著者
井尻 巖
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.8, pp.437-447, 1999-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
2

死亡診断書・死体検案書の書き方の概要を述べる。死亡診断書は診療継続中の患者が当該疾病で死亡した場合に発行され,その他の場合は死体検案書を発行する。死亡者の氏名は戸籍に記載された氏名を記入する。「死亡したとき」の欄には,心肺停止例で死亡を確認した時刻や,心肺蘇生が不成功の場合にそれを終了した時刻ではなく,これらの時点よりさかのぼった時刻を推測して記入する。この場合には死亡時刻の記入した後に頃(推定)と記入する。「死亡の原因」のI欄は直接死因と下段に直接因果関係を有する傷病名を順を追って記入する。最も下段に記入された傷病名が原死因となり,死因として採用される。この欄の記入に疎漏があると死亡者の死亡の原因がまったく違ってくる。死因が特定できない場合には,適当な死因を付けないで[詳細不明]と記入し,「その他特に付言すべきことがら」欄にその理由を記入する。「死因の種類」欄は原死因が該当する種類に〇を付ける。「外因死の追加事項」の欄は,病死および自然死以外は必ず記入する。伝聞をもとに記入することがほとんどであるが,可能な限り詳細に記入する。なお,不詳の死とした場合には,この欄に記入せず「その他特に付言すべきことがら」欄に,その理由を記入する。「その他付言すべきことがら」欄には,前記に述べた事項のほか,心肺蘇生が不成功であった場合に,「心肺停止状態で搬送され,心肺蘇生が不成功,〇時〇分に死亡確認」等記入しておく。死亡診断書・死体検案書をめぐる紛争は少なくなく,記載にあたっては慎重に記入することが肝要と考える。