- 著者
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井内 智子
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社会経済史学 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.1, pp.99-118, 2010-05-25 (Released:2017-07-18)
- 被引用文献数
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1929年に設立された陸軍被服協会は,被服資源を確保して総力戦体制へ備えるため,国産毛織物の普及及び軍用被服と民間被服の規格統一を目指して活動した。同協会は,具体的には洋装化の推進を呼びかけ,学生服をはじめとする各種制服を統一して,軍服と同じカーキ色の毛織物にする「被服統一運動」を行い,軍需被服産業と毛織物産業を中心とする諸企業の支持を得た。第一次大戦後の軍縮の中で,軍需関係の企業は軍需から民需への転換を図っていた。また,毛織物の集散地だった大阪の財界を中心に,軍需以外の諸企業も不況の中で消費が減少することを防ぐ目的で被服協会を支援した。今回本稿がとりあげる1929年から1934年にかけては,一般の反軍感情が強く,陸軍の望むカーキ色生地普及はこの色が軍隊のイメージと強く結びついていたため挫折する。また,毛織物の制服では綿に比べて高価になることから,毛織物普及にも限界があった。しかし,被服協会は府県単位での男子中等学校制服の統一を進め,統一したことで制服の価格は下がっていった。