著者
池澤 和人 樫村 博正 三代 寧 中原 朗 山形 迪 松崎 靖司 武藤 弘 福富 久之 大菅 俊明 折居 和雄 深尾 立 菊池 正教
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.1019-1027, 1995-05-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
17

症例は41歳女性.29歳より計5回の甲状腺乳頭癌の手術歴があり,1992年7月腹痛のため当科を受診した.下部消化管精査の結果大腸全域にびまん性の腺腫性ポリープが密生し,また,横行結腸に全周性の内腔狭窄を併う2'型大腸癌,S状結腸に1'型大腸癌,下行結腸にIsp'型大腸癌を認めた.胸部X線,肺CTにて3カ所に小結節陰影が認められ,大腸癌及び甲状腺乳頭癌の肺転移を伴った家族性大腸腺腫症と診断し,全結腸切除回腸直腸吻合術及び肺部分切除術を施行した.家族性大腸腺腫症は放置すればほぼ100%大腸癌に罹患することが知られているが,甲状腺乳頭癌を重複した報告は稀であり,文献的考察を加えて報告した.
著者
五本木 武志 小形 岳三郎 飯田 浩行 軍司 直人 中井 玲子 折居 和雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.395-400, 2006-03-01

症例は狭心症を有する78歳の女性で,2002年6月頃より下腹部痛を自覚し,同年10月当院紹介人院となった.注腸造影X線検査および大腸内視鏡検査にて,直腸を除く結腸に非連続性の大小不同卵円形の潰瘍性病変を認めた.保存的治療にていったん軽快したが,2003年3月,39℃台の発熱と腹痛が出現し,腹膜炎を認めたため,結腸亜全摘,回腸直腸吻合術を施行した.術後,全身カンジダ感染症を併発し,抗真菌剤を投与したが,術後第131病日,残存直腸に潰瘍を形成,心不全と腎不全が出現し,全身状態が悪化,術後275病日死去した.切除結腸の病理学的検索にて,虚血性潰瘍と疑われた.虚血性潰瘍が結腸全域にわたって多発した症例の報告例は少なく,本例は診断に困難を来した.今後,高齢者動脈硬化症例が増加すると考えられるので,本例のような症例も診断上考慮すべきと考える.