著者
赤荻 栄一 三井 清文 鬼塚 正孝 石川 成美 吉田 進 稲垣 雅春 間瀬 憲多朗 山本 達生 稲毛 芳永 小形 岳三郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.483-488, 1994-08-20
被引用文献数
9

原発巣と同側の肺内に転移を持つ肺癌切除67例の術後成績をみて, 同側肺内転移を遠隔転移ではなく腫瘍の局所進展と考えるAmerican Joint Committeeon Cancer(AJCC)新分類の妥当性を検討した.原発巣と同一肺葉内に留まる肺内転移を持つ41例の術後中問生存期問は25.8ヵ月で, 他肺葉に及ぶ肺内転移を持つ例に比べて有意に良好であった.同一肺葉内転移例につき, 肺内転移を除いた病期別にみると, I期11例では42.9ヵ月と他に比べて有意に良好で, IV期5例では9.6ヵ月と最も不良であった.AJCC新分類による中問生存期間は, I期とII期を合わせた4例が48.3ヵ月, IIIA期21例28.3ヵ月, IIIB期34例22.2ヵ月, IV期8例11.1ヵ月であり, リンパ節転移がないかあっても肺門までに留まる例が最も予後良好で, 肺内転移以外に明らかな遠隔転移を持つIV期例は最も予後不良であった.これは, AJCC新分類が, より臨床に即した有用な分類であることを示すものと思われる.
著者
小形 岳三郎 堀口 尚 松井 三和 大坪 理恵子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.89-99, 2001-03

茨城県民を対象にHelicobacter pylori (H.pylori)感染に起因する胃炎のプロフイルを知る目的で, 県内の広域中小医療機関にて施行された胃炎1291例, 胃びらんまたは胃潰瘍365例の生検材料を対象に, 病理形態的に細分類し, H.pylori菌の検出率を検討した。菌検出率は胃炎が54%,胃びらん(活動期)が87, %胃潰瘍(活動期)が65%であった。胃炎各型の菌検出率は, 軽度胃炎0%, 単純性胃炎17%, 表層性胃炎54%, 活動性胃炎98%, びらん性活動胃炎96%, 再生性胃炎52%, 化生胃炎17%, 萎縮性胃炎18%であった。この菌検出率の結果と年齢的発症率から検討した結果, 胃炎は次の3グループに分けられた。第一のグループ(軽度, 単純性胃炎)は,H.pylori感染とは無関係な胃炎で, 発症頻度は少く, 年齢とは無関係に一定の頻度にみられた。第二のグループ(表層性, 活動性, びらん性, 再生性胃炎)は, H.pylori感染と密接に関係する胃炎で, 20才以後年齢とともに増加し, 50才以降では胃炎の過半数を占めた。第三グループ(化生性, 萎縮性胃炎)は, H.pylori菌検出は低率であったが, その大部分が第ニグループの胃炎の終末像を示唆する病理像を示し, 第二のグループの増加とはやヽ遅れて年齢とともに増加した。以上, 茨城県民の壮年期以降にみられる胃炎の大部分はH.pylori感染に基づくことが示唆された。
著者
小川 功 赤荻 栄一 三井 清文 小形 岳三郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.61-67, 1992-02-20
被引用文献数
4

喀痰集団検診にて発見され,切除した30例のX線写真無所見肺扁平上皮癌32病巣を対象にして,腫瘍の肉眼形態と気管支壁内の深達度を組織学的に検討した.腫瘍を肉眼的に腫瘤を形成する結節浸潤型と,腫瘤を形成せず気管支表層を進展する表層浸潤型および両者の形状を併せ持つ混合型の3型に分類した.7病巣にみられた結節浸潤型は癌の深達度が表層浸潤型より高度で,腫瘍径3mmのものでも筋外層まで進展していた.20病巣にみられた表層浸潤型は表屑進展径が大きい程,深部への深達度が高度であった.特に中枢気管支発生の癌ではその関係は明瞭で,長径20mm以下の癌ではすべて筋外層以内に癌組織は留まっていた.5病巣の混合型は腫瘍径が大きく深達度も高かった.気管支早期扇平上皮癌の内視鏡検査時に肉眼形態より腫瘍深達度を予想することは,ある程度可能であり,適切な治療法選択の一助になると考えられた.
著者
小形 岳三郎 堀口 尚
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-11, 2000-03

非感染性の肺傷害の多くは, 病理学的にびまん性肺胞傷害と呼ばれる病変をきたす。このびまん性肺胞傷害は肺胞組織の崩壊・炎症に続く持続的な肺線維化を特徴とする。本稿では, 先ず, びまん性肺胞傷害を病理発生的に上皮傷古型と内皮傷古型の2型に分類し, 炎症及び線維化の進展様式に差異のあることを示した。次に, 肺傷害の発生にはオキシダントが深く関与していることを種々の肺傷害について説明した。最後に, びまん性肺胞傷害の特徴である持続性線維化の機序について考察した。(1)肺胞上皮の傷害にもとづく上皮傷古型肺胞傷害は, 硝子膜形成とマクロファージを主体とする溶出性肺胞炎をきたし, その後急速に肺胞の器質化・再構築を起こす。これに対し, 肺胞中隔の毛細血管内皮の傷害にもとづく内皮傷害型肺胞傷害は, 基本的には間質性肺炎をきたすため, 肺胞中隔は次第に線維性肥厚におちいる。内皮障害型の場合には, 更に二次的肺胞上皮傷害が生じる。(2)高酸素による肺傷害は活性酸素よる外因的なオキシダント肺傷害である。 ARDSの際の肺傷害の如く, 系統的に血管内にて白血球が活性化することによって内因的にもオキシダント肺傷害をきたす。また, 化学物質や薬物による肺傷害の場合においても, 二次的に抗酸化機構の破綻によるオキシダント傷害が深く関与する。原因如何にかかわらず, 内皮傷害型にみられる二次的上皮傷害は, 抗酸化機構の破綻によると考えられる。(3)肺傷害の修復に関与する肺胞間質細胞は, マクロファージから放出されるサイトカインにより増殖するとともに, 活性化した肺胞間質細胞はオートクリン機能を獲得することによって自己増殖する。この肺胞間質細胞のオートクリン機能獲得が, 肺傷害後の肺線維化が進行性である理由と解釈される。また, 肺胞間質細胞はレチノイド貯蔵細胞の一つで, その細胞増殖に対してレチノイドは抑制的に働く。
著者
五本木 武志 小形 岳三郎 飯田 浩行 軍司 直人 中井 玲子 折居 和雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.395-400, 2006-03-01

症例は狭心症を有する78歳の女性で,2002年6月頃より下腹部痛を自覚し,同年10月当院紹介人院となった.注腸造影X線検査および大腸内視鏡検査にて,直腸を除く結腸に非連続性の大小不同卵円形の潰瘍性病変を認めた.保存的治療にていったん軽快したが,2003年3月,39℃台の発熱と腹痛が出現し,腹膜炎を認めたため,結腸亜全摘,回腸直腸吻合術を施行した.術後,全身カンジダ感染症を併発し,抗真菌剤を投与したが,術後第131病日,残存直腸に潰瘍を形成,心不全と腎不全が出現し,全身状態が悪化,術後275病日死去した.切除結腸の病理学的検索にて,虚血性潰瘍と疑われた.虚血性潰瘍が結腸全域にわたって多発した症例の報告例は少なく,本例は診断に困難を来した.今後,高齢者動脈硬化症例が増加すると考えられるので,本例のような症例も診断上考慮すべきと考える.