著者
星川 佳広 飯田 朝美 村松 正隆 井伊 希美 中嶋 由晴
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.367-378, 2010 (Released:2014-04-03)
参考文献数
32
被引用文献数
1

短距離選手における股関節屈筋群(大腰筋,大腿直筋)の筋形態と機能の関係を調べるため,各筋断面積と股関節屈曲トルク,角速度を測定し,相関関係を調べた.被検者は女子 24名,男子 25名の短距離選手と,比較対象としてのバレーボール選手(女 27名,男 37名)および非トレーニング群(男女各 10名)であった.被検者の最大屈曲トルクは等速性筋力装置(Biodex System 3)により角速度 3.14rad/秒で測定し,最大の屈曲角速度指数はバリスティックマスター(コンビ社)による膝振り上げ速度を大腿骨長で除すことで求めた.各筋断面積は MRI 法でもとめた.短距離選手では,大腰筋サイズ(筋断面積×身長)は屈曲トルクと弱く有意に相関(女 r =0.48,男 r =0.34)したが,大腿直筋サイズは有意な相関関係がなく,両筋サイズは股関節屈曲トルクや角速度を決定する強い要因ではなかった.全被検者を対象にした場合,男女ともに屈曲トルクと大腿直筋,大腰筋サイズにはいずれも中程度の有意な相関関係があり,また大腰筋サイズは屈曲角速度指数とも弱いが有意な相関関係があった.短距離選手とバレーボール選手を比較した場合,絶対値,体格補正値にかかわらず,大腿直筋断面積に有意差がなく,大腰筋断面積は短距離選手がバレーボール選手より有意に大きかった.屈曲トルクはバレーボール選手が短距離選手より有意に大きかったが,屈曲角速度指数は短距離選手がバレーボール選手より有意に大きかった.短距離選手に見られる顕著な大腰筋発育は角速度向上に有利で,スプリントパフォーマンスに対して合理的な適応であると考えられた.
著者
星川 佳広 村松 正隆 飯田 朝美 井伊 希美 中嶋 由晴
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.153-165, 2011 (Released:2013-04-12)
参考文献数
34

本研究は男女のジュニア短距離選手において,股関節筋群の筋力と筋横断面積を調べることを目的とした.被検者は男女計45名の高校生短距離選手であった.また同年齢の長距離選手(11名)と非トレーニング群(18名)が比較のために参加した.股関節伸展・屈曲筋力(角速度3.14 , 5.23rad/s)は等速性ダイナモメータで計測し,大腰筋と大殿筋の横断面積をMRI法で求めた.短距離選手の股関節筋力は,非トレーニング群,長距離選手と比較して伸展側でより強かった.筋横断面積(体格補正値)は,女子では短距離と長距離選手で差異がなかったのに対して,男子では大腰筋,大殿筋ともに短距離選手が長距離選手よりも大きな値を示した.股関節筋力は屈曲,伸展ともに競技レベルと無関係であったが,競技レベルの高い短距離選手は,女子では大腰筋の,男子では大殿筋の横断面積が大きかった.これらの結果は,男女ともに短距離選手はジュニアにあっても股関節伸展力の高さを特徴とすること,股関節筋群の形態発育では男女で傾向が異なることが示唆された.