著者
于 日平
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
1998

筑波大学博士(言語学)学位論文・平成10年2月28日授与(甲第1765号)
著者
于 日平
雑誌
朝日大学一般教育紀要 = Journal of Liberal Arts and Science Asahi University (ISSN:13413589)
巻号頁・発行日
no.44, pp.11-23, 2020-03-31

文に対する定義は次の2点で意見の一致が見られていると言えよう。1)コミュニケーショ ンの基本的単位であり、構造的にも意味的にも完結体をなしていること、2)文は表出内容の「命題」と話し手の心的態度の「モダリティ」という二つの部分から構成されていること、と。 1 しかし、具体的に日本語文において「命題」と「モダリティ」はそれぞれがどのように形作られ、両者がどのように結合されていくのか、それは文レベルにおいて、意味伝達のために用いられる[主―述]構造とどのように関わっているのかについては、解釈が大きく分かれている。言語活動は、話し手が記号を使って能動的に意味表出を行う主観的で創造的な活動である以上、文レベルにおいて構造的に「何について述べるか」と「どのように述べるか」という分け方には、すでに話し手の表出意図が含まれていると考える。本研究では、日本語文を対象に、具体的に[文内容・モダリティ]の結合・融合の仕方を三段階に分けることにする。第一段階 =[主―述]構造によって表される「命題」で、その結合体に話し手の表出意図が示されている;第二段階 =「述部の実質的内容に対する話し手の認定」を示すもので「、対事的モダリティ」を表す;第三段階=話し手が「対事的モダリティを含む述部内容」を相手―聞き手または読み手―に差し出す心的態度を示すもので、「対人的モダリティ」を表す。このように「対事的モダリティ」も「対人的モダリティ」も「述部内容」を特徴づけるもので、[主―述]文構造において「主部内容」と結合して意味表出的に一体化するのである。