著者
原 幸男 小林 弘枝 大城 聡美 二村 圭介 西野 威 中郡 昭人 天間 恭介 近藤 洪志
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.135-143, 2001-02-25
参考文献数
33

ベンゾジアゼピン誘導体のひとつであるジアゼパムの心収縮力におよぼす影響とその機序を摘出モルモット心臓および単離心室筋細胞標本で検討した.ランゲンドルフ心および右心室自由壁標本で, ジアゼパム(100μMまで)は濃度依存的に一相性の陰性変力作用を示した.このジアゼパムによる一相性の陰性変力作用は中枢性ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬(フルマゼニル1μM)および末梢性ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬(PK11195 10μM)で影響されなかった.ジアゼパム(10から100μM)は乳頭筋の活動電位幅を濃度依存的に短縮した.単一心室筋細胞を用いたパッチクランプ法で, ジアゼパム(30および100μM)は濃度依存的にカルシウム電流を抑制した.ジアゼパムによるカルシウム電流の抑制は, カルシウム拮抗薬ベラパミルで見られる使用依存性抑制とは異なり, tonic block(使用非依存性抑制)の形であった.これらの結果から, ジアゼパムはモルモット心臓標本において, ベンゾジアゼピン受容体を介さずに一相性の陰性変力作用を示し, その機序はカルシウム電流の抑制にあると考えられる.