著者
五野 貴久 寺井 千尋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2251-2258, 2016-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
10

多発性筋炎(polymyositis:PM)/皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)は,自己組織に対して過剰な免疫応答が生じる結果,筋肉,皮膚,関節,肺などに炎症を来たす膠原病である.皮疹を認めない場合はPM,特徴的な皮疹を伴う場合はDMと診断する.PM/DMでは間質性肺炎や悪性腫瘍の併発が比較的多い.モデルマウスを用いた病態機序の解明,自己抗体の発見とその測定法の開発,間質性肺炎を併発したPM/DMの診断・治療のマネジメントなど,ここ10年で日本より世界へ多くの研究成果が発信された.2015年には厚生労働省自己免疫疾患に関する調査研究班内PM/DM分科会により治療ガイドラインが作成された.これらの成果により,日常診療を行う上で非常に有用なノウハウが,医療従事者や患者を含め世の中へ示された.今後,PM/DM患者の機能予後・生命予後のさらなる改善をめざし,具体的な個別化医療の確立が求められる.
著者
五野 貴久
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.346-346, 2013 (Released:2013-10-31)

全身性エリテマトーデス(SLE)は,自己抗原に対して過剰反応する樹状細胞やリンパ球が活性化し,抗二本鎖DNA抗体をはじめとする自己抗体の産生,補体及びサイトカインを介して,皮膚炎,関節炎,血球減少,腎炎,神経障害など全身の諸臓器に障害をきたす自己免疫疾患である.一卵性双生児におけるSLEの発症一致率は25%であり,その病因に遺伝的要因が強く関与している.SLEは,20-40歳代の若年女性に発症する頻度が高く,日光暴露にて病状の増悪を認めることから,性ホルモン,紫外線などの環境的要因もSLEの発症に関わっている.個々の症例においてSLEの病状は異なり,その臨床像は多彩である.例えば,SLEに起因する腎炎(ループス腎炎)といっても,メサンギウムの増殖と上皮下や内皮下に免疫複合体の沈着を伴う腎炎と,基底膜の肥厚が主体となる膜性腎症に分けられる.また,SLEに起因する精神・神経障害を呈するneuropsychiatric (NP) SLEでは,アメリカリウマチ学会により19の精神・神経症候に分類され,その病態は複雑で治療もしばしば難渋する.このセッションでは,SLEの予後規定因子であるループス腎炎とNP-SLEを中心に,SLEにおける基本的な病態を踏まえつつ,近年,新たに明らかとなったSLEの病態に関する研究成果をレビューし,その病態の理解を深めていきたい.