- 著者
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五十川 正記
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.12, pp.1118_4, 2020 (Released:2020-12-01)
免疫とは,その名が示す通り疫(病気)から免れるために発達した機能であり,その本質的な役割は,体内に侵入する病原体を排除することである.一方で,個体自身の細胞や,病原性を持たない異物に対しては,免疫応答は通常起こらず,これを免疫寛容と呼ぶ.免疫寛容が破綻し,個体自身の細胞に対して免疫応答が起こった場合,膠原病などの自己免疫疾患が発症する.病原性を持たない異物への免疫応答による有害事象として,花粉症などがあげられる.免疫寛容の破綻による有害事象とは対照的に,母子感染などにより免疫系が成熟する前にウイルスが持続感染が成立した場合,個体はウイルスを異物として認識せず,免疫寛容が成立し,生涯にわたってウイルス排除が困難になる場合もある.