著者
小平 裕恵 本強矢 直子 藤橋 あすか 井出 正道 大野 紘八郎 朝田 芳信
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.360-366, 2008-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
14
被引用文献数
1

歯内歯は,歯冠部の象牙質の一部が表層のエナメル質とともに歯髄腔内に深く陥入した形態異常歯であり,エナメル質形成前に内エナメル上皮の一部が歯乳頭内に深く侵入,増殖したことにより生じたものと考えられている。出現部位は上顎側切歯に多く,まれに小臼歯,大臼歯,乳前歯,過剰歯にも認められることがある。歯内歯の出現率は報告者や歯種によりまちまちではあるが,0.04~10%と報告され,性差はないとされている。本症例のように下顎第二小臼歯に歯内歯がみられることは稀である。本症例は,下顎右側頬側歯肉の腫脹を主訴に来院した12歳の女児の症例報告であり,視診から当該歯の歯冠幅は大きく,咬合面に中心結節破折様の象牙質の露出がみられた。エックス線画像所見より,根尖部に透過像とともに歯内歯様構造物が認められた。当該歯の長期間にわたる感染根管治療および修復処置と,その後の臨床経過から以下のように結論づけられた。臨床上,口腔内診査およびエックス線画像より歯内歯が疑われた場合には,形態異常歯である歯内歯の根管治療が技術的に非常に困難であることから,小窩裂溝填塞などによる歯髄への細菌感染の予防を第一選択とし,且つ継続的な経過観察を行う必要がある。さらに歯髄感染の徴候がみられた場合には出来るだけ早期に歯内療法を施すことが肝要である。
著者
日本小児歯科学会学術委員会 山﨑 要一 岩﨑 智憲 早﨑 治明 齋藤 一誠 徳冨 順子 八若 保孝 井上 美津子 朝田 芳信 田村 康夫 嘉ノ海 龍三 牧 憲司 吉原 俊博 船津 敬弘 手島 陽子 上里 千夏 山下 一恵 井出 正道 栗山 千裕 近藤 亜子 嘉藤 幹夫 渡邉 京子 藤田 優子 長谷川 大子 稲田 絵美
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.29-39, 2010-03-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
58
被引用文献数
13

永久歯の先天性欠如は,その発現部位や欠如歯数によって様々な歯列咬合異常を誘発するため,小児期からの健全な永久歯咬合の育成を目標とした継続的な口腔管理を行う上で大きな問題となる。我が国の先天性欠如の発現頻度の報告は,単一の医療機関を受診した小児患者の資料に基づいたものが多く,被験者数も限られている。そこで,日本小児歯科学会学術委員会の企画で国内の7 大学の小児歯科学講座が中心となり,我が国初の永久歯先天性欠如に関する全国規模の疫学調査を実施した。参加7 大学の代表者と実務者による全体打ち合わせ会を通して,調査方法の規格化や症例の審議を重ね,調査の信頼性向上に努めた。対象者は,大学附属病院の小児歯科,またはこれらの大学の調査協力施設に来院し,エックス線写真撮影時の年齢が7 歳以上であった小児15,544 名(男子7,502 名,女子8,042 名)とした。第三大臼歯を除く永久歯の先天性欠如者数は1,568 名,発現頻度は10.09%であり,男子が9.13%,女子が10.98%であった。上顎では4.37%,下顎では7.58%に認められた。上顎および下顎における左右の頻度の差は0.11%,0.14%であり左右差は小さかった。歯種別では,下顎第二小臼歯に最も多く認められ,次いで下顎側切歯,上顎第二小臼歯,上顎側切歯の順であった。