著者
仁科 喜久子 五味 政信 田中 穂積 柏崎 秀子
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

3年間の成果は次に示す通りである.1.データ作成3年間にわたり外国人留学生が参加しているセミナーのビデオ収録をし,20件各60分のデータを収集した.初年度は10件分を書き起こしたものを中間報告書として印刷,発行した.2年度以後のものも一部論文発表時に書き起資料として発表した.また,留学生を対象とする電気電子系大学院講義「科学技術日本語」における講義の書き起こしデータを作成した.2.分析 1のセミナービデオ資料あるいは書き起こしデータを語レベル,文レベル,ディスコースレベルの各レベルで被験者の日本語能力別に観察し次の知見を得た.(1)初級・中級では語のレベルでの問題と運用上の問題からコミュニケーションブレークダウンが多く見られた.上級ではディスコース上の問題が見られるようになり,発話機能の分類とディスコースマーカーのレベル付けをすることで指導上有効なシラバスを作成することができる.本研究では特に学術的な対話の場で用いられるディスコース構造のモデル化と発話機能とディスコースマーカーを整理し,新たなラベル付けをした.(2)専門知識と社会言語学的な運用法を含む言語知識との両者がそろったときコミュニケーションは円滑に進むが,言語知識が少なくても専門知識に関する概念知識が十分にあれば様々な言語的な方略を用いることで,相互理解に到達することは可能となる.以上の分析と講義データの観察から理工系知識をもつ成人の日本語学習者にとって専門に関する概念知識を利用して目標言語習得計画を作成することが理工系におけるコミュニケーションという目標に到達する早道であることを認識し,そのためのシラバスを提案した.3.成果のまとめ(1)平成5年度に中間報告書をまとめ印刷発行した.(2)平成9年3月に最終報告書をまとめ印刷発行した.(3)平成8年9月に研究代表者は学位論文「科学技術日本語学習システム開発のための基礎的研究」を発表し,本研究に関する内容を第7章としてまとめ,平成9年2月に学位授与とともに印刷発行した.