- 著者
-
亀山 義郎
阿座上 孝
福井 義弘
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 重点領域研究
- 巻号頁・発行日
- 1989
研究目的:マイクロ波の熱作用と放射線の電離作用のいずれも、胎児大脳が高い感受性を示すため、両者が複合して作用した場合、単独では障害効果が少ない条件でも、脳に非可逆的障害をもたらす可能性がある。本研究はこの点を検討するため、マウス胎児にマイクロ波、γ線のそれぞれ単独および併用照射を行い、大脳発達障害を検索した。研究方法と結果:妊娠13日のSlc:ICRマウスに2.45GHzのマイクロ波をON15秒、OFF15秒で反復照し、10分後から直腸温が42.5℃を越えないようにOFF時間を調整した。処理時間は15分と20分の2条件、マイクロ波の比吸収率は葉480mw/gあった。マイクロ波処理9時間後に胎児を採取して組織切片にし、大脳外套の細胞死の頻度を調べたところ、対照群の0.14%に対して、15分、20分処理によってそれぞれ1.6%、3.0%に増加していた。一部の母獣を出産させ、生後6週で観察した仔獣は、20分処理群の脳重が低値を示した。後頭部大脳皮質の組織切片から算出した神経組織切片た神経細胞の核の直径は、対照群に比較して有意に小さく、細胞密度は有意の高値を示した。Co-60δ線0.24Gyに被曝させ、その直後にマイクロ波15分処理を行った実験では、δ線単独被爆の9時間後の大脳外套の細胞死は8.5%であったのに対し、δ線とマイクロ波に複合被爆したものでは19.5%に上昇していた。この結果はδ線とマイクロ波の作用が相互的以上であることを示している。なお、生後6週の観察では、複合被曝群の大脳は小さく、組織学的に大脳皮質の菲薄法化、皮質構築加乱れを示す例がみられた。今後は、マイクロ波と放射線の被曝間隔を変えて、マウス胎児大脳への複合効果を検討する予定である。