- 著者
-
岡崎 克則
井上 恵美
- 出版者
- 北海道医療大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)のC末端側サブユニット(HA2)に存在するαヘリックス領域のアミノ酸配列がH1〜H15亜型ウイルス間でよく保存されていることを見出し、本領域に含まれる10残基のペプチドを培地中に添加するとウイルス増殖が1/10程度に抑制されることを示した。感染細胞内で新たに合成されたHAの三量体形成を阻害することによってHAの輸送あるいは機能的発現を阻害するものと考えられたことから、エンドサイトーシス非依存性のトランスフェクション試薬を用いて本ペプチドを積極的に細胞内に導入することによって抗ウイルス活性を増強することを試みた。その結果、ウイルス感染前および後におけるペプチド導入でもウイルス増殖抑制効果は認められなかった。三量体形成に与る粗面小胞体〜ゴルジ体への導入には、エンドソームを経由する経路が有効なのかもしれない。新型インフルエンザに備えた抗体医薬を開発するため、H5およびH2亜型HAに対するモノクローナル抗体の作製を試みた。両亜型HA間で共通かつ分子表面に存在する7残基のアミノ酸配列を見出し、これをマウスI-A^b MHCクラスII分子結合カセットに挿入したペプチドを合成した。本ペプチドをC57BL/6マウスに免疫し、SP2/0細胞を用いてハイブリドーマを作出した。得られた800余りのハイブリドーマのうち1クローンがA/Singapore/1/57(H2N2)の感染性を中和する抗体を産生していた。現在、効率を上げるためにMAPペプチドを免疫したマウスの脾細胞を用いてハイブリドーマを作出している。