著者
内田 智之 髙木 祐希 水野 晃宏 岡村 駿 斎藤 宏紀 井手 史朗 大原 慎 井上 盛浩 萩原 政夫
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.857-864, 2020 (Released:2020-09-08)
参考文献数
10

当院で院内感染として新型コロナウイルス感染症を発症した血液疾患40例と他疾患57例を後方視的に解析した。生存例については60日までを解析期間とした。血液疾患21例(52.5%),他疾患20例(35.1%)の死亡が確認された。血液疾患症例においては高頻度にファビピラビルが使用(21例(52.5%)vs 15例(26.3%),P<0.05)されていたにもかかわらず,生存期間中央値は29日で,全生存率が不良な傾向であった(P=0.078)。血液疾患症例では酸素投与が開始後,急激に呼吸状態が悪化し死に至るもしくは人工呼吸器管理を要する状態に至るまでの日数が有意に短い結果が示された(中央値5日(範囲1~17日),10日(1~24日),P<0.05)。入院中の血液疾患症例が新型コロナウイルス感染症を発症すると極めて短期間に重症化し致死的となる可能性が示唆された。
著者
井手 史朗 大原 慎 内田 智之 井上 盛浩 華 見 萩原 政夫
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.326-330, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
11

65歳,男性。膀胱直腸障害と両下肢の感覚障害を自覚し入院となった。入院時,画像検査で胸部すりガラス影を認め,さらに抗サイトメロウイルス(CMV)-IgM陽性を有意と捉え,一連の症状をCMV感染によるものと考え,ステロイドパルス療法および抗ウイルス療法を開始するも,改善を認めなかった。その後,肺野病変が悪化したため気管支鏡検査を行い,生検も追加し,血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(IVLBCL)の診断を得た。R-CHOP療法が施行され,自覚症状,採血データは速やかに改善傾向を認め,完全寛解に到った。MTXによる髄注療法を追加し,2年間の寛解を維持している。IVLBCLは9.5%に末梢神経障害を合併することが報告されているが,馬尾神経障害を呈する例は末梢神経障害のうちの14.5%とさらに稀であるとされ,ここに報告する。
著者
萩原 政夫 大原 慎 井手 史朗 内田 智之 井上 盛浩 三田村 敬子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1459-1463, 2020

<p>当院血液内科における新型コロナウイルス院内感染症の発生に際して,無症状ないし極軽症(発熱のみなど)で軽快した10症例について,イムノクロマト法による抗COVID-19 IgG抗体を測定した。6名において感染証明後11~39日(平均26日目)時点において抗体陰性の結果が得られ,内2名においてPCR検査陰性確認後のそれぞれ約2,4週後に再度のPCR陽性を伴って肺炎を発症した。2回目の陽性または肺炎発症後においては抗体陽性に転じていた。血液疾患など免疫低下状態においては,COVID-19感染後の免疫応答が低いこともある可能性が示唆され,抗体検査を踏まえた慎重な経過観察が重要であると考えられる。</p>