著者
井ノ口 和子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学教育学部研究紀要 (ISSN:24334367)
巻号頁・発行日
no.2, pp.57-72, 2018-02

アール・ブリュット(art brut)はフランス語で「生(き)の芸術」を意味する言葉であり,現在では「美術教育を受けていない人の美術」,「障害者の美術」と理解されている。本研究は「武蔵野アール・ブリュット2017」における鑑賞者アンケートの回答と記述を分析・考察し,鑑賞者がアール・ブリュット作品から何を感じとるのかを明らかにすることを目的とする。その結果,鑑賞者は「自分の価値観の広がり」や「アートを身近に感じることができた」という印象をもつことがわかった。アール・ブリュット作品を鑑賞することは,従来の美術の枠組みに縛られず,自分なりの新しい価値を創造する可能性をもつものである。
著者
井ノ口 和子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.143-153, 2018-03-31

本研究では,図画工作・美術科教育において大きな課題の一つとなっている「図画工作科の教科観(図工観)」の転換に着目した。本研究の目的は,質問紙調査への回答と記述内容の分析から,初等教科教育法(図画工作)の受講学生の「図工観」の変容について考察することである。その結果,以下のような結論を導いた。第一に,「作品中心の図工観」,「作品を作らせるための指導観」から子どもの「発想」や「造形活動の過程」を重視した「図工観・指導観」に変容した。第二に,教科の目標や評価規準についての理解を深め,「教科」としての位置付けを理解した。第三に,図画工作科を指導することへの不安は低下したが,子どもの造形の特徴や明確な指導法の理解が十分ではなく,実践的指導力への不安をもっている。学生に子どもの造形の特徴や具体的な指導法を十分に理解させるための実践が今後の課題である。