著者
日本小児歯科学会学術委員会 山﨑 要一 岩﨑 智憲 早﨑 治明 齋藤 一誠 徳冨 順子 八若 保孝 井上 美津子 朝田 芳信 田村 康夫 嘉ノ海 龍三 牧 憲司 吉原 俊博 船津 敬弘 手島 陽子 上里 千夏 山下 一恵 井出 正道 栗山 千裕 近藤 亜子 嘉藤 幹夫 渡邉 京子 藤田 優子 長谷川 大子 稲田 絵美
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.29-39, 2010-03-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
58
被引用文献数
13

永久歯の先天性欠如は,その発現部位や欠如歯数によって様々な歯列咬合異常を誘発するため,小児期からの健全な永久歯咬合の育成を目標とした継続的な口腔管理を行う上で大きな問題となる。我が国の先天性欠如の発現頻度の報告は,単一の医療機関を受診した小児患者の資料に基づいたものが多く,被験者数も限られている。そこで,日本小児歯科学会学術委員会の企画で国内の7 大学の小児歯科学講座が中心となり,我が国初の永久歯先天性欠如に関する全国規模の疫学調査を実施した。参加7 大学の代表者と実務者による全体打ち合わせ会を通して,調査方法の規格化や症例の審議を重ね,調査の信頼性向上に努めた。対象者は,大学附属病院の小児歯科,またはこれらの大学の調査協力施設に来院し,エックス線写真撮影時の年齢が7 歳以上であった小児15,544 名(男子7,502 名,女子8,042 名)とした。第三大臼歯を除く永久歯の先天性欠如者数は1,568 名,発現頻度は10.09%であり,男子が9.13%,女子が10.98%であった。上顎では4.37%,下顎では7.58%に認められた。上顎および下顎における左右の頻度の差は0.11%,0.14%であり左右差は小さかった。歯種別では,下顎第二小臼歯に最も多く認められ,次いで下顎側切歯,上顎第二小臼歯,上顎側切歯の順であった。
著者
中原 弘美 多賀谷 正俊 西田 宜弘 近藤 亜子 松原 有為子 田村 康夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.429-439, 2013-11-25 (Released:2015-03-21)
参考文献数
28
被引用文献数
3

機能的矯正装置ムーシールドにて幼児期反対咬合の治療を行い,治療効果と,どこにどの様な形で治療の効果が現れているかについて検討したものである。被検児は反対咬合小児66 名(平均年齢5 歳1 か月)を対象として,機能的矯正装置ムーシールドにて治療を行い,治療の有効性と被蓋改善までの治療期間について検討を行った。次いで,66 名のうち16 名を対象として,治療前後における模型分析と側面セファロ分析を行い,また口蓋形態から口蓋縦断平面の変化について検討した。その結果,78.8%に被蓋の改善が認められ有効と判定された。治療期間は平均9.8 か月で,開始年齢や歯齢別で差は認められなかった。乳犬歯間距離は,上顎は有意に増大し下顎は小さくなっていた。一方,長径では上顎は乳中切歯と両側乳犬歯間が有意に増大し下顎は減少していた。セファロ分析では,ANB, FMA, Y-Axis で有意な増加が認められ,またAPDI で有意な減少が認められた結果,下顎の後退と時計方向の変化が認められた。歯槽性では,U1 to SN, U1 to FH の角度はそれぞれ有意に増加し,またL1 to MP の角度は有意に減少した。また口蓋の縦断面積において,治療後は有意な増加がみられた。以上から,機能的矯正装置ムーシールドは幼児期における反対咬合の治療に有効であり,歯や顎骨に対し直接的な矯正力を働かせなくても前歯の傾斜だけでなく上下顎骨の位置関係や口蓋の形態にまで変化をもたらしていることが明らかとなった。