- 著者
-
井樋 慶一
須田 俊宏
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1994
アセチルコリン(ACh)は脳内の代表的神経伝達物質であるが,ACh作動性ニューロンは視床下部室傍核(PVN)のcorticotropin-releasing factor (CRF)産生細胞の近傍に神経終末を形成している。PVNにおいてAChがCRFの合成,分泌に及ぼす影響を明らかにするために,無麻酔ラットを用い,脳内微量注入法により直接PVN内にAChを投与し,Northern blot法を用いてPVN内CRFmRNAおよび下垂体前葉(AP)内proopiomelanocortin (POMC)mRNAの定量を行った。同時に末梢血中ACTHの変化を検討した。さらにAChの作用がいかなる受容体を介して発現するかを明らかにした。1.無麻酔ラットPVN内ACh (1-100pmol)投与後血中ACTHは用量反応性に増加し,30分で頂値を示し,120分で前値に復した。2.PVN内ACh投与後120分でAP内POMCmRNAおよびPVN内CRFmRNAはACh (0.1-10pmol)用量反応性に増加した。3.脳室内アトロピン前投与により,PVN内ACh投与による血中ACTH増加は抑制されたが,ヘキサメリニウム前投与により抑制されなかった。以上の結果は,PVNにおいてAChがCRFの合成および分泌を刺激することを強く示唆するものであり,ACh作動性神経路がCRFニューロンに対する刺激性の調節系であるころが明らかとなった。またAChの作用はムスカリン受容体を介することが明らかとなった。