著者
五本木 武志 小形 岳三郎 飯田 浩行 軍司 直人 中井 玲子 折居 和雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.395-400, 2006-03-01

症例は狭心症を有する78歳の女性で,2002年6月頃より下腹部痛を自覚し,同年10月当院紹介人院となった.注腸造影X線検査および大腸内視鏡検査にて,直腸を除く結腸に非連続性の大小不同卵円形の潰瘍性病変を認めた.保存的治療にていったん軽快したが,2003年3月,39℃台の発熱と腹痛が出現し,腹膜炎を認めたため,結腸亜全摘,回腸直腸吻合術を施行した.術後,全身カンジダ感染症を併発し,抗真菌剤を投与したが,術後第131病日,残存直腸に潰瘍を形成,心不全と腎不全が出現し,全身状態が悪化,術後275病日死去した.切除結腸の病理学的検索にて,虚血性潰瘍と疑われた.虚血性潰瘍が結腸全域にわたって多発した症例の報告例は少なく,本例は診断に困難を来した.今後,高齢者動脈硬化症例が増加すると考えられるので,本例のような症例も診断上考慮すべきと考える.