著者
田蔵 奈緒
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.83-94, 2018-03-31

日本のプロ野球選手の中で現役選手引退後の生活に不安を感じている選手は,2013 年調査で71.5%,日本のプロサッカー選手では,2000 年の調査では76.2%であり,大半の選手が,引退後のセカンドキャリアに不安を感じているという結果であった。プロスポーツ選手に訪れる引退というキャリアトランジションにおけるセカンドキャリアの支援の在り方について,セカンドキャリア支援体制を確立したJ リーグの設立迄の経緯とJ リーグよりも以前から制度を確立している海外のプロサッカー選手のセカンドキャリア支援事業について事例調査を行った。日本サッカー界は,プロサッカー選手のセカンドキャリアのノウハウをJ リーグ内部で留めるのではなく,外部に対して提供し,スポーツ選手全体のセカンドキャリア支援に貢献できる経験と資格とその責任があるのではないだろうか。J リーグは1993 年からスタートし,この24 年間で国内に多くの功績を残してきたが,その繁栄や若干の陰りが見られるとはいえ,まだまだプロスポーツ界をリード出来る力を持っていると考える。プロスポーツの人材はその競技の中だけでなく,競技の枠,産業の枠を越えて活躍することによって,プロスポーツの中長期における発展があるはずであり,J リーグにはその人材を輩出する土壌と仕組みがある。この点において他スポーツ団体もJ リーグに学ぶ点はあるのではないかと考える。
著者
井ノ口 和子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.143-153, 2018-03-31

本研究では,図画工作・美術科教育において大きな課題の一つとなっている「図画工作科の教科観(図工観)」の転換に着目した。本研究の目的は,質問紙調査への回答と記述内容の分析から,初等教科教育法(図画工作)の受講学生の「図工観」の変容について考察することである。その結果,以下のような結論を導いた。第一に,「作品中心の図工観」,「作品を作らせるための指導観」から子どもの「発想」や「造形活動の過程」を重視した「図工観・指導観」に変容した。第二に,教科の目標や評価規準についての理解を深め,「教科」としての位置付けを理解した。第三に,図画工作科を指導することへの不安は低下したが,子どもの造形の特徴や明確な指導法の理解が十分ではなく,実践的指導力への不安をもっている。学生に子どもの造形の特徴や具体的な指導法を十分に理解させるための実践が今後の課題である。
著者
壬生 幸子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.201-214, 2018-03-31

『記』『紀』のオケ王(仁賢天皇)・ヲケ王(顕宗天皇)兄弟の物語には,王統上重要な二王の即位の正当性を語るとともに,王統譜においてとりわけ重要な位置にあるオケの正統性を語る狙いがある。『古事記』は,ヲケとシビの歌垣と,それに続く二王によるシビ討伐のプロットを物語に組み込むことでこの狙いを達成した。二王がシビを武力討伐し,さらにオケが王位継承を宣明することで,二王の即位の正当性とオケの正統性を示している。また,二王の姨・イヒトヨ王の,二王の即位への関与は抑制的に記される。二王はシビ討伐により自らの力で王権を掌握したのであって,そこに日継を知らす王として認められていたはずのイヒトヨ王の関与をみることはできない。
著者
今村 信哉
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.179-193, 2018-03-31

選挙権年齢が18 歳に引き下げられた影響もあり,選挙が近付く度に「主権者教育」の必要性が語られることが多い。しかし,平和で民主的な国家の形成者として必要な資質である主権者意識や主権者として判断する力等は小学校段階から身に付けるべきものと考える。そこで,本論文では,小学校の主権者教育はどうあるべきかを具体的な実践事例から明らかにしようとしたものである。主権者教育の実践の多くは高等学校で行われている。また,校種を問わずに社会科で実践されていることが多い。知識・理解は社会科で学ぶべき事ではあるが,「主権者」として必要な判断力,実際に行動する力は教育課程上,道徳と特別活動で培われるものである。ここでは,道徳に焦点を置き,「ぶらんこ復活」(わたしたちの道徳3・4 年生:文部科学省)の実践を元に法教育の視点も入れて「主体的に生きる子供を育てる主権者教育」の在り方を論じている。
著者
壬生 幸子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.201-214, 2018-03-31

『記』『紀』のオケ王(仁賢天皇)・ヲケ王(顕宗天皇)兄弟の物語には,王統上重要な二王の即位の正当性を語るとともに,王統譜においてとりわけ重要な位置にあるオケの正統性を語る狙いがある。『古事記』は,ヲケとシビの歌垣と,それに続く二王によるシビ討伐のプロットを物語に組み込むことでこの狙いを達成した。二王がシビを武力討伐し,さらにオケが王位継承を宣明することで,二王の即位の正当性とオケの正統性を示している。また,二王の姨・イヒトヨ王の,二王の即位への関与は抑制的に記される。二王はシビ討伐により自らの力で王権を掌握したのであって,そこに日継を知らす王として認められていたはずのイヒトヨ王の関与をみることはできない。