the tour. On the other hand, the survey for the tour participants shows that they are mainly the bird lovers, and that their evaluation of the tour are dependent on whether they could watch the targeted birds or not. It is necessary to improve tour programs and rethink about effective means of advertising, based on the results of these surveys.
著者
斉藤 英俊 丹羽 信彰 河合 幸一郎
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-57, 2011
被引用文献数
1

西日本でどのような水生動物が釣り餌として流通されているのかについて,2009年12月~2011年8月の期間に市場調査をおこなった。釣り具店で販売されている商品として,多毛類,ユムシ類,ホシムシ類,二枚貝類,甲殻類および魚類など少なくとも27種が確認できた。これらの釣り餌動物は,1)国外から輸入されている非在来種(≧4種),2)国外から輸入されている在来種(18種),3)国内流通されている外来種(2種),および4)国内流通のみされている在来種(3種)の4タイプに分けられた。Market research was performed between December 2009 and August 2011 to investigate the current state of aquatic animals sold as bait for sport fishing in Western Japan. At least 27 species of bait—including nine polychaetes, one echiuran, one sipunculan, three bivalves, at least ten crustaceans, and three fishes—were sold at fishing bait shops in Osaka and Hiroshima prefectures. These animals were divided into four types: 1) non-native species imported from foreign countries (at least four species), 2) native species imported from foreign countries (eighteen species), 3) invasive species supplied in Japan (two species), and 4) native species supplied only in Japan (three species).
著者
橋本 知佳
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.3, pp.129-134, 2011

今日の生涯学習社会においては,「地域に開かれた高等教育機関」として大学の地域貢献が強く期待されている。そうした中で,特に公開施設である大学博物館が果たす役割は重要になっている。広島大学総合博物館でも,地域の住民を対象とした活動を多く実施し好評を得ているが,未だ改良すべき点は多いと考えられる。本稿では,2010年に広島大学総合博物館で実施した企画展の来館者アンケートの結果を解析することで,来館者像を明らかにし,より効果的な広報活動や来館者のニーズに応える企画展示の提供など,今後の博物館活動で取り組むべき課題を明らかにしようとした。本稿の分析結果をもとに,今後の活動がより地域のニーズに即した形で発展することを期待したい。